「駆込み女と駆出し男」心の機微をスピード感を持続させつつ描いた人情喜劇
俳優の大泉洋さん主演の映画「駆込み女と駆出し男」が5月16日から全国公開される。井上ひさしさんが晩年11年をかけて書き上げた時代小説「東慶寺花だより」を、映画「わが母の記」(2011年)の原田眞人監督が映画化した。縁切寺で知られる鎌倉の東慶寺に駆け込んできた女たちの悲喜こもごもを、見習い医者で駆出し戯作者の大泉さん演じる信次郎を軸に描いていく。
江戸時代後期。幕府公認の縁切寺として有名な鎌倉にある東慶寺。しかし、離縁を望む女性たちがみな、そこに入れるわけではない。寺に駆込む意思表示をしたのち、御用宿で行われる“聞き取り調査”をクリアしなければならないのだ。その御用宿・柏屋に、見習い医者でありながら戯作者に憧れる中村信次郎(大泉さん)は、縁あって居候することになる。そんなある日、東慶寺に、顔に火ぶくれのある女・じょご(戸田恵梨香さん)とお吟(満島ひかりさん)が一緒に駆け込んでくる……という展開。
ひとくちに「離縁」といっても、憎み合って別れた場合ばかりではない。そこに隠された男女の心の機微が、笑いとほろりとさせるエピソードとともに描かれていく。男女間の愛だけではない。肉親の愛やよるべない身の上だからこそ固く結ばれていく人間同士のつながりまでも丁寧に描きながら、スピード感を持続しつつ見せる原田監督の手腕には感服しきりだ。2月に行われた完成報告会見で、柏屋の主人、源兵衛を演じた樹木希林さんは「若い人(俳優)たちが持っている力以上の力を発揮している」と話していたが、その言葉通り、「あだっぽさ」にこだわり続けたお吟を演じ切った満島さん、お吟を姉と慕い、日々の勤めに黙々と取り組み、日がたつほどに表情が柔らかくなっていく「じょご」を演じた戸田さん、夫の敵討ちをもくろみ寺に駆け込んで来るゆう役の内山理名さんなど、女優たちの演技が生き生きしている。さらに、宝塚出身の陽月華さんが演じる、東慶寺の院代・法秀尼のりりしくカッコいいさまといったら……。もちろん、立て板に水のせりふ回しと、共演者と丁々発止のやりとりを見せる大泉さんの熱演はいわずもがな。ほかに、堤真一さん、キムラ緑子さん、山崎努さんらが出演。16日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
「明烏」菅田将暉主演の福田雄一監督最新作 崖っぷちホストらの群像劇コメディー
俳優の菅田将暉さん主演の映画「明烏(あけがらす)」(福田雄一監督)が5月16日に公開される。古典落語の「明烏」や「品川心中」などをベースに、借金返済をしないと海の底に沈められる最下位ホストと同僚のホストや女性客らが巻き起こす騒動を描いたコメディー作。主人公のナオキ役の菅田さんはじめ、城田優さん、若葉竜也さんが同僚ホストを演じ、ムロツヨシさんや佐藤二朗さんら福田組の常連俳優が脇を固めている。笑いの絶えない怒濤(どとう)の展開に加え、映画のオープニング曲の作詞を城田さんが手掛けたことも話題を呼んでいる。
東京・品川でひっそりと営業するホストクラブ「明烏」で最下位のホストのナオキ(菅田さん)は、借金返済の期限が迫っていたが、返済金1000万円を用意できたことを祝い、同僚のアオイ(城田さん)、ノリオ(若葉さん)たちと宴会を開いた。しかし、翌日の夕方にナオキが目を覚ますと1000万円はどこにもなく、金が用意できたのは夢だったらしいことに気づく。借金を返せなければ東京湾に沈められてしまうナオキは、同僚や金の払えない女性客・明子(吉岡里帆さん)らを巻き込み返済方法を考えるが……というストーリー。
テンポのいい会話とハイテンションの演技で進行していく今作は、主人公に借金返済までのタイムリミットがあるものの鬼気迫る感じはみじんもなく、どこまでいってもコミカルなノリが続くので、安心して腹を抱えて笑うことができる。脚本の妙もさることながら、アフロの菅田さんやチャラさ全開の城田さん、怖いはずがおとぼけぶりがキュートな借金取りの新井浩文さんなど、とにかくキャストのおバカな演技ぶりに思わず笑ってしまう。さらにムロさんと佐藤さんの、持ち味を十二分に発揮した演技は出色。物語の進行が少しゆったりと感じてしまうかもしれないが、会話は小気味よく、まさかのクライマックスには本当に驚かされた。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「Zアイランド」哀川翔30周年記念作 ヤクザとゾンビが戦う異色のアクション
