「映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年」 まるちゃんが恋? 最高の“胸キュン”シーンも
人気アニメ「ちびまる子ちゃん」の放送25周年を記念して製作された劇場版最新作「映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年」が12月23日、公開された。23年ぶりの劇場版で、脚本は原作者のさくらももこさんが担当。イタリアから来た少年アンドレア、香港から来た少女シンニー、ブラジルから来た少女ジュリア、ハワイから来た少年ネプ、インドから少年シンが登場し、まる子やたまちゃん、野口さん、はまじらおなじみのメンバーとの心温まる交流が描かれている。
「ちびまる子ちゃん」は、小学3年生のまる子やその家族、友人との交流を描いたアニメ。放送回数は1100回を超え、原作マンガの累計発行部数は約3200万部。スペシャルドラマや連続ドラマ化もされた。今回の劇場版は、まる子たちが住む町に世界の国から子供たちがやって来て、まる子の家にはイタリア人の少年アンドレアが滞在することになり……というストーリー。アンドレアの声を俳優の中川大志さんが担当し、タレントのローラさん、振り付け師のパパイヤ鈴木さん、お笑いタレントの劇団ひとりさん、渡辺直美さんもゲスト声優として参加している。
出会った時からまる子に興味を持ち、積極的に交流を図ろうとするアンドレア。そんなアンドレアに戸惑うばかりのまる子だったが、アンドレアが日本に来た本当の理由を明かしてからは、アンドレアを受け入れ、ある目的を一緒に果たそうと協力するようになっていく。週末を使った京都と大阪への旅行や灯篭(とうろう)祭を経て、やがて離れがたくなっていく2人。そこに芽生えた感情は友情だったのか、淡い恋心だったのかは最後まで明らかにはされないが、お別れの日、空港で互いに将来の夢を明かし、再会を誓い合う場面は、涙なしでは見られない。また灯篭祭で、祭り客の波に巻き込まれたまる子にアンドレアが救いの手を伸ばす場面も、ちびまる子ちゃん史上最高と思われる“胸キュン”シーンとして今後もファンの間で語り継がれていくに違いない。今作では、メインテーマ「おどるポンポコリン」と挿入歌「キミを忘れないよ(ムービーバージョン)」を大原櫻子さんが担当。そしてウルフルズ「おーい!!」がエンディングを盛り上げる。映画はお台場シネマメディアージュ(東京都港区)ほか全国で公開中。(山岸睦郎/毎日新聞デジタル)
「クリード チャンプを継ぐ男」 「ロッキー」シリーズ最新作はアポロの息子の物語
映画「ロッキー」シリーズの最新作となる「クリード チャンプを継ぐ男」(ライアン・クーグラー監督)が12月23日に公開された。今作はシルベスター・スタローンさん主演で人気を博したシリーズの新章で、ロッキーの親友にしてライバルであるアポロの息子と出会い、共にチャンピオンを目指して奮闘する姿を描く。ロッキー・バルボアをスタローンさんが演じるほか、アポロの息子であるアドニス・ジョンソンをマイケル・B・ジョーダンさんが熱演。物語だけでなくボクシングのファイトシーンにも熱さがみなぎっている。
アドニス・ジョンソン(ジョーダンさん)はボクシングのヘビー級チャンピオンだったアポロ・クリードの息子だが、アドニスが生まれる前に死んでしまったため、父について詳しくは知らなかった。アドニスにはボクシングの才能があり、父がロッキー・バルボア(スタローンさん)と死闘を繰り広げたフィラデルフィアへと向かう。そこでアドニスはロッキーを捜し出し、自分のトレーナーになってくれるよう依頼し……というストーリー。
