「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」 今度は“砂漠の迷宮”ステージ攻略に挑む!
謎の“巨大迷路”に閉じ込められた人々が脱出を目指すサバイバルアクション映画の第2弾「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」(ウェス・ボール監督)が10月23日に公開される。米国のベストセラー小説を基に実写映画化したシリーズ第2弾となる今作では、迷路をようやく脱出した主人公たちの前に第2ステージとして “砂漠の迷宮”が待ち受けており、新たな試練に挑む姿が描かれている。第1ステージを上回る地球規模のスケールで、主人公たちの行く手を阻む仕掛けの数々や、新たな仲間や友情に裏切りといった要素がからみ合い、息もつかせぬ展開が繰り広げられる。
巨大迷路の出口を見つけ脱出したトーマス(ディラン・オブライエンさん)らは、身柄を保護された施設で、ほかにも迷路が存在し、それを攻略した若者たちと出会う。しかし、施設が自分たちを迷路に送り込んだ謎の組織「WCKD(ウィケッド)」のものであることを知ったトーマスは、テレサ(カヤ・スコデラリオさん)、ニュート(トーマス・ブロディ・サングスターさん)らと脱走するが、建物の外には太陽に灼き尽くされ、すべてが崩壊したような砂漠の迷宮が広がっていた。追跡やトラップと戦いながら逃走するトーマスは、やがて禁断の事実を知り……というストーリー。
前作よりもスケールアップした舞台での主人公たちの脱出劇が展開され、前作の謎が解けていく小気味よさや、疾走感や緊張感を漂わすジェットコースター的なノリで、めまぐるしいほどのテンポ感で楽しませてくれる。ただ、謎の巨大迷路に放り込まれた主人公が理不尽なサバイバルに挑むという設定から、今作は巨大な砂漠が相手ということもあってか、“迷路感”というものが薄れてしまったのは少し残念な気もする。そうはいっても徐々に明かされていく謎の数々が、さらなる謎を呼ぶ展開や、新たな登場人物も加わり複雑化していく思惑など、まだまだ興味は尽きそうにない。どのような結末にたどり着くのか、次回作が待ち遠しい。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「トランスポーター イグニション」 ド派手なカーアクションとリアルな格闘に見応え
プロの運び屋(トランスポーター)の活躍を描くアクション映画「トランスポーター イグニション」(カミーユ・ドゥラマーレ監督)が10月24日に公開される。「トランスポーター」シリーズは、リュック・べッソンさんが製作・脚本を手がけ、ジェイソン・ステイサムさんが依頼品を運び届ける訳ありのトランスポーターのフランク役で主演した人気シリーズで、これまで3作が公開された。シリーズ最新作となる今作では、エド・スクレインさんが2代目のフランクを演じている。
プロの運び屋フランク・マーティン(スクレインさん)に、妖艶な美女・アンナ(ロアン・シャバノルさん)からの依頼が舞い込む。フランクが待ち合わせ場所に到着すると、フランクの愛車に3人の美女が乗り込んでくる。銃を突き付けられ、人質に取られ猛毒のため命の期限が12時間に迫った父親の映像を見せられたフランクは、プロの運び屋のルールを侵害され憤慨する。自らのルールや父の命の間で揺れ動きながらも、フランクは愛車を発進させる……というストーリー。