俳優の哀川翔さんの芸能生活30周年記念作品で、お笑いコンビ「品川庄司」の品川ヒロシさんがメガホンをとった映画「Zアイランド」が5月16日に公開される。謎の感染症がまん延した絶海の島を舞台にしたアクションエンターテインメント作で、品川監督が脚本も手掛けている。哀川さんの本気のアクションに加え、木村祐一さんや宮川大輔さんらお笑い芸人たちの熱演、怪演も見どころ。さらに、鶴見辰吾さんや鈴木砂羽さんといった実力派が脇を固めるほか、風間俊介さん、窪塚洋介さんといった若手の演技派が物語を盛り上げている。
高級クラブで豪遊していた宗形組組長の宗形博也(哀川さん)と、弟分の武史(鶴見さん)や信也(湘南乃風のRED RICEさん)は、敵対する竹下組に襲わ重傷を負う。抗争が原因で武史は逮捕され、組も解散してしまう。10年後、宗形は運送業を営みながら武史の娘・日向(山本舞香さん)の面倒を見ていたが、出所する武史に会いたくないと日向が家出。宗形らは武史の元妻・桜(鈴木さん)とともに、日向が向かったという家族との思い出の地・銭荷島(ぜにじま)に向かい……という展開。
ヤクザとゾンビが戦うアクション映画という、どこかB級感を漂わせながら、アクションだけでなく、コメディー要素に感動の人間ドラマもあり、極上のエンターテインメント作に仕上がっている。物語の骨格は仲間が集まり試練に挑む王道ではあるが、ゾンビが融合することで快作、いや“怪作”に早変わり。絶妙なキャラクター配置と、リアリティーとあり得なさ加減のバランスなど、品川監督らしい脚本とこだわりの演出が光っている。哀川さんの芸能生活30周年記念作品だが、安易な感動ものに走らず、アクション全開の個性的な作品で攻めてくるあたり、哀川さんのイメージにぴったり。よくぞここまで個性派を集めたといえるキャストの“怪演”が物語の熱量をさらに上げている。“ゾンビ映画あるある”が詰め込まれ、ゾンビ好きにはたまらない仕上がりで、あまり知らなくても風間さんの説明ぜりふで心置きなく楽しめる。角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「ゼロの未来」テリー・ギリアム監督最新作 近未来を舞台に生きることの意味を問う
「未来世紀ブラジル」(1985年)や「12モンキーズ」(95年)などで知られるテリー・ギリアム監督の最新作「ゼロの未来」が5月16日に公開される。コンピューターに支配された近未来の世界を舞台に、謎めいた数式「ゼロ」の解明に挑む孤独な天才プログラマーが、ある女性との出会いをきっかけに人生が動き出していく様子を描いている。2度のアカデミー賞に輝いたオーストリア出身の俳優クリストフ・ヴァルツさん、「海の上のピアニスト」(98年)などの仏女優のメラニー・ティエリーさんら実力派が顔をそろえ、人間の存在意義や真実の愛といった普遍的な事柄について深く考えさせられる。
コンピューターで世界を支配する大企業・マンコム社に勤務する天才プログラマーのコーエン(ヴァルツさん)は、「ゼロ」という謎の数式解読に挑みつつ、人生の意味を教えてくれる電話が鳴るのを待っていた。ある日、上司のジョビー(デビッド・シューリスさん)が開催したパーティーでベインズリー(ティエリーさん)と出会う。強引なベインズリーに最初は戸惑うコーエンだったが、次第に引かれるようになる。さらに数日後、壊れたコンピューターの修理をしにマネージメントの息子(ルーカス・ヘッジズさん)が現れ驚くべき秘密をコーエンに明かす……というストーリー。
コンピューターに管理された近未来が舞台で、主人公は生きる意味を見失いそうになっている。これは舞台と設定こそ変化しているが、根底に流れるテーマは「未来世紀ブラジル」に通じるものがある。突き抜けた世界観やストーリーもそうだが、近未来でありながらレトロ感を漂わせている彩度が高い色遣いの都市が印象的だ。主人公のコーエンに代表される道化的な登場人物はじめ、主人公が暮らす荒廃した教会などあらゆるものがカオスに満ち、洗練されていながらもどこかアナログさも感じさせる。コーエンを演じるヴァルツさんの演技は、笑いと愛らしさがあふれ、まさにはまり役。ブラックユーモアやウイットに富んだ脚本や演出などが、複雑な現代における人生の意味を巧みに描き出している。新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「真夜中のゆりかご」二つのカップルの見え方まで変わる北欧サスペンス
米アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した「未来を生きる君たちへ」の女性のスサンネ・ビア監督と脚本家アナス・トーマス・イェンセンさんがタッグを組んだ最新作「真夜中のゆりかご」が5月15日から公開される。刑事であり父親でもある一人の男の行動が、サスペンスタッチの物語に波紋を広げている。児童虐待、ドメスティックバイオレンスなどの社会問題に切り込んだ北欧映画だ。
刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター・ワルドーさん)は、美しい妻アナ(マリア・ボネビーさん)と生まれたばかりの息子とともに、湖畔の瀟洒(しょうしゃ)な邸宅で幸せに暮らしている。アンドレアスの息子は夜泣きがひどく、アナと交代で夜中にあやす日々。ある日、通報で踏み込んだ狭い部屋で、薬物依存症の男トリスタン(ニコライ・リー・コスさん)と殴られていたらしい女性サネ(リッケ・メイ・アンデルセンさん)と汚物まみれの赤ちゃんを見つけた。トリスタンは逮捕されたが、ほどなく釈放される。そんなある朝、アンドレアスの息子に悲劇が……という展開。
家族の物語と人間のえぐみを繊細に描き出すコンビの6作目。上流階級の暮らしを送る刑事の夫婦と、貧困で薬物依存症の男女。2組の対照的なカップルには、それぞれに同じくらいの月齢の赤ちゃんがいて、かたや大きな部屋でゆりかごに揺られ、かたやすさんだせまい部屋で汚れにまみれている。何が起こるかと見ているうちに、2組のカップルのイメージが入れ替わっていくのが興味深い。主人公アンドレアスが息子をすり替える……という狂気の行動を分岐点に、“犯罪”のこちら側とあちら側にいた両者の見え方まですり替わっていく。アンドレアスは虐待児童を救った気になったのか、それとも不安定な妻のためなのか。アンドレアスの行動は理解し難く、暴力夫のトリスタンの方が薬物ゆえの錯乱と単純な性格で、まだ理屈が通っているように見える。自らの行動で首をしめ、良心の呵責(かしゃく)にさいなまれる主人公の複雑な役柄を演じるのは、「オブリビオン」(2013年)などハリウッド作でも活躍中のデンマーク人俳優コスター・ワルドーさん。ビア監督作初出演のサネ役アンデルセンさんの演技も、母親としての芯の強さがうかがえて、感動を覚えるほどだ。モデルであるアンデルセンさんは、ビア監督のたっての願いで出演が決まったという。TOHOシネマズ シャンテ(東京都中央区)ほかで15日から公開。(キョーコ/フリーライター)
「ラン・オールナイト」 マンネリ感ゼロのリーアム・ニーソン主演アクション
リーアム・ニーソンさんの主演映画「ラン・オールナイト」(ジャウム・コレット・セラ監督)が5月16日から全国で公開される。「アンノウン」(2011年)や「フライト・ゲーム」(14年)など、心理描写に重きを置く作品を作ってきたコレット・セラ監督だが、今回はバランスをとり、大掛かりなカーチェイスや銃撃戦を要所、要所で入れ込み、スピード感重視の最後まで目が離せない作品に仕上げている。
ニューヨークを牛耳るマフィアのボス、ショーン(エド・ハリスさん)の元で、長く殺し屋として働いてきたジミー(ニーソンさん)。そんなジミーを息子のマイク(ジョエル・キナマンさん)は嫌っていた。ある日、マイクはショーンの息子ダニー(ボイド・ホルブルックさん)が殺人を犯す現場を目撃してしまう。マイクの身が危ないことを知ったジミーはマイクの元に向かい、あろうことかダニーを射殺してしまう。それによってジミーとマイクは、ショーンに命を狙われることになってしまう……という展開。
コレット・セラ監督とアクション映画。その“相性の悪さ”を見る前は懸念したが、それはあっさり覆された。ニューヨークの摩天楼を効果的に切り取るカメラワークで、物語は緊張感に富んでおり、あれよあれよという間に進んでいく。一方で、息子の不祥事によって袂(たもと)を分かつことになってしまったショーンとジミーという親友同士の2人。息子を守りたい一心で自らが矢面に立つジミー、父を憎み、その姿を反面教師として成長しながらも、知ってか知らずか父と同じ言葉を愛する家族に掛けているマイク……彼らがそれぞれに抱える葛藤が物語の合間に見え隠れすることで、単なるアクション重視の映画にとどまらない作品になっている。脇役も脇役、ジミーの兄(ニック・ノルティさん)の登場のさせ方にも、心理描写を得意とするコレット・セラ監督らしさがのぞく。アクション映画が続いているニーソンさんだが、今回は飲んだくれの殺し屋という、「96時間」シリーズとはまた違う父親を演じており 、決してマンネリに陥っていない点もアピールしておきたい。16日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「国際市場で逢いましょう」東方神起ユンホ出演 男の人生に涙と笑いが詰まっている
