「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」 見どころは巨大すぎる宇宙船? 二世代共闘も!
世界中で大ヒットを記録したSF超大作の続編となる映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」(ローランド・エメリッヒ監督)が7月9日、公開される。前作から20年後の世界を舞台に、再び襲来したエイリアンによって絶滅の危機を迎えた人類の必至の抵抗を、壮大なスケールで描く。前作でエイリアンの手から地球を救ったスティーブン・ヒラー役のウィル・スミスさんこそ出てこないものの、ジェフ・ゴールドブラムさん、ビル・プルマンさんら懐かしい顔ぶれが並び、また新たに主人公に抜てきされたリアム・ヘムズワースさんをはじめ、マイカ・モンローさん、ジェシー・アッシャーさんといったフレッシュな若手が加わり、かつての英雄たちとの“二世代共闘”も楽しめる。
「インデペンデンス・デイ」は、地球を侵略しようとするエイリアンと人類との戦いを描き、日本でも大ヒットした1996年公開のSF映画。「リサージェンス」は20年ぶりの続編で、30億人の尊い命を失いながらもエイリアンとの壮絶な死闘に勝利した人類は、エイリアンの宇宙船の技術を基に地球防衛システムを構築し、新たな襲来に備えていた。そして20年がたった2016年7月、再び地球にやってきたエイリアンは、重力すらも自在に操る超巨大宇宙船によって、ニューヨークやロンドン、パリ、シンガポール、ドバイといった各国の主要都市を次々に壊滅させる。敵の猛攻撃にさらされ、防衛システムをも瞬く間に無力化された人類は、滅亡の危機に瀕するが……というストーリー。
前半の見どころは何といっても、エメリッヒ監督いわく「大西洋を埋め尽くすほど」巨大な、宇宙船(母船)の襲来だろう。前作のどこか謎めいた登場とは対極に「すでに正体バレバレだし」と言わんばかりに最初から人類に容赦せず、自ら重力を発して世界中のランドマークを地表から引っ張り、はがしていくさまなど、20年の時を経て、さらに進化した最先端のVFXによって表現された映像世界は圧巻の一言に尽きる。
惜しむらくは中盤以降、この映像技術ほど、ストーリーや展開に目新しさがなかった点で、エイリアンの正体や目的、そして「墜落したUFOと宇宙人を回収して研究を行っている」と語られてきた「エリア51」の存在など、前作にあったミステリー要素は皆無に等しい。それでも、前作でヒラーとともに人類を救い、今作では地球宇宙防衛の要職についている天才エンジニア、デイビッド・レビンソン役のゴールドブラムさんのひょうひょうとした演技に妙なうれしさと懐かしさを覚えてしまったし、プルマンさん演じるホイットモア“前”大統領のスピーチなど、例えそれがセルフパロディーに近い感じであったとしても、胸を熱くする場面は多々あり、前作からのファンとして大いに楽しむことができた。9日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)
「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」 FFシリーズ最新作もう一つの物語
フルCG長編映画「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY(キングスグレイブ・ファイナルファンタジー) XV」(田畑端プロデューサー、野末武志ディレクター)が7月9日に公開される。映画は、人気RPG「ファイナルファンタジー(FF)」シリーズの約6年ぶりの新作ゲーム「ファイナルファンタジー15」と同じ世界観で描くもう一つの物語。長い戦いを続けている「魔法国家ルシス」と「ニフルハイム帝国」を舞台に、ゲームではルシス国の王子・ノクティスの視点だが、映画は国王のレギス・ルシス・チェラムを中心にして物語が展開していく。ルシス国の王直属の部隊に所属する主人公のニックス・ウリックの声を綾野剛さん、ヒロインのルナフレーナ・ノックス・フルーレの声を忽那汐里さんが担当している。
神聖なクリスタルをを擁する魔法国家ルシスは、クリスタルを狙うニフルハイム帝国と長い戦いを戦い続けていた。ルシス国王レギス・ルシス・チェラム(声・磯部勉さん)直属の特殊部隊「王の剣」に所属するニックス・ウリック(声・綾野さん)らは、魔法の力を駆使してニフルハイム軍に対抗。しかし、相手の圧倒的な戦力の前にレギスは、王子を政略結婚させ、首都インソムニア以外の領地放棄という苦渋の決断を下す……というストーリー。
何よりも驚いたのは、その映像表現で、実写かと見まごうほど完成度が高いCG表現は、独特の世界観やダイナミックなアクションと相性がよく、一本のアクション映画を見ているかのような感覚にさせられた。FFシリーズ最新作が基となった映画だが、作り上げられた世界とキャラクターが織りなすドラマが奥深く、今回初めてFF作品に接するという人でも先入観や予備知識なしでも楽しめる。2国間の争いを軸にした戦いで、どちらが“正しいか”という命題、また愛する者や大切なもの、そして未来を守るためには……という熱くて深いテーマが数多く盛り込まれ、さまざまなことを考えさせられる。ストーリーの重厚さを味わうもよし、アクションやビジュアル表現を楽しむよし。多角的な見方で楽しめる。9日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「森山中教習所」 野村周平と賀来賢人がW主演 凸凹男子コンビのひと夏がまぶしい