「ロッキー」シリーズの最新作にして初のスピンオフとなる今作は、これまでのシリーズ作を見ていなくとも、熱いドラマと迫力あふれるボクシングシーンが堪能できる。主人公のアポロの息子であるアドニスが、亡き父親とよきライバルで親友だったロッキーを師匠に迎えて成長していくという師弟の人間ドラマを描いた王道のストーリーではあるが、根底にある相当量の熱が魂を震えさせる。難解さや駆け引きといったスリリングな仕掛けはなく、潔いほどストレートで熱いドラマは見ていてすがすがしいほど。シリーズ初見の人でも楽しめるが、往年のファンであれば「ロッキー」の1作目を彷彿(ほうふつ)とさせる展開に胸アツとなり涙腺を刺激されてしまうだろう。“ロッキーの後日譚(たん)”としても楽しめる。老いたロッキーと若きアドニスのそれぞれの生きざまが、世代を超えて感動を呼ぶ。23日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「きみといた2日間」 インターネットで知り合った男女の心の軌跡 “本音”にびっくり
今年の米アカデミー賞で3部門に輝いた「セッション」(2014年)で主人公を演じたマイルズ・テラーさんが主演した映画「きみといた2日間」(マックス・ニコルズ監督)が12月23日に公開された。インターネットで知り合った男女の2日間における心の軌跡を描く。「ウォーム・ボディーズ」(13年)に出演したアナリー・ティプトンさんがヒロインを務めるほか、米ドラマ「ゴシップガール」(07~12年)でバネッサを演じたジェシカ・ゾーさんらが出演している。監督を務めたのは、「卒業」(1968年)や「ワーキング・ガール」(88年)などの作品で知られるマイク・ニコルズ監督の息子マックスさんで、初の長編監督作となった。
米ニューヨークで暮らすメーガン(ティプトンさん)は、医大を卒業したものの就職活動がうまくいかず、その上、婚約までしていた恋人に突然別れを告げられ、家の中でくすぶっていた。ルームメートのファイザ(ゾーさん)に発破を掛けられたこともあり、出会い系サイトに登録、デートをしてくれる相手を見つけようとする。それに応えたのがアレック(テラーさん)。メーガンはアレックの部屋に行き、一晩を過ごすが、翌朝、大雪のために彼の家で足止めをくらうことに……というストーリー。
大雪のせいで帰るに帰れなくなったメーガン。時間を持て余した2人は互いのことを話し始めるが、それがついに前夜の体験の批評に発展。そこで語られる男女それぞれの“本音”のあけすけさには驚いた。何より、メーガンの無防備過ぎる相手選びには、“出会い系サイト=恐ろしい”というイメージがある筆者のようなおばさんには共感しづらい。しかし、ネットを自在に使いこなせる今の若者には、抵抗なく受け止められる設定なのだろう。物語が主に室内で展開するため、ニューヨークらしさが味わえなかったのは残念だが、親密さを増すための室内の雰囲気作りや敷物の意外な使い方などは、試してみる価値がありそうだ。カップルでどうぞといいたいところだが、“本音”の内容が内容なだけに、よほど親密でないなら友達と、あるいは一人で見に行った方がいいかもしれない。23日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで公開中。 (りんたいこ/フリーライター)
「完全なるチェックメイト」 神経衰弱ギリギリの攻防を、当時の空気とともに
米国の伝説の天才チェスプレーヤー、ボビー・フィッシャーさんの物語「完全なるチェックメイト」(エドワード・ズウィック監督)が12月25日に公開された。米ソ冷戦下、国の威信を懸けて闘った男の神経衰弱ギリギリの緊張感あふれる心理ドラマがたっぷりと描かれている。主演はトビー・マグワイアさん。「ラスト サムライ」(2003年)で知られるズウィック監督が手掛けた。
1972年。アイスランドの首都レイキャビクでチェスの世界王者決定戦が行われていた。最強の王者であるソ連のボリス・スパスキー(リーブ・シュレイバーさん)に挑んだのは、米国の若き天才ボビー・フィッシャー(マグワイアさん)だった。ボビーは政治活動に忙しい母の元で寂しい子ども時代を送り、独学でチェスを覚えてチェスクラブに入門。10代で全米チャンピオンに輝いた。やがて一人になったボビーは、ますますチェスにのめり込み、支援者も現れて、世界一を目指して駆け上がっていく……という展開。
