「新宿スワン2」綾野剛演じる風俗スカウトの新たな戦い 伊勢谷、浅野、椎名らこわもての演技が鬼気迫る
俳優の綾野剛さん主演の映画「新宿スワン2」(園子温監督)が1月21日、公開される。“夜の世界”に生きる男たちの野望がぶつかり合う同シリーズの続編は、主人公・白鳥龍彦を演じる綾野さんはじめ、敏腕風俗スカウト・真虎役の伊勢谷友介さん、新たに加わった浅野忠信さんや椎名桔平さんら前作を凌駕する激しさと熱さ、キャストの鬼気迫る演技の迫力がひしひしと伝わってくる。
「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載された和久井健さんの人気マンガ「新宿スワン」が原作。前作では、東京・新宿の歌舞伎町を拠点とするスカウト会社「バースト」のスカウトマンになった白鳥龍彦(綾野さん)が過酷な試練を乗り越えていく姿が描かれたが、続編となる「2」では横浜を舞台に、新たな敵との抗争が繰り広げられる。バーストのエース格となった龍彦は、バーストの山城社長(豊原功補さん)から幹部の関玄介(深水元基さん)とともに横浜行きを命じられる。そこはタキ(浅野さん)と呼ばれる男が支配しており、全面戦争へと突入する……という展開。
綾野さん、伊勢谷さん、浅野さん、椎名さんらが居並ぶシーンは“こわもて”ぶりが利いていて、まさに裏社会のダークな魅力をリアルに感じさせてくれる。特に綾野さんと浅野さんが激突するシーンは壮絶だ。そうした中、広瀬アリスさん演じるヒロインのキャバクラ嬢・小沢マユミがセクシーで、激しいシーンの中で一服の清涼剤となっている。21日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「沈黙-サイレンス-」スコセッシ監督作に日米の名優そろい踏み ハリウッド作初出演の窪塚洋介が好演
遠藤周作の小説を、「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)などで知られる巨匠マーティン・スコセッシ監督が映画化した「沈黙-サイレンス-」が、1月21日から公開される。西洋と東洋の信仰の違いや、人として生きる価値とは何かなど、己の真価が問われるヒューマン作だ。スコセッシ監督は28年間、この企画を温めながら、己の信仰心への問いかけや日本への理解を深めていき、「今だから撮れた」と語っている。キャストには日米の名優が顔をそろえる中、窪塚洋介さんが今作でハリウッド作に初出演。人間くさく複雑な役どころのキチジローになり切っている。
17世紀。江戸初期の長崎で、棄教したとされる師匠フェレイラ(リーアム・ニーソンさん)を捜しに、ポルトガル宣教師ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールドさん)とガルペ(アダム・ドライバーさん)が日本にやって来る。キチジロー(窪塚さん)を通じて、隠れキリシタンの村人たちと親交を深めるが、キリシタン弾圧が激しさを増していき……という展開。「96時間」シリーズや「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(12年)のニーソンさん、2代目スパイダーマンとして知られるガーフィールドさんらハリウッドの人気俳優はもちろん、窪塚さん、浅野忠信さん、小松菜奈さん、イッセー尾形さん、加瀬亮さんら日本人キャストも多数出演している。
窪塚さんが演じたビデオを見てスコセッシ監督が気に入り、今作への出演が決まったという。強い者に弱く、自分が可愛く、気が小さいのに、時に大胆。まるで子どものような無邪気さもあり、宣教師ロドリゴの信仰心をかき乱すキチジロー。窪塚さんはそんな多面性を持った親しみを持てるキャラクターを作り上げることに成功している。
イッセーさんが演じる井上筑後守は、キリシタンたちに、まずは優しげに信仰をすてさせようと迫る。いやらしい笑みを浮かべる井上に、キリシタンから「転んだ」過去を持つ複雑な心境まで見えてくる。イッセーさんはこの演技で、LA批評家協会賞で助演男優賞の次点に選ばれた。ほかにロドリゴに棄教を迫る通辞役に浅野さん、キリシタンの村人役に小松さん、加瀬さん、モキチ役で映画監督の塚本晋也さんが出演。小松さんもハリウッド作に初出演となった。
