「さらば あぶない刑事」 男のロマンを体現するタカ&ユージにふさわしい最後とは?

胸熱!タカ&ユージの銃アクション、おちゃめトークも!映画「さらば あぶない刑事」予告編

 俳優の舘ひろしさんと柴田恭兵さん演じる破天荒な刑事コンビが活躍するドラマ「あぶない刑事(デカ)」(通称・あぶ刑事)シリーズの完結編となる劇場版「さらば あぶない刑事」が1月30日、公開される。2005年公開の前作「まだまだあぶない刑事」から11年ぶり、7作目の劇場版で、「定年退職」をテーマに“タカ”こと鷹山敏樹と、柴田さん扮(ふん)する“ユージ”こと大下勇次が、世界の闇市場を牛耳る中南米マフィアから横浜を守る姿が描かれる。

 「あぶない刑事」は、横浜を舞台に、おちゃめで破天荒キャラのタカとユージの刑事コンビが次々と事件を解決していく人気刑事ドラマシリーズ。日本テレビ系で1986年10月~87年9月に放送され、88年10月~89年3月にはテレビドラマ「もっとあぶない刑事」(同)も放送された。劇場版は87年12月公開の第1弾「あぶない刑事」を皮切りに、これまで6作品が公開され、総観客動員数は600万人、総興行収入は82億円を突破している。

 今回の映画「さらば あぶない刑事」は、定年退職まで残り5日となったタカとユージは、横浜港署捜査課の課長となった町田透(仲村トオルさん)の心配もよそに、新興暴力団「闘竜会」が仕切り、ロシア、中国、韓国など各国マフィアが入り乱れるブラックマーケットへと潜入する。銃撃戦の末、狙いを定めていた闘竜会の幹部・伊能を逃してしまうが、今度は伊能が惨殺死体となり発見された。各国マフィアたちの均衡が崩れ始める中、タカとユージは暗躍するある組織へとたどり着く。その組織とは、キョウイチ・ガルシア(吉川晃司さん)が率いる中南米の犯罪組織「BOB」。あらゆる犯罪に手を染め、圧倒的な戦闘力と獰猛(どうもう)さを兼ね備えたBOBの横浜進出を食い止めようと、タカとユージは動き出すが……というストーリー。

 横浜港署という所轄の警察署に在籍するヒラの刑事が、自分たちの縄張り(横浜)を守るため、世界的な犯罪組織に戦いを挑むという構図は、昭和の刑事ドラマの中にしか存在しない男のロマンそのもの。ここには警察官僚や公安、特殊部隊、組織内の権力争いといった、最近の刑事ドラマの定番のテーマが入り込む余地はない。時代は平成に変わっても、相変わらずコンビまたは単独行動が大好きで、獲物(犯人)を見つければ、躊躇(ちゅうちょ)することなくすぐに発砲と、タカとユージは今回もやりたい放題。おとなしくしていればいいのに、誰よりも好奇心が旺盛で、人並みに正義感だけは持ち合わせているがゆえに、勝手に動き回っては周りをどんどんと巻き込んでいく。俯瞰(ふかん)すると迷惑以外のなにものでもないのだが、なぜか全てを許せてしまう愛すべきキャラクターで、すなわちこれが、30年間で築き上げてきた「あぶ刑事」の魅力なのであろう。

 最後の敵となった吉川さんも、ヒットした昨年の連続ドラマ「下町ロケット」(TBS系)での重厚な演技から一転、猛禽(もうきん)類を彷彿(ほうふつ)とさせる目つきで、見事、悪に染まり、グレーゾーンのない勧善懲悪な世界観に一役買っている。得意の“シンバルキック”で、難を逃れるシーンもファンにとってはたまらない演出だろう。もちろん最大の見どころは、タカとユージが無事に定年を迎えることができるのか、はたまた殉職してしまうのかという部分で、その“描かれ方”には少々不満も残ったが、最後まで大いにハラハラドキドキさせてもらった。30日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)