約6年ぶりの最新作にしてシリーズ4作目となる今作は、主演俳優が代わるなど新たなシリーズの始動を予感させるが、基本設定や“お約束”の要素も引き継がれ、新旧両方のファンが楽しめるような工夫されている。そしてシリーズもう一つの主役とも呼ぶべき主人公の愛車はアウディ8Sが使われ、その流麗なデザインだけでもカッコいいが、スマホで車を多彩に操作できるなど近未来的なギミックが描かれ、“男子”的にもかなり魅力的だ。そして愛車を駆ってのカーアクションはド派手かつキレキレで、シリーズを通しても最高クラスの完成度。しかも空港内を走り回るような表現もあったりと、ちょっとした笑いもちりばめられ、飽きさせず楽しませてくれる。2代目フランクのスクレインさんはスタイリッシュで、その父親にして相棒のフランク・シニア(レイ・スティーブンソンさん)の存在感とダンディーさが物語に絶妙なスパイスを与え、“らしさ”と新しさがうまく融合した作品に仕上がっている。24日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「ボクは坊さん。」 伊藤淳史が僧侶に挑戦 温かくて前向きになれるストーリー
俳優の伊藤淳史さんの主演映画「ボクは坊さん。」(真壁幸紀監督)が10月24日に公開される。コピーライターの糸井重里さんが主宰するサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載された愛媛県今治市にある四国八十八カ所霊場の第57番札所・栄福寺の僧侶・白川密成さんのエッセーが原作で、祖父の死をきっかけに実家の寺で住職を務めることになった青年の姿を描く。仏教や僧侶を扱った映画だが、コミカルな描写を交えつつ、現代の暮らしに役立つ知恵や知識もちりばめられている。また、高野山奥の院をはじめ白川さんが住職を務める栄福寺など美しい映像も見どころとなっている。
書店員の白方進(伊藤さん)は、住職である祖父・瑞円(品川徹さん)が他界したことを受けて僧名・光円に改名し、四国八十八カ所霊場の第57番札所・栄福寺の住職となる。寺で生まれ育った光円だが、坊さん専用グッズや個性豊かな僧侶との出会い、檀家との意見交換など初めてのことばかり。いろいろな経験を積んでいく光円だったが、さまざまな人々の人生の節目に立ち会い、生死と向き合う中で、住職として何ができるかに思い悩む……というストーリー。
職業ものの作品はこれまでも数多くあるが、僧侶の世界には驚かされた。僧侶は身近なようでいて、実は葬式でお経を読んでいるぐらいしかイメージできない人も多いだろうが、映画を見るとお坊さんが朝起きてから夜寝るまでの間、どのような生活をしているのかがよく分かる。寺には欠かせないアイテムがあるのは想像できたが、お坊さん専用のバリカンがあるのには思わず笑った。寺や僧侶に関する豆知識がちりばめられており、職業もの的に楽しめる要素があるのはもちろんだが、ごく普通の若者が僧侶として、また人間として生きていく成長物語としてうまくできている。人間の命と向き合う機会が多いお坊さんが主役だが、シリアスになりすぎずコミカルなシーンも織り交ぜれたゆるやかな作風で好印象。伊藤さんの誠実な雰囲気と、落ち着いた口調が役のイメージにぴったりで、作品全体に温かみを感じさせてくれる。24日からシネマサンシャイン池袋(東京都豊島区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「ヴィジット」シャマラン監督が原点回帰を図った身の毛もよだつスリラー映画
映画「シックス・センス」(1999年)や「サイン」(2002年)などの作品で知られるM・ナイト・シャマラン監督の最新作「ヴィジット」が10月23日から公開される。最近は「エアベンダー」(10年)や「アフター・アース」(13年)といったアドベンチャー・アクション大作を手掛けてきたシャマラン監督にとって、スリラー映画は「ハプニング」(08年)以来7年ぶりとなる。その間の思いをつぎ込んだのか、身の毛もよだつほどのシーンが用意された、原点回帰をうたうにふさわしい作品に仕上がっている。
