「スパイダーマン:ホームカミング」愛嬌のある可愛いスパイダーマンがMCUに本格参戦!
米マーベル・コミックを題材にしたアクション映画「スパイダーマン:ホームカミング」(ジョン・ワッツ監督)が8月11日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほかで公開。これまで単独で活躍してきたスパイダーマンが、アイアンマンやキャプテン・アメリカらが共演する“マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)”に本格参戦した作品で、主人公ピーター・パーカー/スパイダーマンが15歳と若く、全体に軽快かつポップな演出で、これまでのMCU作品に比べると若者寄りの仕上がりだ。
ベルリンでのアベンジャーズの戦いに参加したピーター・パーカー(トム・ホランドさん)は、アベンジャーズの正式メンバーに認めてもらうべく、今日も高校の授業の放課後、スーツに着替え、ニューヨーカーを助けるのに余念がない。一方、かつて戦闘の残がい回収事業に携わり、その仕事を奪われたことからトニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニーJr.さん)に恨みを持つエイドリアン・トゥームス/バルチャー(マイケル・キートンさん)は、ひそかに手に入れたがれきの一部でハイテク武器を開発し、ニューヨークを危機に陥れようとしていた……というストーリー。
フェリー船上でのバルチャーとの戦いで、自ら招いた大ピンチを修復しようとするスパイダーマンには、大いにハラハラさせられた。自分の力を認めてもらいたくて、ついむちゃをしてしまうピーターと、“親心”から彼をたしなめるトニーの師弟関係が見どころで、トニーが思いのほか重要な役割を担っているのは注目すべき点だ。作品を見る前は、主役のホランドさんの“線の細さ”を懸念したが、それがむしろ、15歳という子供以上大人未満の若者にふさわしく、決して精悍(せいかん)ではないが清潔感があり、愛嬌(あいきょう)もあって可愛いキャラクターに生かされている。「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)の“あの場面”が、いかにもピーターがやりそうなこととしてストーリーに盛り込まれていたり、MCUのキャラクターが姿を見せたりするのも楽しい。スパイダーマンは今後、3作のMCU作品に出演するそうだが、どんな成長と活躍を見せるのか楽しみだ。(りんたいこ/フリーライター)
「フェリシーと夢のトウシューズ」オペラ座バレエ団芸術監督が振り付けを担当した躍動感
孤児院育ちの少女が、バレリーナになるという夢に向かってまい進する劇場版アニメ「フェリシーと夢のトウシューズ」(エリック・サマー、エリック・ワリン監督)が8月12日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。アニメだからこそのダイナミックな演出が随所に見られ、主人公フェリシー(声:エル・ファニングさん)と、ライバル、カミーユ(声:マディ・ジーグラーさん)のダンスバトルシーンの、躍動感あふれる映像に目を見張った。
19世紀末のフランス。ブルターニュ地方の養護施設で暮らすフェリシーは、バレリーナを夢見る少女。あるとき孤児院を脱走した彼女は、たどり着いたパリのオペラ座で、掃除係のオデット(声:カーリー・レイ・ジェプセンさん)と出会う。この出会いが、フェリシーの夢の扉を開いていく……というストーリー。日本語吹き替え版でフェリシーの声を担当したのは、女優の土屋太鳳さん。土屋さんは、自ら歌詞を書き下ろした日本語版の主題歌も歌っている。また、オデットの声を黒木瞳さんが担当したほか、夏木マリさん、バレエダンサーの熊川哲也さんも出演している。
孤児院を俯瞰(ふかん)でとらえたオープニングから、色遣いの美しさに引き込まれた。フランスとカナダの合作による今作は、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督のオレリー・デュポンさんと、オペラ座でエトワールとして活躍したジェレミー・ベランガールさんが振り付けを担当しており、それだけに、手足の細かい動きのリアリティーは折り紙付き。一方で、アニメらしい表現にあふれており、皿洗いの罰を受けたフェリシーが、足で皿を器用に飛ばしながら、あるいは、ほうきと一緒に踊る、曲芸師ばりの身のこなしは、見ていてワクワクした。ハイライトシーンのカミーユと繰り広げる白熱のダンスバトルでは、オペラ座の舞台や客席、階段をフルに活用し、文字通りの“神業”を披露。現実には不可能と分かっていても、伸びやかな舞に興奮させられた。フェリシーは、おてんばで型破りで、ときに首をかしげる行動に出ることはあるけれど、元気と根性で道を切り開いていく。そんな彼女に、声援を送らずにいられなくなるはずだ。(りんたいこ/フリーライター)