「宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海」 新視点で振り返る特別総集編

映画「宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海」予告編と「星巡る方舟」特報

 「宇宙戦艦ヤマト」のテレビシリーズ40周年を記念して制作された「宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海」(加戸誉夫監督)が、10月11日から公開される。テレビシリーズ全26話の総集編で、主人公・古代進(声・小野大輔さん)の視点でイスカンダルへの旅路を振り返る。迫力ある戦闘シーンや音響はもちろん、凝縮されたストーリーがテンポよく進み最後まで飽きずに楽しめる仕上がりになっている。

 映画は、テレビシリーズ第1作放送から今年で40年を迎えることを記念して行われる「40周年プロジェクト」の一環で、テレビシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2199」の特別総集編として新規カットなどを加え、惑星「イスカンダル」への旅路を新たな視点で振り返っている。外宇宙から襲来した謎の星間国家「ガミラス」による遊星爆弾で地球は壊滅的な被害を受け、人類滅亡までの猶予はあとわずか1年となっていた。人類に残された最後の希望は、恒星間航行が可能な宇宙戦艦「ヤマト」で、汚染された地球を浄化再生するシステム「コスモリバースシステム」を受け取りに行く「ヤマト計画」だった。主人公の古代進や艦長の沖田十三(声・菅生隆之さん)らはヤマトに乗り込み、惑星イスカンダルを目指すが……というストーリー。

 劇場用に用意されたという迫力ある音響や、スピード感あふれる戦闘シーンは見どころで、総集編だが大画面、高音質の映像はテレビシリーズのファンもまた改めて楽しめるだろう。目まぐるしく展開するテンポのいいストーリーも印象に残る。作品の予備知識がないと最初はやや戸惑うかもしれないが、凝縮されたストーリーの中で重要なポイントは丁寧に解説されているため、初めてでも問題なく鑑賞できる。敵・味方を問わず、21世紀に再登場する新たに生まれ変わった魅力的なキャラクターたちは第1作の“ヤマト”ファンも魅了するはずだ。11日から公開。(河鰭悠太郎/毎日新聞デジタル)

「近キョリ恋愛」 少女マンガ原作の胸キュン満載恋物語 山下智久のツンデレは必見

映画「近キョリ恋愛」予告編 教師と生徒の“ツンデレ”ラブストーリー

 俳優で歌手の山下智久さんの主演で、みきもと凜さんの少女マンガを映画化した「近キョリ恋愛」(熊澤尚人監督)が10月11日に公開される。原作は、男前の“ツンデレ”英語教師・櫻井ハルカと超クールな天才女子高生・枢木(くるるぎ)ゆにがくり広げる恋愛を描いている。山下さんは今作で教師役初挑戦。今年公開された映画「渇き。」での演技が話題となった女優の小松菜奈さんが、恋をするには近くて遠いというもどかしい距離感を見事に表現している。数多くの胸キュンシーンや山下さんのツンデレ演技は見どころだ。

 成績は常に学年ナンバーワンだが、英語だけが唯一苦手という超クールな天才女子高生・枢木ゆに(小松さん)はある日、赴任してきたばかりの男前でプライドが高い英語教師・櫻井ハルカ(山下さん)から放課後の特別補習授業を言い渡される。自信満々で毒舌なハルカに苦手意識を持つゆにだったが、補習を受け続けるうちに恋心を抱いていることに気付く。自分の気持ちに戸惑いながらも思いを告白し、教師という立場から拒んでいたハルカも、ゆにのひたむきさに引かれていく。そういった状況で、ゆにに留学の話が持ち上がる。ハルカはゆにの将来を考えてうそをついて突き放すが、何も知らずに傷ついたままゆには出発し……というストーリー。水川あさみさん、山本美月さん、新井浩文さん、佐野和真さんらも出演している。

 教師と生徒の恋愛は許されるものではないのだろうが、今作で描かれるのは、きっと多くの人が一度ならずは憧れたことがあるシチュエーションだと。そんな淡い気持ちを思い出させてくれる今作では、ハルカとゆにというピュアすぎる2人が織りなす純愛ぶりに、年がいもなく胸キュンしつつ、真剣な姿に思わず思い入れして見てしまった。お互いが相手のことを考え、大切にする感情が映画の端々にあふれており、くすぐったいけれど、どこかすがすがしい。山下さんのツンデレぶりはクールな印象と相まってぴったりで、少女マンガならではの教師像も山下さんが演じるとそんなに違和感を感じない。ゆに役の小松さんもどんな時でも無表情という難しい設定ながらも、細やかな演技で見事にゆにの心の内を表現している。男性も恥ずかしからずに、学生時代の甘酸っぱさを思い返してみてほしい。TOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