15歳のベッカ(オリビア・デヨングさん)と13歳のタイラー(エド・オクセンボールドさん)の姉弟は、両親の離婚によるショックを癒やすために、ペンシルベニア州にある母(キャスリン・ハーンさん)の実家を訪れることに。両親の結婚は駆け落ち同然だったために、ベッカとタイラーはこれまで祖父母に会ったことがなかった。期待と不安の中、初めて会った祖父母(ピーター・マクロビーさん、ディアナ・デュナガンさん)は優しく、滞在中の1週間を楽しく過ごせそうだった。ところがその夜、異様な気配で目が覚めた2人は、絶対開けてはいけないという祖父の言いつけを破り、部屋のドアを開け、ある光景を見てしまう……というストーリー。
今回シャマラン監督は大胆な試みに挑戦。全シーンを、姉弟が持つハンディカメラによる映像、いわゆるPOV(主観映像)で構成した。それによって観客は、1日たつごとにとんでもない状況に追い込まれていくベッカとタイラー同様、徐々に恐怖にからめとられていくことになる。祖母がクッキーを無心にほお張ったり、ものすごいスピードで這(は)い回ったり、その形相や様子はひたすら怖い。そんな祖母を病気なのかと気遣う姉弟に祖父がするもっともらしい説明や、祖父母の留守中に訪ねて来る人々など、至るところに伏線が張られている。ただ、正直なところPOVによる撮影手法のせいで、前半は集中力を保つことを強いられた。しかしそれをやり過ごすと突然“閃光(せんこう)”が差し、そこから度胆を抜かれる結末までは一気に進んだ。シャマラン監督による脚本、演出もさることながら、祖父母役のマクロビーさん、デュナガンさんの演技はさすがの一言に尽きる。23日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
「TRASH/トラッシュ」 三代目JSB・ELLYが映画初主演 鬱屈した若者を熱演
ダンス・ボーカルユニット「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE(三代目JSB)」のELLYさんが初主演した映画「TRASH/トラッシュ」(権野元監督)が10月24日に公開される。地元では負けなしだった主人公が、高校時代に付き合っていた元恋人の借金問題に首を突っ込んだことで地下組織との戦いに巻き込まれていく……。主人公の本堂ケントを演じるELLYは、ダンスで培った身体能力を生かした格闘シーンを熱演し、主人公の親友役として「劇団EXILE」の八木将康さんが出演するほか、中村ゆりさん、天野浩成さんらが出演している。
地元で負けなしの本堂ケント(ELLYさん)は東京に出てきたが、なんでも中途半端に投げ出す生活を送り、バーのマスター・野中(遠藤雄弥さん)に紹介してもらった仕事もケンカが原因でクビになってしまう。ある日、地元に帰ったケントは、高校時代の恋人・細川南(中村さん)が、夫の借金でトラブルに巻き込まれていることを知る。南の夫捜しを引き受け東京に戻ったケントは、闇金「ニコチンファイナンス」に殴り込むが、そこは元暴走族の堀田昌樹(遠藤要さん)が仕切る地下組織が関係する店で……というストーリー。
内容としては男臭さがただような映画だが、その実、夢や希望を見いだせないでいら立ちをぶつけてしまうといったことは、誰しもが感じたことがあると思う。そんな鬱屈(うっくつ)してくすぶっている人物をELLYさんが熱演し、リアリティーを伴った迫力を感じさせ、一生懸命だからこそ醸し出される空気感というものを見事に表現している。数多く出てくるアクションも見応え抜群で、ほとばしる熱量と迫力に見ていて痛みを感じてしまいそうになるほどで、「アラグレ」(2013年)などで熱い男たちの生きざまを描いてきた権野監督がうまくまとめ上げている。友情や本当の強さとはいったものを考えさせられた。24日からユナイテッド・シネマ豊洲(東京都江東区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「とびだすプリパラ」 3D立体映像で迫力のライブ らぁらが迫ってくる!