「ブラック・スキャンダル」 ジョニー・デップ演じる伝説のギャングに身の毛もよだつ

ジョニー・デップ、ベネディクト・カンバーバッチが出演!映画「ブラック・スキャンダル」予告編

 米俳優のジョニー・デップさんが伝説のギャングのボスに扮(ふん)し、米国史上最悪の汚職を描いた「ブラック・スキャンダル」(スコット・クーパー監督)が1月30日から公開される。ギャングがFBI、政治家と手を組んでいた実話を基にしたバイオレンス作。デップさん、ベネディクト・カンバーバッチさん、ジョエル・エドガートンさん、ケビン・ベーコンさんら豪華なキャストが顔をそろえた。

 1975年。サウスボストン。アイルランド系移民が住む地域のギャングのボス、ジミーことジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(デップさん)は、FBI捜査官のジョン・コノリー(エドガートンさん)に、抗争相手のイタリア系マフィアを一掃しようと持ちかけられる。コノリーの情報屋となったジミーは、部下とともに悪事に手を染めていく。ジミーの弟でマサチューセッツ州上院議員のビリー(カンバーバッチさん)も含めて3人は幼なじみだった。やがて絶大な権力を持ち凶悪犯となっていったジミーは、新任の連邦検事(コリー・ストールさん)に目をつけられて……という展開。

 デップさんが演じるのは薄めの頭髪に革ジャンの強烈なビジュアルの2011年に逮捕された伝説のギャングだ。どこまでも冷酷非道で、妻子や母親、弟ら肉親に見せるふとした表情には温かみやあやうさも垣間見えるが、登場だけで嫌な気分になるほどのシーンもある。次第に人間味を失っていく姿には身の毛もよだつほどだ。信じられないが実話が基になっており、立場の異なる3人の男たちに興味を引かれる。デップさん、エドガートンさん、カンバーバッチさんの繊細な芝居によって、映画にどんどん引き込まれていく。地元の友達としてお互いが“帰る場所”となるはずの結びつきが、権力を得ることによってゆがんだ方向に進んでいく。カリスマ性のあるジミーに、少しずつ似てくるコノリー。そんなコノリーに冷静な目を向ける妻も印象的だ。有力な政治家である弟は、兄のことをどう思っていたのだろうか。想像力をかき立てられる。

 チンピラ同士の結びつきが、他者の登場によってあやうく崩れ去るのも現実的だ。ブレーキの利かない暴走車となり、止める者がいなかったジミーの孤独感が、エンディングに流れる曲によって余韻となって残される。「クレイジー・ハート」(2009年)、「ファーナス/訣別の朝」(13年)のクーパー監督の最新作。30日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-」 竹内結子&橋本愛出演 住む部屋が怖くなるホラー

「和楽器バンド」がイメージソング!映画「残穢(ざんえ)-住んではいけない部屋-」特別予告編

 第26回山本周五郎賞を受賞した小野不由美さんの小説「残穢」が原作の映画「残穢(ざんえ)-住んではいけない部屋-」(中村義洋監督)が1月30日に公開される。ミステリー小説家が奇妙な音がするという部屋に住む読者の女子大生から手紙を受け取ったことをきっかけに、2人で原因を調査すると驚きの真実が明らかになる……というストーリー。ミステリー小説家である「私」を女優の竹内結子さん、女子大生の久保さんを橋本愛さんが演じて初共演しているほか、佐々木蔵之介さん、坂口健太郎さん、滝藤賢一さんらが顔をそろえている。

 小説家である「私」(竹内さん)の元に、読者で女子大生の久保さん(橋本さん)から「住んでいる部屋で奇妙な音がする」と書かれた手紙が届く。好奇心に誘われて調査を始めると、マンションの過去の住人たちが引っ越し先で、自殺や心中、殺人といった事件を引き起こしていたことを知る。さらに調査を進めていくと、やがて驚きの真実にたどり着く……という展開。

