「テラフォーマーズ」 伊藤英明×三池監督 火星で昆虫の能力を持った人間たちが壮絶バトル

山P登場の対決シーン映像がウェブ公開 映画「テラフォーマーズ」予告編 #TERRA FORMARS #movie

 貴家悠さん作、橘賢一さん画の人気マンガを基に実写化した映画「テラフォーマーズ」(三池崇史監督)が4月29日に公開された。映画はコミックス1巻掲載の“バグズ2号編”がベースとなっており、西暦2599年の火星を舞台に、とある生物が異常進化を遂げた“テラフォーマー”と、昆虫の能力を持った15人の日本人の壮絶な戦いを描いている。伊藤英明さんが主演を務めるほか、武井咲さん、山下智久さん、山田孝之さん、ケイン・コスギさん、菊地凛子さん、加藤雅也さん、小池栄子さん、篠田麻里子さん、滝藤賢一さんら豪華キャストも話題を集めている。

 21世紀、爆発的な人口増加が起き、人類はコケと“ある生物”を送ることで火星を地球化させる「テラフォーミング計画」を実行する。500年後、計画の仕上げとして、その生物を駆除するために、小町小吉(伊藤さん)ら15人の隊員が火星へと送り込まれる。しかし、“ある生物”は人型に異常進化した驚くべき姿となっており、隊員たちに襲いかかる……というストーリー。

 人気マンガを実写化した今作は、上映開始からスピーディーかつ怒濤の展開で、原作の衝撃度を見事に再現している。そうそうたる顔ぶれのキャストが出演しているにもかかわらず、次々とテラフォーマーたちに登場人物が倒されていく描写は、見ていてい潔さすら感じる。人間たちが昆虫の能力を使って“変身”し、力を合わせて敵に立ち向かう姿は、どこか戦隊ヒーローを彷彿(ほうふつ)とさせ、虫への変異シーンのカッコよさやテラフォーマーのある種、割り切った造形などがアクションシーンを大いに盛り上げる。そこそこショッキングな演出があるものの、年齢制限は設けられていないのでグロテスクな描写が苦手な人でも安心して鑑賞できる。人気マンガが原作ゆえに賛否両論はあるだろうが、メッセージ性などは意識せず、迫力のバトルと独特の世界観を楽しみたい。小栗旬さん演じるマッドサイエンティストの“ジョーカー”ぶりが映画にスパイスを利かせている。29日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」チーム分裂!? かつての友か今の仲間か

ついにスパイダーマンがアベンジャーズに“参戦”!映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」US予告編

 米マーベルスタジオによる待望の最新作「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(アンソニー・ルッソ監督&ジョー・ルッソ監督)が、4月29日から公開される。「キャプテン・アメリカ」シリーズとしては3作目に当たる今作では、“キャプテン・アメリカ”ことスティーブ・ロジャースの前に“アベンジャーズ”チームの仲間が立ちはだかるという前代未聞の事態に陥る。かつての親友か今の仲間か。キャプテン(・アメリカ)の葛藤とメンバー同士の絆が、より色濃く浮かび上がる内容になっている。スパイダーマンら“新メンバー”も登場し、作品をにぎにぎしく飾る。

 盗まれた生物兵器を奪還するために出動したアベンジャーズ。ところが、彼らの戦いはまたもや一般市民に甚大な被害をもたらしてしまう。アベンジャーズを危険視する声は頂点に達し、ついには国際的政府組織の管理下に置かれる事態に。“アイアンマン”ことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.さん)はその案に賛成するが、キャプテン(クリス・エバンスさん)は強く反発。チームがアイアンマン派とキャプテン派に分かれる中、ウィーンでテロ事件が発生する。その犯人として指名手配されたのは、キャプテンのかつての親友“ウィンター・ソルジャー”ことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタンさん)だった……というストーリー。

 ここまでチームが“真っ二つ”になるとは思っていなかった。ヒーロー同士の対決を期待させながら、それがいつしか曖昧になっていく作品がある中、キャプテンとアイアンマン、2人の対立に重きを置くところは徹底している。「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015年)から加わったヴィジョン(ポール・ベタニーさん)やスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセンさん)が得意技をいかんなく発揮し、アントマン(ポール・ラッドさん)やブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマンさん)、スパイダーマン(トム・ホランドさん)が登場し、場を盛り上げる。アクションはいつになく大胆で、とりわけ分裂した二派が壮絶な戦いを繰り広げるシーンと、キャプテンとアイアンマンの正真正銘の一騎打ちは出色。さらに、ダニエル・ブリュールさん演じる謎の男がからむことでスリル感が増幅し、キャラクターそれぞれの感情の機微もそつなく描かれている。