スコセッシ監督の入魂作で、今年度のアカデミー賞の主要部門にどれくらい食い込めるか24日のノミネート発表が楽しみなところだ。もし監督賞や作品賞を受賞したら「ディパーテッド」(06年)以来11年ぶりとなる。21日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
「ザ・コンサルタント」ベン・アフレックが面目躍如の動きを披露 深い!アクション映画
米俳優ベン・アフレックさん主演の映画「ザ・コンサルタント」(ギャビン・オコナー監督)が、1月21日から公開される。「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」(2016年)ではイマイチの評判だったアフレックさん。今回は、そのバットマンで培った肉体と運動能力を進化させ、面目躍如のアクションを披露している。
田舎町の会計士クリスチャン・ウルフ(アフレックさん)の元に、ある日、大企業の財務調査依頼が舞い込む。数字に関して並み外れた能力を持つウルフは、膨大な量の帳簿からたちまち不正を見抜くが、依頼は一方的に打ち切られ、その日を境に何者かに命を狙われ始める。実はウルフには、裏社会の会計コンサルタントという、もう一つの顔があった。米国政府がウルフの正体暴きに躍起になる中、ウルフは大企業の背後にいるマフィアとの闘いに身を投じていく……というストーリー。
ウルフの戦闘能力には驚かされる。一見もっさりしているが、射撃の腕は抜群で、敵を前にするや、打つ、殴る、たたきつけるなど、全身を使った瞬発的な動きは芸術的ともいえる。アフレックさんは、インドネシアの伝統武術「プンチャック・シラット」を数カ月かけてマスターしたといい、その大胆かつ流れるような動きは感動的ですらある。その一方で、ウルフの過去は複雑ながら実に考え抜かれており、その上、伏線も張り巡らされ、かなり頭を使う。いうなれば“深いアクション映画”。それだけに、すべてが収まるところに収まったときには、「なるほど!」と膝を打った。21日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「黒執事 Book of the Atlantic」 「豪華客船編」をアニメ化 胸アツなアクションにくぎ付け
人気マンガ「黒執事」の劇場版アニメの新作「黒執事 Book of the Atlantic」(阿部記之監督)が1月21日、公開される。豪華客船の船上という逃げ場のないシチュエーションでシエルとセバスチャンが、巻き起こる騒動に華麗に立ち向かう。シリーズでもおなじみの死神と悪魔によるアクションもかなり胸アツだ。
2006年9月から「月刊Gファンタジー」(スクウェア・エニックス)で連載中のマンガが原作。英国の名門貴族のファントムハイヴ家を舞台に、13歳のわがままな主人に仕える完全無欠の執事セバスチャンの活躍を描いている。テレビアニメは08年10月、10年7月、14年7月の3期にわたって放送され、14年には水嶋ヒロさんと剛力彩芽さんの共演で実写映画が公開された。
劇場版アニメは阿部監督、キャラクターデザインの芝美奈子さん、A-1 Pictures制作というテレビアニメの第3期のスタッフが手がけた。死者蘇生のうわさを耳にしたシエル(声・坂本真綾さん)とセバスチャン(声・小野大輔さん)は、調査をするべく豪華客船・カンパニア号に乗り込み……というストーリー。シリーズの中でも高い人気を持つ「豪華客船編」のエピソードをアニメ化している。
悪魔と死神が死者蘇生の真実を巡って激突するシーンをはじめ、今作ではアクションシーンへのこだわりが強く、原作ファンならずとも熱く、かつ美しいアクションの連続に引き込まれていくはずだ。ロックバンド「シド」が歌う主題歌「硝子の瞳」が情感たっぷりに劇場版アニメの世界観を彩る。21日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開。(遠藤政樹/フリーライター)