天才の物語は、どうしてこんなに面白いのだろうか。時間にルーズ。些細(ささい)なことにこだわる。急にキレる。周囲を振り回す。困った大人の代表のような人物だが、どこか純粋だ。孤独な少年時代を過ごしたボビーは、きっとチェスだけが心のよりどころだったのだろう。時代は米ソ冷戦下、ソ連が24年間保持した世界王者のタイトルに米国が挑む構図は、戦場をチェス盤に代えた代理戦争だ。しかしボビーは神経が細かった。「僕が世界一だ!」と自信満々でほえていなければ、プレッシャーに押しつぶされてしまうほどに……。一方の、ソ連代表スパーキーのプレッシャーもきちんと映し出されている。敵対する国同士だが、同じような人間の姿がある。
今でも語り継がれているというレイキャビクでの対局は緊張感たっぷりに描かれている。衣装も当時を彷彿(ほうふつ)とさせ、演じるマグワイアさんとシュレイバーさんの目線や手の動きだけでなく、観客の表情までもが秀逸で高揚感がある。チェスのルールが分からなくても手に汗を握り、なんて神経を使うゲームなんだとゲームに吸い寄せられる。繊細なボビーにとっては、人一倍神経をすり減らす。その精神状態を姉だけが心配していたが、なかなか周囲に理解されない天才のもの悲しさも余韻となって心に残った。25日からTOHOシネマズ シャンテ(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
「神様なんかくそくらえ」 NYストリート暮らしの少女の破滅的な恋愛の行方は…
2014年の第27回東京国際映画祭でグランプリと最優秀監督賞のダブル受賞した話題作「神様なんかくそくらえ」(ジョシュア&ベニー・サフディ監督)が、12月26日から公開される。ニューヨークのストリートで暮らしたアリエル・ホームズさんの実体験を基に、本人がヒロインを演じ、若者の破滅的な恋愛と刹那(せつな)的な日々を斬新な映像に焼き付けている。
19歳の少女ハーリー(ホームズさん)は、ニューヨークの路上生活者。同じ仲間の恋人イリヤ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズさん)はエキセントリックな若者で、ハーリーに愛の証明として自殺を求めてひと騒動を起こす。イリヤが姿を消して、ハーリーは周囲から心配されるが、彼への愛は変わらなかった。やがて、ドラッグディーラーのマイク(バディ・デュレスさん)の家に住み、ドラッグにふけったり、物乞いをしたりするハーリー。再びイリヤが姿を現し……という展開。
少女は破滅的な恋愛に憧れている。彼女にとって恋人イリヤは「初めて出会った優しい人」だった。生まれたてのひな鳥が親鳥にくっついて歩くように、イリヤへの愛は絶対だった。自殺未遂、ドラッグ、盗み……危険な符号が並ぶのに、どこか純粋な雰囲気が漂っているのは、彼女のいちずな愛が核にあるからだろう。イリヤは根っこでは深く彼女を愛している優しい若者なのだが、育ちなのか性格なのか、表現を素直にできない。親に見捨てられたのか、もともといないのか、背景は明らかではないが、ドラッグにしか頼れず刹那的に生きるしかない若者が街角で暮らしているという事実は衝撃的だ。
社会の末端で目も向けられずに暮らす人々に、インディペンド映画界の新鋭であるサフディ兄弟が目を向けた。サバイバルする若者のアップの表情を、野生動物を追うがごとく望遠カメラで捉えて、その効果は絶大で、瞬間、瞬間の生きざまが鮮烈に伝わってくる。一方で、カメラはほとんど街全体を映し出さない。人物の行動が生き生きと描写されたあと、図書館、ファストフード店……などが映り込んでいる。本人が演じるヒロインは、端正な顔立ちと強烈なエネルギーが魅力的だ。恋人イリヤ役は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(2011年)などのジョーンズさん。冨田勲さんの音楽が、異空間と浮遊感を感じさせ、とても面白い仕上がりになっている。26日から新宿シネマカリテ(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)