小学生女児を中心に人気のテレビアニメ「プリパラ」(テレビ東京系)の劇場版「とびだすプリパラ み~んなでめざせ!アイドル グランプリ」(依田伸隆監督)が24日、2D・3Dで公開される。「プリパラ」の劇場版第2弾で、初めて3D立体映像として公開され、アイドルたちが歌って踊る姿をライブを見るように楽しめる。
「プリパラ」はアイドルをテーマにしたアニメで、主人公・真中らぁらが“神アイドル”を目指して奮闘する姿が描かれている。今年3月に初の劇場版アニメ「劇場版プリパラ みーんなあつまれ!プリズム☆ツアーズ」が公開された。
劇場版第2弾となる今作は、第1弾と同じくライブがテーマで、らぁらたちは“一番輝くアイドル”を決める大会に参加することになる。4月にスタートしたテレビアニメ第2シーズンの新キャラクターの黒須あろまや白玉みかん、緑風ふわりも登場。「HAPPYぱLUCKY」「ま~ぶる Make up a-ha-ha!」「No D&D Code」などの子供にも大人にも人気の楽曲の数々を楽しめる。
「プリパラ」のライブシーンの見どころは、3DCGのキャラクターが動き回りながら歌って踊るハイクオリティーな映像だ。劇場版は、ライブを大画面で楽しめ、3D上映ではさらに迫力が増す。ライブ中の派手な演出のメーキングドラマ、衣装がカラフルに変化するサイリウムチェンジを3D映像で見ると感動すら覚えた。キラキラしたエフェクトが目の前に迫ってくるのが美しく、らぁらたちが空を飛び、くるくると回転するシーンは迫力があり、実際にライブ会場に入り込んだような感覚になる。
ライブのほかにも、らぁらと東堂シオンによる「らぁらとしおんのかしこま四字熟語」などのミニコーナーも用意されており、子供が飽きないような展開になっている。劇場版のビジュアルでも姿は見られるが、人気キャラクターのファルルが登場するのは、ファンにはうれしいところかもしれない。
また、劇場版第1弾でも話題になった、サイリウムを使用できたり、コスプレでも参加できる「アイドルおうえん上映会」が一部劇場で開催されるようなので、“プリパラおじさん”や“プリパラおねえさん”も堂々とアイドルを応援できそうだ。
10月24日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(小西鉄兵/毎日新聞デジタル)
「アクトレス~女たちの舞台~」 華やかな世界に生きる中年女優の舞台裏での葛藤
ジュリエット・ビノシュさん、クリステン・スチュワートさん、クロエ・グレース・モレッツさんら豪華女優が共演した「アクトレス~女たちの舞台~」(オリビエ・アサイヤス監督)が10月24日から公開される。華やかな世界に生きる女優の光と影を、ドラマチックに描き出した。スイスのリゾート地として知られるシルスマリアでの絶景も見ものだ。
マリア(ビノシュさん)は、若い頃の出世作のリメーク作にオファーされるが、ヒロイン役ではなく、ヒロインに振り回される中年女性役の方だった。自分を見いだしてくれた劇作家の誘いでスイスのシルスマリアに滞在することになったマリアは、マネジャーのバレンティン(スチュワートさん)を相手に、芝居の稽古(けいこ)に打ち込むが、自分の役柄を肯定できずに苦悩する。一方、ヒロイン役は、ハリウッド大作で活躍する若手のお騒がせ女優のジョアン(モレッツさん)だった。役に打ち込めないマリアは、イライラをバレンティンにぶつけてしまう……という展開。
誰にも訪れる「老い」。きらびやかな世界にいる女優にとって、これほどの試練はない。ビノシュさんがそんなスター女優の葛藤を演じるから、ステージ裏をのぞき込んでいるように生々しく感じた。若いマネジャーを相手に繰り返される芝居の内容が、マリアの心を映し出している。2人の対比からは、マリアの頭の硬さが目立ち、ヒロイン役に抜てきされた鼻っ柱の強い新進女優の登場で、ますます「老い」が強調されるという残酷な仕組み。中年女性と若い女性との対比が映画を貫くが、この設定は、なにも女優の世界に限らず、実生活にも置き換えられそうだ。世の女性は、なんとか若さにしがみつこうとするが、この映画は老いることを「悪」としてはいない。マリアは過去にとらわれてはいるものの、確かな経験と成熟がある。これらは、中年女性の宝だ。そして、必ずそれを見てくれる人がいることで、希望へとつながっていく。女性たちの葛藤をすっぽりと抱え込んでくれる、舞台となったスイスの大自然に目を奪われる。特に「マローヤのヘビ」と呼ばれる神秘的な雲の自然現象は必見。マリアに人生の転換期を伝えるかのようだ。今作でスチュワートさんが、米国人女優として初の仏セザール賞最優秀助演女優賞を獲得した。24日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)