「ファインディング・ドリー」 「ニモ」の続編 極上の色彩の中で描かれるドリーの家族捜しの旅
ディズニー/ピクサーの劇場版アニメーションの新作「ファインディング・ドリー」(アンドリュー・スタントン監督)が7月16日に公開される。2003年に公開された「ファインディング・ニモ」の続編で、前作でカクレクマノミの二モを捜しに、ニモの父親のマーリンとともに冒険の旅に出たナンヨウハギのドリーを主人公にした物語。何でも忘れてしまう忘れん坊のドリーが、唯一忘れられなかった“家族の思い出”。ドリーはかすかな記憶を頼りに両親を捜すため、ニモとマーリンとともに再び旅に出る……。
人間に捕まったニモを救出しようとするニモの父マーリンと親友のドリーの冒険を描いた前作から1年後が舞台。ドリーはグレート・バリア・リーフのサンゴ礁でニモとマーリンらと幸せに暮らしていた。ある日、ドリーはニモの遠足に参加し“アカエイの大移動”を見学。うっかり大群に近づきすぎ、激流に飲み込まれてしまう。その瞬間、ドリーは以前にも同じような体験した際、両親が近くにいたことを思い出す。手がかりは“カリフォルニア州モロ・ベイの宝石”だった。
家族を捜す旅に出ることを決意したドリーは親友のニモとマーリンに助けを求める。そして、友だちのカメ・クラッシュの力を借りてカリフォルニア海流に乗り、モロ・ベイを目指す……。ようやくたどり着いたモロ・ベイで、ニモが凶暴なイカに襲われ、助けを呼びにいったドリーは人間に捕らえられ、海洋生物研究所(MLI)に連れていかれる。そこに両親やドリーの出生の秘密が隠されていることを突き止める……というストーリー。
日本語吹き替え版では前作に続き、ドリーを室井滋さん、マーリンを木梨憲武さん、そのほかカモフラージュの達人のタコのハンクを上川隆也さん、クジラ語を話すジンベエザメのディスティニーを中村アンさんが声を担当。また、歌手の八代亜紀さんが日本版エンドソングとしてジャズのスタンダード曲「アンフォゲッタブル」を歌い、さらにドリーが迷い込む水族館のアナウンスする“本人役”で登場している。字幕版ではハリウッドの大物女優シガニー・ウィーバーさんが声を担当した八代さんのアナウンスの場面は、つい噴き出してしまうようなウイットに富んだシーンになっている。
13年前に比べ、アニメーション技術は発達し、最先端の技術を用いて描かれた海の中の光景や海洋生物たちの鮮やかな色合い、光や波の表現は実写と見まごう、いやそれ以上の美しさだった。そしてその極上の色彩の中で描かれるドリーの家族捜しの旅。幼い頃、忘れん坊のドリーを心配する両親、そして、その幸せな思い出を少しずつ思い出すドリー。そのドリーの旅を、最初は自らの目的のためだったにせよ、さりげなくフォローするハンク。仲間達の絆が描かれた心温まるストーリーに加え、カーチェースばりのアクションなどハラハラドキドキもあり、最初から最後までスクリーンから目が離せない。子供はもちろん、大人も存分に楽しめる夏休み映画だ。16日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(細田尚子/MANTAN)
「HiGH&LOW THE MOVIE」 1000人規模の壮大バトル AKIRA vs 岩田剛典“肉弾戦”も
ダンス・ボーカルグループ「EXILE」「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」「劇団EXILE」のメンバーらが出演する映画「HiGH&LOW THE MOVIE」(久保茂昭監督)が7月16日、公開される。ドラマや映画、マンガ、ライブなどが連動したHiGH&LOWプロジェクトの劇場版新作で、今回は岩田剛典さん扮(ふん〕する「山王連合会」のコブラらの前に、AKIRAさんが演じる“最強の男”琥珀が立ちふさがる。俳優の窪田正孝さん、林遣都さんらも引き続き出演し、クライマックスにかけては1000人規模の壮大なバトル&アクションも展開される。
「HiGH&LOW」は、「山王連合会」「White Rascals」「鬼邪高校」「RUDE BOYS」「達磨一家」の五つのチームが拮抗(きっこう)するSWORD地区を舞台に、男たちのプライドを懸けた壮絶な戦いや仲間との友情、絆などを描いた群像劇だ。