真造圭伍さんのデビュー作となるマンガを映画化した「森山中教習所」(豊島圭介監督)が7月9日から公開される。ノーテンキな大学生と、ネクラのヤクザの下っ端組員が田舎の自動車教習所で過ごしたひと夏の物語を、緑まぶしい映像の中に描いた。野村周平さんと賀来賢人さんが、原作マンガにソックリなビジュアルでダブル主演している。
大学生の佐藤清高(野村さん)は、ヤクザの轟木信夫(賀来さん)と高校の同級生。ひょんなことから森山中教習所で再会し、一緒に講習を受けることになった。ここは上原家が家族経営をしている非公認の教習所。教官のサキ(麻生久美子さん)と子ども、無愛想なサキの母(根岸季衣さん)、酒好きの父(ダンカンさん)たちと過ごすうちに、2人にとっていつしかホッとできる場所になっていく。マイペースな清高、クールな轟木。高校以来、接点がなかった2人は次第に仲よくなっていく。しかし、轟木には免許を取得しなくてはならないある理由があった……という展開。
見た目にもまったく共通点のない2人の男子。一人は中学生みたいに無邪気な笑顔。一人は銀髪にネクタイ姿で笑顔もない。中学校跡地で家族経営する教習所には、美人教官の一家がいて、この2人を息子のように迎え入れてくれる。ちょっぴり緩めのテンポでつづられていく前半に、清高と轟木それぞれの繊細な胸の内が見えてきて、教習所が2人にとってのオアシスとなっていることが分かっていく。緑豊かな里山が舞台。ロケ地のボロい校舎、水風船や虫取り……ノスタルジーをかき立てられるシーンが盛りだくさんだ。この場がまぶしければまぶしいほど、清高の家庭内の事情や轟木のヤクザとしてのしがらみが、暗いトンネル内のように見えて息苦しさを感じる。といっても、登場人物の感情の出し方はトーンが低く、押しつけがましさはない。
男子の友情が絶妙な距離感で描かれている。演じる野村さん、賀来さんは、シーンの空気をとてもよくとらえている。2人の感情が爆発するシーンは、スカッとするような面白さでワクワクする。お陰で観賞後は、手に入れた「自由」がほんの短い時間、夢のようであったことが身にしみて伝わり、どうしようもなく切なくなった。主題歌は星野源さんの「Friend Ship」。劇中音楽はグッドラックヘイワが担当している。新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで9日から公開。(キョーコ/フリーライター)
「ペレ 伝説の誕生」 子ども時代のペレのけなげさに序盤で胸を打たれる
“サッカーの王様”と呼ばれるペレの人生初期の逆転劇を描いた「ペレ 伝説の誕生」(ジェフ・ジンバリスト、マイケルジンバリスト監督)が、7月8日から公開される。スラム街で育った少年時代から、ワールドカップ(W杯)初出場で優勝を目指すまでの軌跡を、家族愛の中から見つめた。ペレ本人も製作総指揮に名前を連ねている。
ブラジルの貧しい村に住むペレと呼ばれた少年エドソン・アランチス・ドゥ・ナシメント(レオナルド・リマ・カルバーリョ君)は、友達と一緒に洗濯物を丸めたものをボール代わりにしてサッカーをするのが楽しみだった。1950年のサッカーW杯の自国開催で、優勝確実といわれていたブラジルチームが敗れ(通称・マラカナンの悲劇)、国民は落胆。父親ドンジーニョ(セウ・ジョルジさん)に、ペレは「いつか僕がプレーをして優勝する」と約束する。そして、地元のサッカー大会で見事なテクニックを披露したペレは、サントスFCのスカウトの目にとまって……という展開。
17歳でW杯優勝を成し遂げた最年少記録が今だ破られていない“世紀のサッカープレーヤー”ことペレ。彼の人生の原点が語られている。スラム街の仲間とサッカーをする楽しさ。裕福な家庭の少年(のちにライバル同士になるが)にバカにされる悔しさ。悲しい事故によってサッカーをあきらめかけたときに父親から受けた愛情の温かさ。ペレ少年の感情の一つ一つが伝わってきて、そこにサッカーをやるべき理由が見える。前半の少年時代の姿だけで、早々に胸を打たれる。そして、欧州に引け目を感じたブラジルが、サッカーのスタイルに迷走する中、一度は封印した自由なプレーこそが、自国の魂であることに気づくエピソードで、英雄となるべき人の原点も見えてくる。
選ばれた人の人生のたいていがそうであるように、ペレの人生も順風満帆ではない。チームプレーにポイントを置く監督と対立し、自分の個性がアダとなる。まだ17歳という若さで、他の選手に比べると体格も劣るペレ。しかしペレが自信を失うとき、励ます家族の姿が必ずある。そこが、サッカーに詳しくなくても家族の物語としても十分楽しめる。育った村の環境、アフリカ系ブラジル人であるアイデンティティーも描き込まれ、一人の英雄の物語だけに集約していない。「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年)で米アカデミー賞を受賞したA・Rラフマーンさんの力強い音楽が映画を盛り上げる。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで8日から公開。(キョーコ/フリーライター)