 今作のメガホンをとった中村監督は、「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007年)や「ゴールデンスランバー」(10年)、「白ゆき姫殺人事件」(14年)、「予告犯」(15年)などを手がけたことで知られ、一見するとホラーとは縁遠いような印象を受けるが、オリジナルビデオ「ほんとにあった! 呪いのビデオ」などを手がけ、恐怖にまつわる演出には定評がある。そんな中村監督が久々に撮ったホラー映画は、随所に挿入される回想や恐怖エピソードの再現シーンが恐怖をあおり、正攻法のストレートな表現で観客を怖がらせる。物語はミステリー要素が濃い印象だが、怪奇現象の原因をたどっていき次々と謎が明らかにされていく展開には、恐怖だけでなく謎を解き明かす爽快さすら感じる。見終わったあと、一人でいる部屋の中での音や闇を想像すると恐怖感がじわじわと広がり、“住んでいい部屋”なんて本当にあるのかとまで考えてしまった。30日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

「俳優 亀岡拓次」安田顕が脇役俳優役で主演 笑いと哀愁あふれるトリップ映画

安田顕が主演 映画「俳優 亀岡拓次」予告編

 俳優の安田顕さんの主演映画「俳優 亀岡拓次」(横浜聡子監督)が1月30日に公開される。37歳独身で脇役が多い俳優・亀岡拓次(安田さん)が巻き起こす出来事を“業界あるある”を交えつつユーモラスかつハートフルに描いた作品。「ウルトララブストーリー」(2009年)以来7年ぶりの長編となった横浜監督がメガホンをとり、主人公が恋する居酒屋の女将を麻生久美子さんが演じるほか、染谷将太さん、工藤夕貴さん、三田佳子さん、山崎努さん、新井浩文さんら豪華キャストが出演している。

 俳優の亀岡拓次(安田さん)は仕事をなるべく断らず、泥棒、チンピラ、ホームレスをはじめ、どんな役でも演じ“最強の脇役”として監督やスタッフから愛され信頼されていた。ある日、ロケ先の長野県諏訪市で入った居酒屋「ムロタ」で、若女将の安曇(麻生さん)と出会い恋をする。亀岡は撮影のため東京都内から地方まで忙しく飛び回る日々を送る中、自身が心酔する世界的巨匠のアラン・スペッソ監督の新作オーディションを受けることになり……というストーリー。

 今作の魅力は主人公・亀岡拓次のひょうひょうとしたキャラクターと生きざまであり、それは“俳優・安田顕”の魅力と重なる。安田さんは多彩な役柄を数々の作品で演じており、亀岡とオーバーラップして見える。大作映画のような派手さはないが、劇中劇が差し込まれたり、亀岡の夢や妄想なども入り乱れたりして、トリップ感が味わえる。また「スクリーンプロセス」という特撮の合成技法が劇的で面白い。シュールな笑いと、仕事から私生活までリアリティーを持って描かれた俳優の日常の描写が興味深く、酒と女があれば幸せで、自分が面白いと思うことに忠実に向かっているだけという亀岡の生き方が魅力的に感じられた。30日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」名優が初共演 軽やかなタッチで絶妙に

モーガン・フリーマンとダイアン・キートンが初共演 映画「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」予告編

 モーガン・フリーマンさんとダイアン・キートンさんが初共演した「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(リチャード・ロンクレイン監督)が1月30日から公開される。同名のロングセラー小説が原作で、熟年夫婦が住み慣れたアパートを売りに出し、新居探しをする数日間を描き出した。名優同士の円熟した芝居を軽やかなタッチで絶妙に見せている。

 画家の夫アレックス(フリーマンさん)と、元教師の妻ルース(キートンさん)は、ブルックリンのアパートの最上階に住んでいる結婚40年を過ぎたカップル。部屋からは美しい街を一望でき、日当たりも良好だ。愛犬ドロシーとともに仲よく暮らしていたが、エレベーターもない我が家への道のりがつらくなり、ルースは部屋を売る決心をする。めいっ子の不動産エージェント・リリー(シンシア・ニクソンさん)によって億の値で売りに出されると、内覧希望者が殺到。内心住み替えたくないアレックスの気持ちをよそに話が進んでいき……という展開。

