「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」 ジョニデのコミカルな演技に注目
米俳優ジョニー・デップさんが主演の映画「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」(デビッド・コープ監督)が2月6日に公開された。デップさん演じる、“ちょびヒゲ”がトレードマークのインチキ美術商チャーリー・モルデカイが消えた名画とそこに隠された秘密を追って各国を飛び回るアドベンチャーで、コミカルな動きや頻繁に飛び交うギャグなどデップさんの怪演が見どころだ。同期の警部補役で登場するユアン・マクレガーさんをはじめ、脇を固める豪華な俳優陣もそれぞれキャラが立っていていい味を出している。
ちょびヒゲがトレードマークのインチキ美術商チャーリー・モルデカイは家計が火の車で、所蔵の絵画を売り払うまでに追い込まれていた。そんなある日、ゴヤの幻の名画が何者かに盗まれる事件が発生し、英国諜報機関からその足取りを追う依頼がチャーリーの元に持ち込まれる。チャーリーは最強の用心棒・ジョック(ポール・ベタニーさん)とロシアや米国を飛び回り、ロシアンマフィアや国際テロリストとの攻防戦を繰り広げながら名画に隠された秘密に近づいていくが……というストーリー。チャーリーの大学同期で諜報機関の警部補のマートランドをユアン・マクレガーさん、ヒゲアレルギーで頭が切れる美人妻・ジョアンナ役をグウィネス・パルトローさんが演じている。
まず何といっても最大の見どころは“ちょびヒゲ”姿のジョニデの怪演だ。とことんユーモラスでオチャメなチャーリーを、コミカルな動きと口調で見事に演じている。一見した感じでは、そこに「パイレーツ・オブ・カリビアン」のあの勇ましいジャック・スパロウ船長とは真逆のキャラクターのように見えるが、人を食ったような性格とどこか憎めないユーモアはさらに拡張されて引き継がれている。もちろんそうしたキャラに扮(ふん)するジョニデに違和感は皆無で、前半からチャーリーのペースに引き込まれてしまう。また、最強の用心棒・ジョックとの掛け合いも爆笑必至。ボケ(チャーリー)とツッコミ(ジョック)、という役回りだが、時にはジョックがチャーリー以上の存在感を発揮してしまうこともあり油断ならない。個人的にはジェットコースターのように駆け抜ける後半もいいが、ギャグとアクションが巧みなバランスでこれでもかとたたみ掛けてくる前半が特に楽しめた。映画は6日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(河鰭悠太郎/毎日新聞デジタル)
「ミュータント・タートルズ」 マイケル・ベイらしいド派手なアクション満載
人気シリーズ「トランスフォーマー」のマイケル・ベイ監督がプロデュースしたアクションアドベンチャー映画「ミュータント・タートルズ」(ジョナサン・リーベスマン監督)が2月7日に公開される。「ミュータント・タートルズ」は、化学物質によって人間のような姿に変えられたカメの忍者グループが、悪の手から街を守る姿を描く。1984年にアメリカンコミックとして誕生し、アニメや映画、ゲーム化されてきた。ベイ監督が関わっているだけに大迫力のアクションシーンで、ニューヨークの下水道に住むヒーローたちの活躍をダイナミックに演出している。
犯罪組織フット軍団が暗躍するニューヨーク。ある日、チャンネル6のレポーターであるエイプリル(ミーガン・フォックスさん)は、何者かがフット軍団の犯罪を阻止するのを目撃する。映像に収めることができなかったため上司のトンプソン(ウーピー・ゴールドバーグさん)にも相手にされないが、数日後、フット軍団が地下鉄の駅を襲撃しているところにエイプリルが駆けつけると、再び軍団と戦う者たちが登場。あとを追いかけ撮影に成功したエイプリルが見たのは、身長180センチで人間の言葉を話すカメ(タートルズ)だった……という展開。
ノリのいい人間の姿をしたカメたちがニューヨークを救うというストーリーだけに、小難しいことは考えず、アクションの痛快さに身を委ねて見るタイプの映画だ。しかもベイ監督と「タイタンの逆襲」(2012年)のジョナサン・リーベスマン監督のタッグと聞けば、映画好きなら納得がいくはず。とにかく頭を空っぽにして世界観に浸り、楽しんだもん勝ちだ。90年代には日本でもテレビアニメが放送されていたが、あの時のタートルズの可愛さはどこへやら。見た目はかなりヘビーだが、物語が進んでいくうちになぜか愛着が湧いてくるから不思議だ。ちなみに、随所にちりばめられた日本的な要素は、あまりにも奇妙な日本観になっているものの、今作の設定自体がぶっ飛んでいるため妙にマッチしていて面白い。アクションはさすがの迫力で、巨大な建造物が崩れていくシーンなどのスピード感は気持ちいい。タートルズがラップを刻むところは、クオリティーの高さに驚いた。7日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「Present For You」オダギリジョー主演 ひなびた町で役者と人形が融合