 アベンジャーズ・メンバー総出のため、「キャプテン・アメリカ」シリーズながらキャプテンの“ヒーロー感”が薄まってしまったのは残念だが、それを差し引いても見応えは十分過ぎるほどだ。29日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)

「ちはやふる -下の句-」 今度は“スポ根”!? 全国大会に進んだ千早の青春

広瀬すずが主演!主題歌はPerfume 映画「ちはやふる -上の句・下の句-」予告編

 末次由紀さんの人気マンガを広瀬すずさんの初主演で実写化した映画「ちはやふる」(小泉徳宏監督)の2部作の後編「下の句」が4月29日に公開された。「下の句」は、3月に公開された前編「上の句」で強豪・北央学園に勝利し、東京都大会優勝を成し遂げた千早(広瀬さん)らが所属する瑞沢高校かるた部が全国大会に向けて練習を始めるが……という展開。前編は千早の活躍や競技かるたの紹介とともに、太一(野村周平さん)と新(真剣佑さん)の千早を巡るライバル関係に焦点が当たり、男女ともに楽しめる切ない青春恋愛映画という趣だったが、後編はかるたクイーンの若宮詩暢(松岡茉優さん)と出会ってしまった千早が、個人として詩暢と対決したい気持ちと部の仲間とのチームワークとの折り合いをどうつけるかという競技かるたに懸ける青春により焦点が当たっている。前編とは異なる種類のカタルシスを感じる1本の爽やかな“スポ根”青春映画に仕上がった。

 「ちはやふる」は、末次さんが2007年からマンガ誌「BE・LOVE」(講談社)で連載中の人気マンガで、コミックスは31巻まで発売され、累計発行部数は1600万部を超える。10年には「このマンガがすごい!オンナ編」第1位を獲得した。

 「下の句」は、福井まで新に東京都大会優勝を報告しにいく千早と太一だったが、「かるたはもうやらん……」という新の思わぬ告白に千早はショックを受ける。全国大会へ向けて仲間たちと懸命に練習に励む千早だったが、同年齢ながら最強のクイーンと呼ばれる若宮詩暢の存在を知り、全国大会の個人戦で詩暢と対決する可能性があることが分かると、新に「強くなったな」って言われたい、詩暢に勝てばもう一度新とかるたができるかもしれない……と思うようになる。千早の気持ちは次第に詩暢にとらわれ、競技かるた部の仲間たちから離れていくようになる。そんな千早の目を覚まさせようとする太一。千早、太一、新の気持ちが少しずつすれ違い……というストーリー。

 後編は“かるたの甲子園”と呼ばれる全国高校かるた選手権が行われている近江神宮(大津市)での撮影シーンもあり、試合や練習も含めて競技かるたのシーンに重きが置かれている。撮影にあたっては1秒に1000コマ撮影できるハイスピードカメラ「ファントム」を使用し、CG(コンピューターグラフィックス)に頼らず、極力実写を使って迫力の競技シーンに仕上げた。競技かるたは音が重要なポイントにもなるため、そこは実写映画ならではの静と動を使い分けた音を使用し、より競技の臨場感が増している。

 競技のシーン以外の千早や太一、新、部員たちのそれぞれの心の動きもみずみずしく表現し、高校生の青春を鮮やかに描き出した。そしてラストは千早のかるた人生はまだまだこれからというところで幕を閉じる。このあとの千早たちの活躍がもっと見たい、と思っていたら、初日の舞台あいさつで続編が決定したことが原作者の末次さんの手紙で明らかになった。千早らの次のステップを確認するためにも、この「下の句」は見逃せない。29日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほか全国で公開。(細田尚子/MANTAN)

「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」 野村萬斎初の現代劇 凸凹コンビが難事件に挑む

野村萬斎、宮迫博之が出演! 映画「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」予告編

 狂言師の野村萬斎さんが現代劇に初挑戦した主演映画「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」(金子修介監督)が4月29日に公開される。「ALWAYS 三丁目の夕日」や「探偵はBARにいる」などで知られる人気脚本家の古沢良太さんが書き下ろしたオリジナルストーリーで、残留思念(物や場所に残った人間の記憶や感情など)を読み取ることができる元お笑い芸人の男が、元相方と事件解決に挑む姿を描いている。特殊能力を持つ主人公の仙石和彦を萬斎さん、仙石の元相方・マイティ丸山をお笑いコンビ「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんが演じ、杉咲花さん、木村文乃さん、「関ジャニ∞」の安田章大さんらが出演している。