昨年韓国で記録的なヒットを飛ばした映画「国際市場で逢いましょう」(ユン・ジェギュン監督)が5月16日から公開される。「TSUNAMI-ツナミ-」で観客動員数の記録を出したジェギュン監督の最新作。戦後の復興から現代まで、厳しい時代を生き抜いてきた一人の男の人生をドラマにした一大叙事詩だ。主演は「新しき世界」(2013年)のファン・ジョンミンさん。「東方神起」のユンホさんが出演しているのも話題だ。
釜山の国際市場で古い商店「コップンの店」を営む老夫婦ドクス(ジョンミンさん)とヨンジャ(キム・ユンジンさん)は、友人や家族に囲まれて幸せに暮らしている。店は立ち退きを命じられているが、ドクスは応じない。1950年、朝鮮戦争で逃げ惑う中、ドクスは父親と妹とはぐれてしまう。父は別れ際に「今日からお前が家長だ」とドクスに告げる。母、弟、妹とともに、国際市場にある店を営む叔母コップン(ラ・ミランさん)の元に身を寄せたドクス。学校に行きながら、靴磨きをして家計を助け始める。弟の学費を工面するため、西ドイツの炭鉱に出稼ぎに行き、看護師であるヨンジャと出会って恋に落ち……という展開。
今作は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、分断後の離散家族探しなど、韓国の近・現代の激動の中を生き抜いてきた親世代への讃歌だ。ドクスの回想によって、危険な仕事に従事するパニック的な展開と、妻との出会いというラブストーリーがあり、人生の中に涙と笑いが詰まっている。ドクスの家族への思いは、イコール、別れ別れとなった父親との長男の約束でもあって、古びた店を守る理由にもなっている。苦労に胸が詰まる思いがしたかと思えば、ドクスの青春時代はコミカルに、初恋は不器用に描かれるなど万国共通でほっこりとさせられる。本国でのヒットは、貧しい時代に必死になって生きてきた祖父や父親の姿と重なったのだろうか……。ドクスの親友役には、「10人の泥棒たち」(2012年)などの名脇役で知られるオ・ダルスさん。オさんが出ている映画にハズレはないという期待通り、ジョンミンさんとの見事な掛け合いがコミカルな見せ場となっている。日本でも絶大な人気を誇る東方神起のユンホさんが、実在した韓国の有名歌手役で出演しているのも話題だ。出演は短いシーンだけだが、おおらかな兵士としてきらりと光る存在感を放っている。少しだけ歌う場面が自然でさりげなく、ジェギュン監督の手腕が光る。ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで16日から公開。(キョーコ/フリーライター)
「蟲師 特別編『鈴の雫』」原作最終話を映像化 ヌシとなるべく生まれたカヤの物語
漆原友紀さんの人気マンガが原作の劇場版アニメ「蟲師 特別編『鈴の雫』」(長濵博史監督)が5月16日に公開される。「蟲師」は、1999~2008 年に「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載されたマンガで、05年と14年にテレビアニメが放送され、07年には実写映画化された。架空の日本を舞台に、蟲師を生業(なりわい)とする主人公・ギンコが、蟲によって引き起こされるさまざまな事象に対峙(たいじ)していく姿を描く。「鈴の雫」は、原作10巻に前後編で収録された最終エピソードをアニメ化。人でありながら山のヌシとなるべくして生まれたカヤを巡る物語が展開する。テレビアニメ第2期「続章」の特別編「棘のみち」も同時上映される。
葦朗(声・小川ゲンさん)の妹・カヤ(声・齋藤智美さん)は、生まれたときから体に草が生えていたが、ある日、姿を消してしまう。一方、旅の蟲師・ギンコ(声・中野裕斗さん)は山中で山のヌシと出会い、疲れている様子のヌシに薬を差し出す。その後、ギンコは妹のカヤを探す葦朗と出会い……という展開。
「蟲師」の魅力は、日本の里山や古い家屋などノスタルジックな風景が古き良き時代の日本を感じさせ、小さな生物や民話、伝承といったものを取り入れた独特の世界観にある。蟲の描写は少しグロテスクで驚かされもするが、柔らかく落ち着いた雰囲気の作風に心が和む。主人公ギンコは、ひょうひょうとしていて無気力そうでいながらも、心の奥には信念を持ち、芯の強さを感じさせるあたりが心憎い。劇場版ではギンコとカヤの物語が描かれるが、テレビシリーズと同じスタッフが手掛けているだけあり、作品の世界観はもちろん、クオリティーも高く、原作の最終エピソードを余韻の残るアニメとして見事に表現することに成功した。ギンコとカヤ、そして大いなる存在である「理」と三者三様の立場の考え方のどれに共感するか、また理解を示すかを考えながら見るのも一興だろう。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)