「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」 マジックに驚嘆! 悪役はあの人…
イリュージョン犯罪集団が世直しするシリーズ第2作「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」(ジョン・M・チュウ監督)が9月1日に公開される。前作「グランド・イリュージョン」(2013年)に引き続き、ジェシー・アイゼンバーグさん、ウディ・ハレルソンさん、デイブ・フランコさん、マーク・ラファロさんらオリジナルメンバーが再集結。新たに、「バチェロッテ あの子が結婚するなんて!」(12年)のリジー・キャプランさんが加わり、さらに、「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフさんが“悪役”で出演する。イリュージョニスト対天才エンジニアの、仰天かつ華麗な戦いが楽しめる。
前作で、トリックを駆使し権力者の悪事を暴いたイリュージョニスト集団“フォー・ホースメン”。姿を隠していたメンバーが、1年後、再集結することに。リーダーのJ.ダニエル・アトラス(アイゼンバーグさん)、人間の心を操るメンタリストのメリット・マッキニー(ハレルソンさん)、カードマジックの天才、ジャック・ワイルダー(フランコさん)、そして、新たにメンバーに加わった切断マジックの名手、ルーラ(キャプランさん)の4人は、巨大IT企業の不正を暴くために、新商品発表のプレゼンテーションを乗っ取る計画を立てる。計画は途中まで順調に進むが、突然、会場が何者かに逆ジャックされ、さらにメンバーは、天才エンジニア、ウォルター・メイブリー(ラドクリフさん)の陰謀に巻き込まれていく……というストーリー。
披露されるマジックは、今回もさえわたっている。プレゼンを乗っ取るときのホースメンの手並みの鮮やかさといったらないし、米ニューヨークにいたはずの彼らが中国マカオに“瞬間移動”したり、降っている雨を空中で止めたりと、これって一体どうやったの?と首をかしげるようなイリュージョンの数々に驚嘆しきり。ほとんどのマジックを、俳優たちが特訓の末にこなしているというからさらに感服する。しかも、その種明かしまでしてみせるというサービスぶり。共同プロデューサーでもある、世界的マジシャン、デビッド・カッパーフィールドさんがマジックを監修したというが、ゴージャスなマジックが間近で見られて得した気分だ。
また、髪を切り精悍(せいかん)さを増したアイゼンバーグさんが、観衆相手に語り掛ける姿には前作以上にほれぼれさせられるし、“魔法使い歴”10年のラドクリフさんが、「科学がマジックに勝つ」と豪語する悪役の天才エンジニア(しかもひげ面!)を演じているのも新鮮。さらに今回は、ホースメンの“敵”、FBI捜査官のディラン・ローズ(ラファロさん)の生い立ちや、“秘密結社”の存在も描かれ、マジックだけが見せ場ではない、奥の深い内容になっている。1日からTOHOシネマズスカラ座・みゆき座(東京都千代田区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
「ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-」怪しげな世界観で個性的キャラが大暴れ
俳優の松田翔太さんの主演映画「ディアスポリス-DIRTY YELLOW BOYS-」(熊切和嘉監督)が9月3日に公開される。密入国の外国人ばかりがいる秘密の自治社会が存在する東京を舞台に、弱き者を助ける裏警察官・久保塚早紀の活躍を描く。2016年4~6月にはテレビドラマ版が放送された。映画では、誘拐殺害事件を巡り、久保塚らとアジア人犯罪組織、ヤクザによる抗争が繰り広げられる。ドラマ版に引き続き松田さんが久保塚、相棒の鈴木を浜野謙太さんが演じるほか、須賀健太さん、安藤サクラさんらが出演している。
マンガ・すぎむらしんいちさん、脚本・リチャード・ウーさんによるマンガ「ディアスポリス-異邦警察-」が原作。密入国し東京に住む外国人たちが自分たちを守るべく組織した秘密組織・異邦都庁(裏都庁)。銀行や病院、警察組織「ディアスポリス」などがあり、久保塚早紀(松田さん)は唯一の異邦警察の警察官として日々奮闘していた。ある日、満身創痍の大けがから回復した久保塚は、仲間たちとパーティーに興じていると、裏都民の一人・マリアの誘拐事件が発生。相棒の鈴木(浜野さん)とともに久保塚は捜査に乗り出し、監禁先を突き止めるが、すでにマリアは殺されていた。殺害現場から逃げたのがアジア人犯罪組織「ダーティ・イエロー・ボーイズ」の周(須賀さん)と林(NOZOMUさん)という情報をつかみ、久保塚は2人の足取りを追跡するが……というストーリー。
アンダーグラウンドな世界観と、主人公・久保塚のキャラクターが原作人気を支えていたが、負けず劣らずで独特の空気感とスタイリッシュさでドラマ版でも楽しませてくれていた。そういった期待値が高い中で見た劇場版は、開始早々から壮大なスケールと味わいのある映像で一気に裏都庁が存在する東京へと心を連れていってくれる。時系列的にはドラマ最終話のその後の物語だが、映画から登場するキャラクター中心に展開されていくので、たとえドラマを見ていなかったとしても、その面白さが薄れることはない。チャイニーズマフィアと裏都庁、そして謎のヤクザたちの争いは各組織のバディ感が心地いい。コミカルな要素もありつつ、哀愁やぐっとくる描写もあり、生きることはあがくこと、世界や人間のあり方について考えさせられた。3日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「エミアビのはじまりとはじまり」あまちゃん俳優と“一寸法師”が出演 笑えない状況になった芸人は?
NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主人公の父の若い頃を演じた森岡龍さんとCMの一寸法師でおなじみの前野朋哉さんが漫才コンビを演じる「エミアビのはじまりとはじまり」(渡辺謙作監督)が9月3日に公開される。相方を事故で失った芸人がどん底から再生していく物語。「舟を編む」(2013年)の渡辺監督がおかしみと悲しみを絶妙にブレンドしたヒューマンドラマを生み出した。
実道憲次(森岡さん)と海野一哉(前野さん)の人気急上昇中の漫才コンビは、実道はモテキャラ、海野は三枚目で売っていた。しかしある日、海野が自動車事故で亡くなる。実道はマネジャーの夏海(黒木華さん)とともに、海野の自動車に同乗していて亡くなった黒沢雛子(山地まりさん)の兄で元芸人の拓馬(新井浩文さん)に会いに行く。そこで、拓馬から「死ぬ気で笑わせろ」とむちゃぶりを要求された実道。拓馬は、実道と海野を引き合わせた過去があり、実道にとって恩人だった。お互いに大事な者を亡くした実道と森岡は……という展開。
漫才についての話でも、お笑い業界の裏側を見せるものでもない。笑えない状況に追い込まれた人々を描いている。相方を亡くした実道。妹を亡くした元芸人の拓馬。互いに「喪に服している」という状況だ。実道は拓馬に「死ぬ気で笑わせろ」と、容赦なく迫られる。近しい人の死に誰もが、「その死がうそだったらいいのに」と思ったことがあるだろう。そんな胸中が強烈な形で描かれる冒頭から、渡辺監督のオリジナリティーと演出のさえが見て取れる。追い込まれた実道のオドオド感は、相方がデートの帰りにワルにからまれたときのオドオド感にも通じ、脅迫されながら笑わせろという要求に応えようと必死になる者を見れば見るほど、哀れで仕方ない。
しかし、死んだ海野が遺した究極の芸がきっかけとなり、実道と拓馬が「跳ぼう」と決意するあたりから、映画のトーンが明るくなり始める。その後もまた「笑わせろ」と、今度は拓馬が追い詰められるのだが、ファンタジックでクスッと笑えるこのシーンには、死んだ海野の力が息づいていてすてきなシーンになっている。笑いには、ときに人間の持つ、もの悲しさが隠されている。そこに、泣ける笑いという深みも生まれる。大切な人の死をどう乗り越えるのか。笑いが「喪」から日常に戻る装置となり、おかしみと悲しみがシーソーゲームのような絶妙なバランスでつづられていく。なお、劇中のお笑いのネタは渡辺監督が台本を書いたそうだ。俳優陣が見事に演じていてとても楽しいシーンになっている。ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほかで3日から公開。(キョーコ/フリーライター)
「みつばちマーヤの大冒険」初放送から40年 フルCGで描かれた心温まる物語に感動
ワルデマル・ボンゼルスの児童文学「みつばちマーヤの冒険」(1912年)を基にフルCGでアニメ化した劇場版アニメ「みつばちマーヤの大冒険」(アレックス・ステイダーマン監督)が9月3日に公開される。ミツバチのマーヤがさまざまな経験を通じ成長していく物語で、日本では75年に初アニメ化。その後、82年に続編「新みつばちマーヤの冒険」が制作された。今作は2014年にドイツなどで製作され、外の世界に飛び出したが連れ戻され牢屋に入れられたマーヤが、女王蜂の座を狙う陰謀に立ち向かう姿を描く。主人公・マーヤの声を春名風花さん、親友のウィリー役を野沢雅子さん、女王付きの従者・クロウリー役を落合福嗣さん、フィリップ役を小林祐介さん、スズメバチのスティング役を柿原徹也さんが務め、ゲスト声優としてスギちゃんとダンディ坂野さんも出演している。
みつばちのマーヤ(声・春名さん)は外の世界が見たくて、教育係の言うことを聞かず巣を飛び出す。草原で出会ったバッタのフィリップ(声・小林裕介さん)からこの世の素晴らしさを教わり、マーヤはもっと冒険したいと思うが巣に戻され、女官長のバズリーナ(声・西墻由香さん)にお仕置きの牢屋に入れられてしまう。しかしマーヤは女王蜂(声・沢田敏子さん)の座を奪おうとするバズリーナの陰謀を目撃してしまい……というストーリー。
原作は出版から100年以上が経過した現代でも、世界中の子供たちから愛され続けるドイツ文学の傑作で、日本でもアニメ版が大ヒットするなど子供のころに見ていた世代の人にとっては思い入れの強い作品だろう。フルCGアニメとして描かれているマーヤは躍動感と生命力にあふれ、背景となる草原や空もキラキラと美しく、ストーリーを盛り上げている。出会いや冒険を経験する中でマーヤが次第に成長していく姿は感慨深く、ストーリーを追いながら泣いたり、笑ったりと素直に楽しめる。ヒット当時のアニメを知る人にとっては、75年の最初のアニメでウィリー役を担当した野沢さんが同じ役を約40年ぶりに演じていることは特に感慨深いだろう。子供はもちろん、大人が見ても忘れかけていた童心がよみがえり、すがすがしい気分にひたることができる。3日から全国の109シネマズ限定で公開。(遠藤政樹/フリーライター)