「あさひなぐ」乃木坂46・西野七瀬主演 なぎなたに青春を懸ける爽やかスポ根
アイドルグループ「乃木坂46」の西野七瀬さんが主演を務める映画「あさひなぐ」(英勉監督)が9月22日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。マンガ誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中のこざき亜衣さんのマンガが原作。なぎなた部に入部したヒロインが、練習に励みながら、仲間やライバルたちとの出会いを通じて成長していく姿を描く爽やかなスポ根映画だ。
中学時代は美術部でスポーツとは縁がなかった東島旭(西野さん)は、二ツ坂高校に入学し、圧倒的な強さを誇る先輩・宮路真春(白石麻衣さん)と出会い、その強さに憧れてなぎなた部に入部。同級生の八十村将子(桜井玲香さん)、紺野さくら(松村沙友理さん)や先輩らと共にインターハイ優勝を目指して、過酷な練習の日々を送る……というストーリー。
旭役の西野さんをはじめ、旭の部活仲間やライバル高校の1年生エース・一堂寧々役の生田絵梨花さんら乃木坂46のメンバーが主要キャストを占めている。小林先生役で中村倫也さん、真春の弟・夏之役で森永悠希さんが出演している。
5月には「あさひなぐ」プロジェクトの一環として、乃木坂46メンバーによる舞台が上演された。
高校の部活動を軸にした青春物語。主要キャストを乃木坂46のメンバーが演じているため、ファン向けのアイドル映画という印象を受けるかもしれないが、旭役の西野さん、真春役の白石さんらの熱演や、最強のライバルを演じる生田さんの存在感が抜群で、作品としての完成度の高さを感じた。
特に試合シーンは緊張感がひしひしと伝わり、駆け引きやスピード感など本格的なスポーツ映画としても楽しませてくれる。なぎなたをあまり知らなくても、この映画を見ただけで競技の魅力が映像から伝わってきた。(遠藤政樹/フリーライター)
「ユリゴコロ」ゾクッ! ミステリアスな殺人鬼を演じる吉高由里子の新境地
女優の吉高由里子さん主演の映画「ユリゴコロ」(熊澤尚人監督)が9月23日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。沼田まほかるさんの人気ミステリー小説が原作。殺人を犯した女性の手記を青年が父の書斎で発見したことをきっかけに、出会うはずのなかった者たちが結び付き、壮絶なドラマが展開される。
カフェを営む亮介は、実家で「ユリゴコロ」と書かれたノートを見つける。書かれていたのは人を殺(あや)めることでしか世界とつながれない美紗子という女性の告白だった。内容が事実なのか創作なのか、多くの疑問を感じつつ、亮介はノートに引かれていく。そんな中、亮介の婚約者、千絵が失踪し……というストーリー。
吉高さんが美紗子、松坂桃李さんが亮介を演じる。千絵役で清野菜名さん、美紗子と運命的な出会いをする洋介役で松山ケンイチさん、千絵の元同僚役で木村多江さんらが出演している。
人の死でしか心のよりどころを感じられないという難役を、吉高さんは陰鬱さと透明感が同居した不思議な魅力で体現。ダークな世界観に一気にのめり込ませてくれる。美紗子が次々にターゲットを手にかけていくシーンでは、恍惚としながらもどこか憂いを感じさせる吉高さんの表情に深いドラマ性を感じる。あまりにもショッキングな怪演ぶりには背筋が凍り付いた。
物語はヘビーで叙情的だが、サスペンス的な展開や切ない愛も描かれ、心の奥底をわしづかみにされる。心情の振れ幅が大きい松坂さんの熱演にも注目だ。(遠藤政樹/フリーライター)
「プラネタリウム」ポートマンとジョニデの娘リリーが降霊術を操る美しい姉妹を演じた
「ブラック・スワン」(2010年)などで知られるオスカー女優ナタリー・ポートマンさん、ジョニー・デップさんとバネッサ・パラディさんの娘であるリリー・ローズ・デップさんが姉妹役で初共演した「プラネタリウム」(レベッカ・ズロトブスキ監督)が、9月23日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。死者と交信できるという米国人姉妹が、渡仏先で映画プロデューサーと出会い、運命を変えていく物語。ポートマンさんとデップさんが、30年代ファッションに身を包み、美しくミステリアスな姉妹役に扮(ふん)して降霊術をする場面が見どころだ。1930年代。米国人スピリチュアリストのローラ(ポートマンさん)とケイト(デップさん)の姉妹は、パリに渡って降霊術ショーを披露していた。ある日、2人に興味を持った映画プロデューサー・コルベン(エマニュエル・サランジェさん)が、世界初の心霊映画を企画して姉妹と契約する……という展開。
米国に実在したスピリチュアリズムの先駆者フォックス姉妹(3姉妹)とフランス初のトーキー映画を製作したベルナール・ナタンをモデルに、「美しき棘」(10年)のズロトブスキ監督がメガホンをとった。映像美の中に、姉妹とユダヤ人プロデューサーの運命がゆがめられていくさまを描き出している。
映画が光と陰の芸術であるように、ローラとケイトもまた、光と陰のような姉妹。明るい性格でショーを仕切りながらも、霊的な能力がない姉。降霊の能力を持つが内気な妹。妹への嫉妬(しっと)の念と愛情がない交ぜになった複雑な役柄をポートマンさんが繊細に演じ、デップさんが全身全霊で死者と交信する降霊術に挑んでいる。
2人がそろうと、画面の美しさは一段とアップ。戦争に向かって不穏な空気が流れる前の華やかなパリで、エレガントな30年代ファッションに身を包んだ2人のきらめきは刹那(せつな)的でまぶしいくらいだ。(キョーコ/フリーライター)