「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」トム・クルーズ主演 見せ場と人間的魅力が増した第2弾
米俳優トム・クルーズさん主演の映画「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」(エドワード・ズウィック監督)が11月11日、公開される。「アウトロー」(2012年)に続くシリーズ第2弾で、前作よりもアクションの見せ場が増え、展開に勢いが増した。とりわけ、パレードに湧くニューオリンズでの追走劇では、映画のハイライトにふさわしい緊迫感が味わえる。
元米陸軍調査指揮官で、今は流れ者のジャック・リーチャー(クルーズさん)は、後任のスーザン・ターナー少佐(コビー・スマルダーズさん)がスパイ容疑で逮捕されたことに陰謀の匂いをかぎ取る。リーチャーはターナーの無実を証明するために真犯人探しに動き出す…というストーリー。
今回のリーチャーは、ターナーの汚名をすすごうと奮闘する一方で、自身と浅からぬ因縁があるサマンサ(ダニカ・ヤロシュさん)という若い娘も助ける必要が生じ、幾度となく窮地に立たされる。そのサマンサを巡ってニューオリンズの街中で繰り広げられる敵との追走劇は、パレードの喧騒(けんそう)が緊迫感と焦燥感を後押しし、手に汗握らずにいられない。序盤のリーチャーとターナーの逃走劇もスリル満点。 半面、ジャックの過去が垣間見られるエピソードも盛り込まれ、人間的魅力が増すとともに、素顔をもっと知りたくなるような趣向が凝らされている。11日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開。(りんたいこ/フリーライター)
「ミュージアム」 刑事・小栗旬とカエル男・妻夫木聡が息詰まる命懸けの戦い
俳優の小栗旬さん主演の映画「ミュージアム」(大友啓史監督)が11月12日、公開される。妻夫木聡さんが連続殺人鬼・カエル男を演じ、眉毛がなくスキンヘッドというビジュアルを披露するなど衝撃シーンが多い中でも、沢村(小栗さん)がカエル男を追って車道へと飛び出し、車と衝突するシーンが特に印象的だ。
映画は、2013年7月から14年1月まで「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載されたサスペンスマンガが原作。雨の日だけに発生する猟奇殺人事件の犯人としてカエルのマスクをかぶったカエル男が浮上し、残された手がかりから犯人を追い詰める沢村刑事だが、それはカエル男によって仕組まれたわなだった……というストーリー。沢村の妻・遥役で女優の尾野真千子さん、沢村の部下・西野役で俳優の野村周平さんが出演している。
自分の妻がターゲットとなり捜査から外されてしまった沢村が、喫茶店で西野に頼み捜査資料を見せてもらっているとカエル男が登場。周囲を気にせず必死の形相で追いかける沢村が名前を呼ばれて振り向いた瞬間に車にひかれる場面は、スリリングな物語との相乗効果で思わず心臓がキュッと縮まった。小栗さん自らスタントに臨んだといい、かなりの迫力だ。ほかにもカエル男の屋敷での鬼気迫る姿など、沢村が追い詰められ枯れていくシーンや表情に注目したい。12日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「この世界の片隅に」 のんの声は癒やし系? 日常と地続きにある戦争の悲劇を描いた名作
女優ののん(能年玲奈を改名)さんが劇場版アニメに声優として初主演した「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が11月12日に公開される。戦時中、広島・呉に嫁いだ18歳のすずの生活が、戦争の激化によってあっという間にもろく崩れていく様子が、日常に地続きで淡々と描かれる。すずが義姉の娘をつれて入院中の義父を見舞いに行った帰りに空襲に遭い、2人に悲劇が襲う。その衝撃の際の描写が可愛らしくももの悲しく、心に迫る。
昭和19(1944)年、広島から世界最大の軍港といわれた呉に嫁いできたすず(のんさん)は、夫の家族とささやかな生活を送っていたが、呉は大規模な空襲に襲われ、すずの大切なものが失われていく。そして広島に原爆が投下された昭和20年の夏を迎える……というストーリー。
「この世界の片隅に」は、こうの史代さんが「漫画アクション」(双葉社)で連載し、09年の「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門優秀賞を受賞したマンガが原作。劇場版アニメ「マイマイ新子と千年の魔法」(2009年)の片渕監督が素朴で味わい深い原作のイメージをそのままに、堅実にアニメ化した。戦争が激化する中でもけなげに生きるすずさんとその家族の日常が力強く描かれている。のんさんは、「まんが日本昔ばなし」の市原悦子さんの声を彷彿(ほうふつ)とさせる癒やし成分が含まれているような話し声で、すずを自然体で演じている。戦争の悲劇は日常の中で起こったのだと改めて実感する。コトリンゴさんが歌う昭和歌謡も胸にしみる。
何年たっても色あせない、100年後にもきっと残っているであろう名作がここに誕生した。12日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(細田尚子/MANTAN)
「オケ老人!」杏が映画初主演 初めてとは思えない堂々とした指揮ぶりに注目
NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年後期)でヒロインを演じた女優の杏さんの映画初主演作「オケ老人!」(細川徹監督)が11月11日に公開された。タイトルの「オケ」とは「オーケストラ」のこと。老人ばかりのアマチュアオーケストラ(アマオケ)にひょんなことから入団してしまった主人公が指揮をやらされるはめになるが、杏さんの指揮ぶりが初めてとは思えないほど堂々としていて、荘厳な交響曲をまとめ上げているように見えるコンサートシーンに注目だ。
映画は、荒木源さんの小説(小学館文庫)が原作。高校の数学教師の千鶴(杏さん)は学生時代に趣味でバイオリンを弾きオーケストラに所属していたが、引っ越しを機に地元の名門アマオケの演奏を聴いて感動し、また演奏してみたいと入団を決意。アポを取り練習場である公民館に足を運ぶと、どうやら楽団の名前を間違えていたようで、歴史と伝統はあるが今では年寄りばかりのへたくそなアマオケ「梅が岡交響楽団(梅響)」に入団してしまう。千鶴は梅響のメンバーのペースにすっかり翻弄(ほんろう)され、バイオリンのみならず指揮もやらされるはめになり……というストーリー。
杏さんは主役だが、この映画の本当の主役は笹野高史さん、左とん平さん、小松政夫さん、藤田弓子さん、石倉三郎さん、茅島成美さんら梅響のお年寄りたちだろう。とぼけた(ぼけた?)の会話のやりとりや動きだけでも笑いを誘う。クラリネット担当の左さんが楽器を忘れて大根で即席クラリネットを作ってしまう場面には面白さと同時に“こうやったらこんないい音が出せるのか”とへえとうなってしまった。この年齢でこんなに元気で友だちに囲まれて過ごせるなら年を取るのも悪くないと思えるハートウオーミングな作品。若手メンバーとして坂口健太郎さん、黒島結菜さんも出演。11日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(細田尚子/MANTAN)