「ぶどうのなみだ」 北海道オールロケ 三島有紀子監督と大泉洋さんの再タッグ作

映画「ぶどうのなみだ」の予告編

 スマッシュヒットした「しあわせのパン」(2011年)の三島有紀子監督と主演の大泉洋さんが再タッグした「ぶどうのなみだ」が10月11日から公開される。夢に破れて、一度離れた故郷に戻って理想のワインづくりに精を出す兄と、地元で畑を守ってきた弟、そして突然現れた不思議な女性が繰り広げる人間模様を、大自然とおいしそうな料理が彩る。北海道でオールロケを行った。

 北海道の空知が舞台。家族の反対を押し切って夢を追うために家を出た兄のアオ(大泉さん)は5年前に故郷に戻り、亡き父が植えたブドウの木のそばの畑で、“黒いダイヤ”と呼ばれるブドウ「ピノ・ノワール」の醸造に挑戦していた。一方、年の離れた弟のロク(染谷将太さん)は、亡き父の小麦畑を受け継ぎ、兄に代わって家と畑を守ってきた。ある日、2人の前に真っ赤なワンピースを着た謎の女性(安藤裕子さん)が現れる。エリカと名乗るその女性は、お酒と料理で人々をもてなした。最初はエリカに対していい感情を持てなかったアオだったが、自分がつくったワインを飲んでくれたことをきっかけに距離が縮まっていく……という展開。

 夢に挫折して傷ついた過去を持ち、ワインに人生の再スタートをかけている兄のアオ。「ワインが嫌いなんだ」と言い放ち、どこかわだかまりを抱えている弟のロク。広大な風景にもかかわらず、冒頭は兄弟の関係など閉塞(へいそく)感が漂う。それを打ち破るかのように、一陣の風のごとくエリカが現れる。その瞬間が見事だ。エリカは穴を掘り、初対面の兄弟に対してやや横柄な態度をとるが、シンガー・ソングライターの安藤さんがとてもチャーミングに演じていて、一気に引きつけられる。謎めいた彼女のたたずまいをはじめ、魔法で出したような色鮮やかでおいしそうな料理や、突然始まる合奏(たぶんわざと楽器と音が合っていないという緻密さ)、アンティーク+ナチュラル系の雑貨と衣装も含めて、今作は巧妙に編まれた寓話(ぐうわ)の世界に仕上がっている。統一されたこの世界観に酔えるかどうかが鍵だ。物語の軸には、「土」と向き合うことで自分の人生の土台と向き合う人間の姿と苦悩が描き込まれている。脇を田口トモロヲさん、前野朋哉さん、りりィさん、きたろうさん、小関裕太さんらが固める。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで11日から公開。(キョーコ/フリーライター)

「ふしぎな岬の物語」 吉永小百合製作 小さな村の喫茶店の女主人と客との人情作品

映画「ふしぎな岬の物語」予告編 モントリオール世界映画祭で2冠

 今年のモントリオール世界映画祭で、審査員特別賞グランプリとエキュメニカル審査員賞をダブル受賞した「ふしぎな岬の物語」(成島出監督)が10月11日から公開される。吉永小百合さんが初めて企画・プロデューサーとして名を連ね、主演も務めた。森沢明夫さんの小説「虹の岬の喫茶店」を原作に、「八日目の蝉」(2011年)の成島監督がメガホンをとった。岬の喫茶店の女主人と客とのふれあいを通して、人と人のつながりを描いた人情ドラマだ。

 太陽と海に抱かれた岬の先端に、女主人・柏木悦子(吉永さん)が一人で営む「岬カフェ」がある。カフェの裏ではおいの浩司(阿部寛さん)が「なんでも屋」を営んでいる。悦子は客の顔を見てから豆をひき、ネルドリップでコーヒーを丁寧に入れる。30年の付き合いである常連客のタニさん(笑福亭鶴瓶さん)は、悦子に思いを寄せている。悦子は、純粋だが、たびたび感情的になるおいの浩司を優しく見守るが、浩司は何かと問題を起こしてしまう。漁を営む徳さん(笹野高史さん)と数年ぶりに帰郷した娘のみどり(竹内結子さん)にも、そっと寄り添って話を聞いた。たびたびやって来る常連以外の客の話も、悦子は同じようにじっくりと聞いてやった。やがて、穏やかな日々の暮らしに変化が訪れていく……という展開。