 大統領だったり、博士だったりと大作への出演が続いたフリーマンさんが、普通のおじいさんとして犬を散歩させているだけでこの映画を好きになったが、妻役キートンさんとの夫婦ぶりもチャーミングで魅力的だ。大物俳優が、あれやこれやと庶民感覚の不動産住み替え劇を繰り広げる姿が軽やかにつづられていく。古くなったアパート、弱くなった足腰。そんな理由でスタートした住み替え計画に、親しみを覚える人も多いのではないか。ニューヨークでの不動産売却事情も興味深く、主人公と一緒に部屋探し気分を味わえるのも面白い。

 乗り気でない夫に対し、妻は一度火がついてしまったものならと、ガンガン突き進んでいく。内覧者に情を寄せるのも女性ならでは。しかし、家をアトリエにしている画家の夫にとって、妻に励まされながら画業にいそしんできた過去も手伝い、我が家には妻以上に思い出がしみついているようだ。若かりし日々の思い出が挿入されたシンプルな構成で、夫婦の歴史や思い出に触れていく。黒人との結婚に偏見のあった時代や、川向こうで田舎扱いだったブルックリンも、今や昔……。夫婦はどういう選択を下すのか。最後まで心地よく映画を見守った。30日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

「猫なんかよんでもこない。」子猫から成猫時代までさまざまな猫の表情が楽しい

映画「猫なんかよんでもこない。」予告編

 シリーズ累計発行部数30万部を超えた実話マンガを映画化した「猫なんかよんでもこない。」(山本透監督)が1月30日から公開される。やんちゃな2匹の捨て猫と、崖っぷちに立たされた元ボクサーの男の暮らしを温かく描き出した。可愛いだけでなく、怒った猫の表情も見ものだ。主演は風間俊介さん。

 ミツオ(風間さん)はマンガ家の兄(つるの剛士さん)の家に居候をしながら、30歳を目前に世界のリングまであと1勝となったボクシングに人生を懸けていた。ある日、兄が子猫を拾って帰ってきた。チンとクロと名付けた兄は、仕事で忙しいことを理由に、世話をミツオに押し付ける。犬派のミツオは、猫の勝手な行動に振り回されっぱなしになりながらも、アパートの大家さん(市川実和子さん)の手助けもあって、少しずつ猫の世話に慣れてくる。しかし、突然目のけがでボクシング人生が絶たれてしまい……というストーリー。

 犬や猫などのペットは人間の心を癒やしてくれる。その効果は広く知られているが、猫に限っては、人の心を癒やそうなどとはこれっぽっちも思ってやしないだろう。チンとクロもまさにそうで、「相手をしてやってもいいけどー」という態度でアパートの中と外を自由に行ったり来たりしている。寝ているミツオを踏みつけ、シャーッと鳴いて怒り、テレビの上に鎮座する。ただ可愛いだけでなく、猫の本能そのままをスクリーンで見ることができるのはとても楽しい。チンとクロが成長していく設定のため、じっとしていない子猫時代とまったりした成猫時代まで、猫のさまざまな仕草を見ることができる。猫同士のけんかのシーンはドキュメンタリー風だ。「先生と迷い猫」(2015年)などの名動物トレーナー・佐々木道弘さんの技に感心することしきり。

 物語は、ミツオが途中で2匹の猫たちと取り残されてしまい、どん底になってからの方が味わい深い。夢を絶たれたミツオは、雄猫のクロに近所のボス猫になる夢を託すのだが、ここからはクロにとっての波瀾(はらん)万丈だ。猫嫌いだったところから始まり、いやいや世話をし、そしてクロに共鳴し、やがて大切なことに気づくまでのミツオの成長を風間さんが好演している。ミツオにそっと寄り添う同僚を松岡茉優さんが演じている。30日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

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