「名探偵コナン 純黒の悪夢」 黒ずくめの組織と宿命の対決 ド派手アクションに手に汗握る
青山剛昌さんの人気マンガが原作でテレビアニメも人気の「名探偵コナン」の劇場版20作目「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」(静野孔文監督)が4月16日に公開される。今作はコナン、黒ずくめの組織、FBI、公安ら4者の対決が描かれている。ゲスト声優として女優の天海祐希さんが黒ずくめの組織の一員である“謎の女性”の声を担当しているほか、古谷徹さんと池田秀一さんという「機動戦士ガンダム」のアムロとシャアの声優2人が“胸アツ”な間柄で登場するのも話題を呼びそうだ。 「名探偵コナン」は、青山さんが1994年から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中のマンガで、小学生の体になってしまった江戸川コナンが次々と起こる難事件を解決する。96年からテレビアニメが放送され、97年からは劇場版アニメも製作されており、劇場版シリーズは今作で20周年を迎えた。 今作「純黒の悪夢」はコナンの宿命の敵「黒ずくめの組織」との対決を描く。世界の各国で黒ずくめの組織による暗殺事件が発生。ターゲットにはある共通点があった。黒ずくめの組織のジンはついに日本へと足を向ける。そのころコナンたちは大規模にリニューアルを果たした東都水族館に遊びに来ていた。そこの目玉は世界初の二輪式巨大観覧車だった。そこでコナンたちはけがをして記憶喪失になっている謎の女性と出会う。その女性は左右の瞳の色が異なる“オッドアイ”の持ち主だった。女性の記憶を取り戻すために協力することになったコナンたちだったが、女性は観覧車を見つめ、発作を起こしてしまう。その女性がつぶやいた言葉とは……というストーリー。 説明しようとするとネタばれになってしまう恐れもあるため、詳しくは書けないが、冒頭のカーチェースからいつも以上に手に汗握りドキドキさせられ、全編の半分近く割いているであろう後半の黒ずくめの組織とのバトルは、観覧車全体を使ったバトルアクションで、その壮大なスケールにあっけにとられた。やはり「黒ずくめの組織」との対決は、率直に面白い! ゲスト声優の天海さんが声を担当する謎の女性は、驚異的な身体能力でアクションのスピード感に毎回胸のすくような思いがした。また、これも詳しくはいえないが、古谷さんが演じる公安の安室透(あむろ・とおる)と池田さんが演じるFBIの赤井秀一(あかい・しゅういち)の2人は後半のバトルにものすごく貢献し、最後はコナンと一緒に……。おっと、ここから先は映画館でお楽しみください。「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」は16日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(細田尚子/MANTAN)
「スポットライト 世紀のスクープ」 全米を震撼させたスキャンダル暴露記事の内幕
第88回米アカデミー賞で、作品賞と脚本賞に輝いた「スポットライト 世紀のスクープ」(トム・マッカーシー監督)が4月15日から公開される。2002年1月、米国の新聞「ボストン・グローブ」がすっぱ抜いた、神父による児童への性的虐待と、それを組織ぐるみで隠ぺいしてきたカトリック教会のおぞましい関係。映画は、その暴露記事掲載に至るまでの記者たちのたゆまぬ努力を克明に描いていく。 2001年7月、米国の新聞社「ボストン・グローブ」に、新たな編集局長としてマーティ・バロン(リーブ・シュレイバーさん)が着任した。彼は部下たちに、カトリック教会が全面否定している地元ボストンの神父による児童への性的虐待事件を詳しく探るよう指示を出す。担当を命じられた特集記事欄「スポットライト」のチーム、ウォルター“ロビー”ロビンソン(マイケル・キートンさん)、マイク・レゼンデス(マーク・ラファロさん)、サーシャ・ファイファー(レイチェル・マクアダムスさん)、マット・キャロル(ブライアン・ダーシー・ジェームズさん)の4人は早速調査を開始するが、地道な取材を続ける中で、驚くべき事実が次々と明らかになっていく……というストーリー。 とにかく面白かった。映画が始まってすぐにスクリーンに引き込まれた。新たな編集局長の掛け声で、記者たち4人は事件の被害者や弁護士らへの取材を重ねていく。教会の公式年鑑をあさり情報をたぐり寄せ、そこで得たことの裏を取るため、再び関係者への取材を試みる……。4人が記者魂を発揮し、真相を究明していく過程の、スリリングなことといったらない。そのスリル感が、児童への性的虐待や巨大組織による隠ぺい工作、さらに、それに切り込むジャーナリストの正義と矜持といった重いテーマとのバランスを取り、今作を娯楽性にも富んだ優れた作品たらしめている。記者たちそれぞれに光が当たり、見せ場を作ってあることも特筆すべき点だ。記者を演じたラファロさんとマクアダムスさんは、それぞれ、アカデミー賞で助演男優賞と助演女優賞にノミネートされていたが、個人的には、彼らをまとめたバロンが、出番は少ないながらキーパーソンだと思っている。演じたシュレイバーさんがいい味を出していた。15日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「映画クレヨンしんちゃん 爆睡! ユメミーワールド大突撃」 夢の世界で大騒動