 時間の流れが止まったような落ち着いた内装の喫茶店。ここを、“弱い人”たちがたびたび訪れる。悦子は人の話をただひたすら聞いて、穏やかな口調で話し掛ける。相手を丸ごと受け止める姿勢は、まるでカウンセリングのお手本のよう。悦子の前で、相手は無意識に心の内をさらけ出していく。そんな女性が一人になったとき、ふと孤独感をにじませ、胸の内を告白する場面が印象的だ。配役に意外性がなく無難な点は否めないが、悦子を慕うおい役の阿部さんのたたずまいはいい。破天荒で不器用だが愛情深く憎めない。悦子に心配をかけながら、実は見守っているという二人の関係性も温かい。小さな共同体である村人たちの姿には、寄り添い合って生きる助け合いの精神が貫かれている。房総半島の明鐘岬と実在の喫茶店が原作のモチーフとなっているという。クラシックギタリストの村治佳織さんがメインテーマを弾いている。丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで11日から公開。(キョーコ/フリーライター)

「ザ・テノール 真実の物語」 ユ・ジテと伊勢谷が共演 韓国テノール歌手の悲劇

映画「ザ・テノール 真実の物語」予告編

 100年に一人の声を持つ韓国人テノール歌手を襲った悲劇と日本人の音楽プロデューサーとの絆を描いた日韓合作映画「ザ・テノール 真実の物語」(キム・サンマン監督)が、10月11日から公開される。ともに俳優だけでなく監督としての顔も持つユ・ジテさんと伊勢谷友介さんが共演。オペラの名曲をちりばめた聴き応え十分の作品に仕上がっている。2010年の前作「ミッドナイトFM」でユさんを起用したキム監督がメガホンをとった。

 テノール歌手ベー・チェチョル(ユさん)は、「リリコ・スピント」に分類される繊細で力強い歌声を持ち、オペラの本場、欧州公演で大喝采(かっさい)を浴びた。私生活では妻ユニ(チャ・イェリョンさん)と一人息子に囲まれ、幸せな日々を送っている。チェチョルの声にほれ込んだ日本人の音楽プロデューサー、沢田幸司(伊勢谷さん)は、日本のオペラ公演に招聘(しょうへい)すべく、路上で直談判する。チェチョルの日本公演も成功を収め、沢田の会社の新人でオペラに無知だった美咲(北乃きいさん)もその歌声に心を動かされる。打ち上げ会の夜、沢田はチェチョルと深く絆を結ぶ。しかし、チェチョルは欧州で練習中に突然意識を失って倒れ、甲状腺がんを宣告される。さらに手術によって声が出なくなってしまうという事態に陥る……という実話に基づいたストーリー。

 冒頭、オペラの華やかな舞台を裏から丁寧に見せていく。豪華絢爛(けんらん)な舞台上でチェチョルが喝采を浴びる姿を、さまざまなショットで映し出し、成功に酔いしれている姿がまぶしく見える。この輝きから一転、声を失って奈落の底に落とされたときの衝撃は、オペラの感動をチェチョルと一緒に味わったあとだからこそ、とてつもなく大きい感じる。絶望……その一言しかない。生命線を断たれた芸術家の焦りと苦悩を、ユさんが大熱演。人生の激動の渦にいる日々を、舞台のようなメリハリの利いた演出で見せる。チェチョルさん本人の全盛期の歌声で吹き替えられた歌唱シーン「誰も寝てはならぬ」(プッチーニ「トゥーランドット」から)に酔いしれる。ユさんは発声、呼吸、姿勢など細かく指導を受けたという。音楽プロデューサーとの国境を越えた男の友情と妻の献身的な支え、そして日本の医療技術が一人の芸術家を守った。諦めない強さは、周囲の人々の応援があってこそ最強になるのだと思い知らされる。東劇(東京都中央区)ほかで11日から公開。(キョーコ/フリーライター)