 残留思念を読み取る能力を持つ仙石和彦(萬斎さん)は、かつて丸山竜司(宮迫さん)博之)とお笑いコンビ「マイティーズ」を組み、能力を生かして活動していたが、能力の代償で人間不信に陥りコンビを解散。その後、仙石は極力、他人との接触を避けるためにマンションの管理人となり、丸山はピン芸人・マイティ丸山として活動することになった。ある日、丸山の所属する芸能事務所「峠プロダクション」に、女子高生の秋山亜美(杉咲さん)が、失踪(しっそう)したピアノ教師の沢村雪絵(木村さん)の行方をマイティーズに探してほしいと訪ねてくる。コンビを復活させたい社長の久美子(高畑淳子さん)に命じられ、丸山は10年ぶりに仙石と再会するが……というストーリー。

 狂言の世界で活躍する萬斎さんが、猫背気味でぼそぼそしゃべる変人キャラを演じているところが面白い。普段は落ち着いていて貫禄すら感じさせる萬斎さんが、イメージと真逆の役に挑戦している様子に、次第に引き込まれていく。飄々(ひょうひょう)とした雰囲気をかもし出す仙石と、元相方で共に事件解決に挑む宮迫さん演じる丸山の掛け合いが軽妙で、正反対の性格がアンバランスながらも、どこか息の合ったコンビぶりを見せてくれる。謎解きのミステリーと、個性豊かな登場人物たちが織りなすコメディーが絶妙で、一歩踏み込んだ人間ドラマとしても完成度が高い。事件の真相は衝撃的だったが、もう少しシンプルな謎解きでもよかったかもしれない。キャストの味わい深い演技に酔いしれたい。29日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

「追憶の森」 樹海でボロボロになる渡辺謙とマシュー・マコノヒーに注目

渡辺謙、マシュー・マコノヒーが初タッグ! 映画「追憶の森」予告編

 マシュー・マコノヒーさんと渡辺謙さんの共演が話題の「追憶の森」(ガス・バン・サント監督)が4月29日から公開される。富士山の北西に広がる青木ケ原の樹海にやって来た米国人男性が、一人の男と出会うことで、自らを見つめ直すさまを描いている。

 アーサー・ブレナン(マコノヒーさん)は、片道切符で米国から日本にやって来た。目的地は富士山の裾野に広がる青木ケ原の樹海。鬱蒼(うっそう)とした森の中に足を踏み入れ、薬を飲み、永遠の眠りにつこうとしたとき、けがをした男(渡辺さん)が通りがかる。助けを求める男を放っておくことができなかったアーサーは、一緒に出口を探し始める。やがて、アーサーは男に「自分がなぜ樹海に来たのか」を語り出す……という展開。

 アーサーはインターネットで死に場所を検索して、日本の樹海にやって来た。神秘的な森の俯瞰(ふかん)から始まり、日本にやって来るまでが簡潔に描かれ、自殺への迷いのなさを感じさせる。ところが、こんな深い森の中で、どうしたことか一人の男と出会ってしまった。その傷ついた男は、アーサーに助けを求めてくる。「道に迷ったんだ。よくあることだ」と言いながら、アーサーは己のことを振り返っていく。うまくいかなかった結婚生活。夫婦のすれ違いが、巧みな会話を使って1シーン、1シーンの中に凝縮されて描かれる。夫婦関係は自分でも舵(かじ)をとれただろう。だが、樹海の自然は容赦なかった。出口を求めて森の中をさまよう男2人は、崖から転げ落ち、鉄砲水に打たれ、ボロボロになる。体を使って必死になる環境に置かれたことでむき出しになるのは、ただそこにある「自分」。樹海の自然は、自殺願望の男に生への強い気持ちに気づかせながら、罪の意識からも解放していく。

 突然現れた日本人は、アーサーに「ここは西洋人のいう煉獄(れんごく)だ」と教える。生と死が円環の中にある東洋的な思想が、アーサーを慰めるところが印象的だ。自分の知らなかった妻にアーサーが出会えたとき、穏やかな気持ちが静かに胸に広がる。「[リミット]」(10年)のクリス・スパーリングさんの脚本を、「プロミスト・ランド」(12年)のバン・サント監督がスピリチュアルな映画に仕立てた。アーサーの妻役をナオミ・ワッツさんが演じる。29日からTOHOシネマズ 新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター) 

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