テレビ朝日系の人気テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場版最新作「映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」(高橋渉監督)が4月16日に公開される。今作は夢の中を舞台に、 仲間を必死に助けようとするしんのすけの姿などを描いている。アニメ脚本に初挑戦となるお笑い芸人の劇団ひとりさんが高橋監督と共同で脚本を執筆。また、ゲスト声優として、幼稚園に転園して来た謎の少女・サキの父親で夢の研究者である貫庭玉夢彦(ぬばたま・ゆめひこ)を俳優の安田顕さん、サキの母親で夢彦の妻・サユリを女優の吉瀬美智子さんが声を担当するほか、お笑いタレントのとにかく明るい安村さんが本人役で出演している。 なんでもかなう夢の世界を訪れたしんのすけ(声・矢島晶子さん)たちは、風間くん(声・真柴摩利さん)は政治家、ネネちゃん(声・林玉緒さん)はアイドル、マサオくん(声・一龍斎貞友さん)はマンガ家になるなど、思い思いに楽しんでいた。しかし突然、楽しい夢は悪夢の世界へと変わってしまう。同じころ、春日部の街にやって来た少女・サキ(声・川田妙子さん)が“カスカベ防衛隊”の仲間になり、悪夢に立ち向かうと約束するが、サキにはある秘密があった……というストーリー。 「クレヨンしんちゃん」の劇場版も今作で24作目となるが、毎年のように「今年の劇場版が最高だ!」と感じてしまうほどクオリティーが高く、大人も子ども関係なく笑わせるだけでなく感動もさせてくれる。今回はカスカベ防衛隊が活躍する物語で、しんのすけを中心に各キャラクターに見せ場が用意されているが、中でもボーちゃんの活躍ぶりには驚いた。テンポよく繰り出される笑いと、要所要所で見せるしんのすけのカッコよさとほろりとくる展開が心地いい。しんのすけの母・みさえの親としての愛には、思わず目頭が熱くなった。16日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「グランドフィナーレ」 映像・音楽に心をつかまれながら人生の終局を体験
イタリアの奇才と呼ばれるパオロ・ソレンティーノ監督の最新作「グランドフィナーレ」が4月16日から公開される。スイスの高級リゾートホテルを舞台に、圧倒的な映像美の中で人生の終幕に立った者の姿を焼き付ける。マイケル・ケインさんとハーベイ・カイテルさんの名優同士の味わい深い芝居が楽しめる。 世界的に有名な英国の音楽家フレッド・バリンジャー(ケインさん)は、80歳を迎えて引退し、アルプスのふもとの高級ホテルでのんびりと暮らしている。ここは、ハリウッドスターや元一流サッカー選手などのセレブが滞在するホテル。一緒に滞在している親友で映画監督のミック(カイテルさん)は現役にこだわっているが、フレッドは英国女王からの出演依頼を断った。その理由は、娘のレナ(レイチェル・ワイズさん)にも隠している秘密にあった……という展開。 見終わって、数週間は余韻に浸れる。ため息が出るようなラグジュアリーなホテル、その場所を囲む大自然の美しさ。映像美に目を見張り、名優の味わい深い芝居に酔いしれ、シーンを冗舌に語る音楽に耳を奪われ、すべてに心をつかまれる。老齢の2人の芸術家が出てくる。引退を決めて音楽から離れたフレッドと、新しい映画作りに励むミック。対照的に見えるが、過去について忘れたこともあれば、その場所にとどまってこだわっていることがある点は一緒だ。長年の友として、ときに少年同士のようになるケインさんとカイテルさんの芝居のうまさに、ニヤニヤとしてしまう。ホテルにはさまざまな宿泊客がいて、印象に残るのは、映し出される老若男女の肉体。老いは誰にもやって来て、老いた者もまた若い時があったことを、肉体は分かりやすく示唆する。見ながら、自分の人生の「時間」へ意識が向く。フレッドの娘のレナ、ミックのスタッフ、若い者に挫折が降りかかるが、彼らにはやり直す時間がたっぷりある。バイオリンを練習する少年は、作曲者のフレッドのアドバイスによって音が良くなる可能性がある。ちりばめられた人物たちは一見深い関係はないものの、音符が組み合わさって一つの曲ができていくように、フレッドのこれからの一部をなしている。 人生の最終章をどう描くのか。フレッドが越えるべきものを見つけたとき、年を重ねた人の心の深淵を体験し、心が大きく揺さぶられる。デビッド・ラングさんが作ったオリジナル曲が、今年度の米アカデミー賞主題歌賞にノミネートされた。シネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで16日から公開。(キョーコ/フリーライター)