「映画 ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ」 4人そろって大活躍

映画「ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ」予告編

 人気アニメ「プリキュア」(ABC・テレビ朝日系)シリーズの劇場版最新作「映画ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ」(今千秋監督)が10月11日に公開される。プリキュアシリーズは、普通の女の子が妖精の力を借りて伝説の戦士プリキュアに変身し、さまざまな困難に立ち向かう姿を描くアクションファンタジー。2004年の第1弾「ふたりはプリキュア」から毎年新シリーズが放送され、現在は第11弾「ハピネスチャージプリキュア!」が放送中だ。今作では、困っている人を放っておけない元気で明るい中学2年生の愛乃めぐみ(キュアラブリー)らが、人形たちの楽園・ドール王国を危機から救うために戦う姿を描き、千葉県船橋市の非公認キャラクター・ふなっしーが“本人役”で登場することも話題。

 愛乃めぐみ(声・中島愛さん)らが保育園で人形劇を見せていると、突然バレリーナの人形が話し出し、「王国を救って!」と頼まれる。バレリーナ人形のつむぎ(声・堀江結衣さん)に連れられ人形たちの楽園・ドール王国へやって来ためぐみらは、数多くのぬいぐるみに歓迎されるが、そこにサイアークが出現。めぐみらはプリキュアに変身しサイアークを倒すと、王国のジーク王子(声・小野大輔さん)から舞踏会に招待される。ところが再びサイアークが現れ、さらに謎の男・ブラックファング(声・森川智之さん)も出現し、つむぎが捕えられてしまう。王国を守るためプリキュアたちが立ち上がるが……というストーリー。

 大人、そして男ながら、「プリキュア」シリーズの映画を見て思わずうるうると来てしまった。みんなの幸せを目指すめぐみと、やむにやまれぬ事情を抱えるつむぎのやり取りは、さまざまなことを考えさせられる。助け合う相手がいることの大切さや絆、誰かの力になるということの難しさなど、詰め込まれたメッセージの数々が痛みと優しさを伴って見る人の心に訴える。もはや子供向けアニメの劇場版という範疇(はんちゅう)を超え、大人が見ても十分に楽しめる作品だ。もちろん、映画版だけのスペシャルフォームチェンジや、スーパーハピネスラブリーとなって戦うキュアラブリーの雄姿といった華やかなアクションも見逃せない。恒例のミラクルライトでの応援シーンでは、緊迫感をあおる意外な演出がスパイスとなっている。ゲスト出演しているふなっしーは、普段の動きの再現率も高く、ある意味、作品をぶち壊して楽しませてくれる。11日から新宿バトル9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/毎日新聞デジタル)

「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」 ヒロイン自らが生死を決断する24時間を描く

映画「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」特別映像

 映画「キック・アス」(2010年)でブレークしたクロエ・グレース・モレッツさん主演の映画「イフ・アイ・ステイ」が、10月11日から全国公開される。世界34カ国で出版されているゲイル・フォアマンさんのヤングアダルト小説を映画化。自動車事故に遭い昏睡(こんすい)状態に陥ったヒロインが、自ら生か死かを“決断”するまでの24時間を描く。

 17歳のミア(モレッツさん)は、チェロ奏者になることを夢見る高校生。先ごろ名門ジュリアード音楽院の試験を受けたばかりだ。ある大雪が降った朝、両親(ジョシュア・レナードさん、ミレイユ・イーノスさん)と弟(ジェイコブ・デイビーズ君)とともに乗った車に対向車が突っ込み、ミア以外の家族は死に、ミアも昏睡状態に陥ってしまう……という展開。

 生死の境をさまようヒロインの魂が、過去の出来事をたどっていく。チェロ好きのミアの才能を伸ばすために両親がしてくれたこと。付き合い始めて1年になる大好きなアダム(ジェイミー・ブラックリーさん)との出会いや初デートのこと……。それらはミアの思い出であり主観だが、どれも共感できるものばかりで、「幸せ」に特別なことは必要ないのだと改めて気付かされた。主演のモレッツさんは本当にきれいになった。正統派の美人ではないが、喜怒哀楽を素直に表現し、クルクルと変わる表情を見ているだけで時間がたつのを忘れた。「ワールド・ウォーZ」(13年)でブラッド・ピットさんの妻を演じたイーノスさんも、ちょっと飛んでいるが娘思いのよき母を好演。監督は、ドキュメンタリー映画「ファッションが教えてくれること」(09年)のR.J.カトラーさん。女優ドリュー・バリモアさんの初監督作「ローラーガールズ・ダイアリー」(09年)で自ら書いた小説を脚色したショーナ・クロスさんが脚本を担当している。新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで11日から公開。(りんたいこ/フリーライター)

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