実写とパペットアニメーションを融合させた異色の3D映画「Present For You(プレゼント・フォー・ユー)」(臺佳彦監督)が、2月7日から公開される。アニメーション「The World of GOLDEN EGGS」を製作したプラスヘッズの新作。オダギリジョーさん、2013年に亡くなった夏八木勲さんらが人形とのダブルキャストで出演している。
チンピラの梶原(オダギリさん)は、ボス(夏八木さん)のところに連れて行かれてある会社を任される。それは、まずいラーメン屋が入った雑居ビルの最上階にある表向きは健康食品を売る会社だ。梶原の元には、ボスが気まぐれで選んだ「いらない人間」が不定期に送られてくる。梶原は、その後始末を任されたのだ。ビルは、リストラされたサラリーマンや、キャバ嬢と女王様をかけ持つ女などのさまざまな人間が行き交う東京・新橋にある。ある日、届いた“荷物”は渦中の大物政治家(柄本明さん)だった……というストーリー。
役者の表情をアップで捉えたあとに、人形の顔が映し出される。その切り替わりが違和感なくスムーズながら、楽しい驚きがある。どの人形も、その役者がしそうな表情と動きをしている。梶原の困った顔、そしてまばたきに至るまで繊細な“芝居”に感心する。1日に3~5秒間分しか作れないというパペットアニメーション。完成までになんと約5年の歳月がかかったという。役者の約10.8分の1のサイズで人形が作られ、町のシーンはジオラマで、部屋の中を等身大で撮影。ひなびた町からは匂いまでしてそうだ。主人公の梶原は、きなくさいボスに「ノー」と言えないどこにでもいる小心者だ。ボスとの緊張感が、スパニッシュなギターサウンドに乗って、ジワジワと漂ってくる。メインテーマを手がけるのは、スペイン人ギタリスト、ビセンテ・アミーゴさん。独特なこの世界観にピッタリな配役で、共演者はほかに風吹ジュンさん、石丸謙二さん、青木崇高さん、佐藤江梨子さん、山田麻衣子さんら。新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで7日から公開。(キョーコ/フリーライター)
「はじまりのうた」キーラ・ナイトレイが歌声披露 NYの息吹感じる温もりある作品
「ONCE ダブリンの街角で」(2006年)で米アカデミー賞オリジナル歌曲賞を受賞した、アイルランド出身のジョン・カーニー監督が、再び音楽を“主役”に据えて撮り上げた作品「はじまりのうた」が2月7日から公開される。舞台を前作のダブリンから米ニューヨーク(NY)に移し、キャストにはキーラ・ナイトレイさんとマーク・ラファロさんというハリウッドで活躍する2人を起用。前作に比べ華やかさが漂う仕上がりとなった。
NYにあるライブハウスで、ギター片手に曲を披露した無名のミュージシャン、グレタ(ナイトレイさん)。しかし客からの反応は芳しくなかった。ステージを降りた彼女に一人の男が声をかける。男の名はダン(ラファロさん)。売れっ子音楽プロデューサーだったが会社をクビになったばかりのダンは、グレタの素朴な歌声にプロデューサーとしての勘が働き、一緒にアルバムを作ろうと持ち掛ける。だが資金はない。そこで思いついたのは、NYの街角をスタジオ代わりにレコーディングすることだった……という展開。
華やかさが漂う仕上がりといっても、ぬくもりある作風は前作と変わらない。かつて、アイルランドのロックバンド「ザ・フレイムス」のメンバーだったカーニー監督。それだけに“音”への執着には並々ならぬものがあるようで、レコーディング場所としてスタッフが見つけてきた場所に、「目で見て選ぶな。耳で選べ」とダメ出しするなどのこだわりを見せたという。そうやって選び抜かれた路地裏をはじめとする地下鉄のホームやビルの屋上、セントラルパークといった場所での録音風景には、NYならではの息吹きが感じられ、ワクワクさせられる。そして、それを後押しするキャストの歌と演技。ナイトレイさんはギター片手に飾らない歌声を披露し、自身の傷心を修復すると同時に、周囲の人々にも自信と希望を与えていく、さながら“NYに舞い降りた天使”を好演。ラファロさんも、ちょっとだらしない音楽プロデューサーを持ち前のアンニュイさを生かしつつ表現し、また「ワン チャンス」(13年)でオペラ歌手に扮(ふん)したジェームズ・コーデンさんがグレタの友人役を愛嬌(あいきょう)たっぷりに演じている。彼らの味わいのある演技と、グレタの恋人役をノーギャラで務めたという米人気ロックバンド「マルーン5」のボーカリスト、アダム・レヴィーンさんの歌声が融合することで、心にしみる作品となった。7日からシネクイント(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/フリーライター)