今回の劇場版では、SWORD地区にチーム「ムゲン」の総長・琥珀(AKIRAさん)が戻ってきたところから始まる。SWORD地区の支配をもくろむ李(BIGBANGのV.Iさん)と手を組んだ琥珀に対抗すべく、「ムゲン」の元メンバーでもあるコブラ(岩田さん)とヤマト(鈴木伸之さん)が立ち上がり、SWORDの各チームも2人に呼応。琥珀と並び“最強”と称された雅貴(TAKAHIROさん)や広斗(登坂広臣さん)ら雨宮兄弟も参戦し、SWORD地区は未曾有の事態へと突入する……というストーリーになっている。
登場人物それぞれの思惑や事情が絡み合い、避けられない争いへと発展していくという展開はある種、一つのパターンといえるが、一人一人のキャラクターが本当に生き生きとしていて、血なまぐささよりも爽快さを感じることができた。少ないながらもコミカル要素もあり、多くのキャストがダンサーやパフォーマーということもあって、バトルシーンにおいての身のこなしも機敏かつ鮮やか。設定や世界観に拒否反応を示す人も少なくはないだろうが、王道エンターテインメントとして楽しめること必至だ。
最大の見どころはやはり、“最強の男”琥珀と、琥珀のことをかつて慕い、敬っていたコブラとヤマト、そして九十九(青柳翔さん)を交えての1対3の直接対決だ。長回しの緊迫したシーンの連続で、あまりの痛々しさに思わず目を覆いたくなるほど。いまどき珍しいほどの徹頭徹尾な肉弾戦を、大画面で味わってほしい。映画は16日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)
「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』」 市川染五郎が圧巻の演技
大ヒットゲームが原作の劇場版アニメシリーズとして毎年夏に公開され、累計観客動員が7200万人を超える「劇場版ポケットモンスター」の第19作「ボルケニオンと機巧のマギアナ」(湯山邦彦監督)が7月16日に公開される。人間嫌いのポケモン、ボルケニオンや人造ポケモン、マギアナとサトシの友情や絆が描かれた大作だ。
ポケモンマスターを目指し旅を続けるサトシとピカチュウたちの前に、ある日空から幻のポケモン、ボルケニオンが降ってくる。人間嫌いのボルケニオンは、すぐにサトシたちの前から立ち去ろうとするが、ひょんなことから電磁パルスを発生する巨大なリングがボルケニオンとサトシに装着されてしまい、2人は離れられなくなってしまう。とらわれてしまったマギアナを救い出そうとひた走るボルケニオンに引きずられる形で、サトシたちはカラクリ都市「アゾット王国」へ乗り込むのだった……。
2011年の「ビクティニと黒き英雄 ゼクロム/白き英雄 レシラム」以来5年ぶりに短編作品が廃止され、その分、本編の上映時間が約20分拡大された。その結果として、これまでよりドラマが濃密に描かれている印象だ。特に人間嫌いのボルケニオンとサトシが友情を育んでいく様子が丁寧に描かれている。電磁パルスによって離れたくても離れられない(物理的に)というギミックも効果的で、2人の絆が徐々に育まれていくさまは近年の作品にはなかったものだ。
恒例のゲスト声優だが、何といってもボルケニオン役の市川染五郎さんの演技が秀逸。がんこでちょっとべらんめえ口調も混じった難しいキャラクターを見事に演じ切った。アニメ声優初挑戦とは思えない名演で、「デスノート」のリュークなどさまざまな作品で声優を務めた中村獅童さんもそうだが、名のある歌舞伎俳優は声優としても素晴らしいということだろう。アゾット王国の王女、キミア役の松岡茉優さんも、サトシ役の松本梨香さんらレギュラー陣や、山寺宏一さん、中川翔子さんといった劇場版おなじみの面々を相手に好演していた。
個人的にはポケモンの死と自己犠牲を強く描いている点に注目。「泣けるポケモン映画」のうたい文句に偽りはなく、子供向けの短編を廃したことも手伝って、これまでよりも対象年齢が上がり、見応えのある作品に仕上がったといえるだろう。
おなじみのポケモンプレゼントは、先日開催された「ポケモン総選挙720」で1位に輝いたゲッコウガ。劇場入場者プレゼントとしてアーケードゲーム「ポケモンガオーレ」で遊べるマギアナのスペシャルディスクがもらえるが、さらに11月発売予定の3DS向け新作ゲーム「ポケットモンスター サン・ムーン」でもマギアナを仲間にできる。今作の“名優”ボルケニオンは特別前売り券の特典だが、「ほのお・みず」というこれまでにない組み合わせのタイプなので、ファンならゲットしておきたい。(立山夏行/毎日新聞デジタル)