「結婚」ディーン・フジオカが結婚詐欺師を好演 香り立つような色気にやられる
俳優のディーン・フジオカさん主演映画「結婚」(西谷真一監督)が6月24日から角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。直木賞作家・井上荒野さんの同名小説が原作。完璧なビジュアルや香り立つ色気で女性たちをとりこにする結婚詐欺師をディーンさんが“イメージぴったり”に好演。彼にだまされた女性たちとの騒動を描く。
被害者の1人だったるり子(柊子さん)を相棒に、結婚詐欺を働く古海(うるみ)健児(フジオカさん)。市役所勤めの女性やキャリア志向の元編集者らを、相手に合わせて設定を変え、次々にだましていく一方で、古海自身は妻と幸せな結婚生活を送っていた。ある日、被害者の1人が探偵に古海探しを依頼したことで、だまされた女性たちがつながり、古海を追い詰めていく……というストーリー。古海にだまされる女性役を中村映里子さん、松本若菜さん、安藤玉恵さんらが演じ、古海の妻・初音役で貫地谷しほりさん、謎の女・泰江役で萬田久子さんが出演している。
端正な容姿に気の利いた会話、ミステリアスな瞳に寂しげな横顔で女たちの心を奪っていく古海という役は、これまでの役柄とは異なるが、ディーンさんのはまり役と言えるほどマッチしている。優雅なダンスや華麗にピアノを弾く姿など、色気と艶っぽさがあふれ出て、男性から見てもドキドキしてしまう。古海の抱える闇や、女性たちの苦悩など大人なドラマもきっちりと描かれ、ちょっとしたミステリー感もあって、最後まで飽きさせない。(遠藤政樹/フリーライター)
「ハクソー・リッジ」実話に基づくメル・ギブソン監督作 戦場の凄惨さに言葉失う
俳優のメル・ギブソンさんが、10年ぶりにメガホンをとった「ハクソー・リッジ」が6月24日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほかで公開。1945年、沖縄・前田高地での米軍と日本軍の激戦を、実話に基づき描いた戦争映画。日本軍の激しい攻撃によって米軍が撤退に追い込まれる中、戦場に残った主人公デズモンド・ドスが、仲間を救出しようと奮闘するハイライトシーンの凄惨(せいさん)さに言葉を失った。
幼いころの苦い経験から、「汝、殺すなかれ」という教えを胸に生きてきたデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールドさん)は、戦争が激化する中、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍を志願する。訓練中、断固として銃を持とうとしないデズモンドは軍法会議にまでかけられるが、紆余(うよ)曲折の末、主張が認められる。45年4月、デズモンドは沖縄の「ハクソー・リッジ」での戦闘に加わり、想像を絶する体験をする……というストーリー。
モデルとなったデズモンドさんの生い立ちをひもときながら、やがてハクソー・リッジの戦いになだれ込んでいく。捨て身の攻撃に出る日本兵と、次々と倒れていく米軍兵。目を覆いたくなるような惨状がしばし繰り広げられる。まさに阿鼻叫喚の世界だ。その中を、まるで呪文のように「もう1人助けさせて」と唱えながら走り回るデズモンドを見ながら息苦しさを覚え、戦争のむごさを呪った。米軍の反撃に遭う日本兵の姿に複雑な心境になり、「人を殺すためでなく、生かすために戦地に行く」というデズモンドの考え方に深く共感した。
恋人ドロシー役にテリーサ・パーマーさん、上官グローバー大尉役にサム・ワーシントンさん。作品は第89回米アカデミー賞で編集賞、録音賞を受賞した。ハクソーは「のこぎり」、リッジは「崖」の意。前田高地にある高さ約150メートルの崖がのこぎり状であることから、米軍がそう呼んでいたという。(りんたいこ/フリーライター)