「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」人間の浅ましさが浮かび上がるシリーズ最終章
ウイルスによる突然変異で高い知能を得た猿たちと人間との壮絶な戦いを描くシリーズ最終章「猿の惑星 聖戦記(グレート・ウォー)」(マット・リーブス監督)が10月13日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほかで公開。「創世記(ジェネシス)」(2011年)、「新世紀(ライジング)」(14年)に続く3作目。オリジナル版「猿の惑星」(1968年)につながる真実がついに明かされる。
猿と人間の全面戦争が勃発してから2年。シーザー(アンディ・サーキスさん)率いる猿の群れは、森の奥深くに秘密の砦(とりで)を築き、滝の裏側に身を潜めていた。そこに、大佐(ウディ・ハレルソンさん)率いる軍隊が急襲。シーザーは、愛する家族と多くの仲間を失ってしまう。大佐への憎しみに駆られたシーザーは、仲間を新たな隠れ家へと向かわせ、自分は復讐(ふくしゅう)の旅に出る……というストーリー。
「どうして猿に感情移入しているんだろう」と自分でも不思議に思うほど、今回の物語には揺さぶられた。心に訴え掛ける場面が多く、その点ではヒューマン作と言えるだろう。これまで、人類との平和的共存を模索し、仲間のために奮闘してきたシーザー。しかし今作では家族を殺されたことで、人間への復讐に駆り立てられる。崇高で慈悲深かった彼の瞳には憎悪の炎が宿り、演じるサーキスさんの瞳がそれを見事に表現していた。
人間の残酷さも映し出していく。自分たちに都合の悪いものは消し去ることで問題を解決しようとする大佐たち。そんな彼らを見ながら、つくづく人間とは、愚かで浅ましい生き物だと思わずにいられなかった。
そんな深刻になりがちなストーリーにユーモアをもたらしていたのが、初登場のチンパンジー、バッド・エイプ(スティーブ・ザーンさん)だ。ちょっとおバカで臆病者の、でも、心根の優しい彼の、数々の奇行やチャーミング(?)なファッションは一服の清涼剤となっている。日本語吹き替え版では俳優の柳沢慎吾さんが演じている。
オリジナル版「猿の惑星」につながるエピソードには「なるほどなあ」と感心すると共に、「これでシリーズが終わってしまうのか」と、一抹の寂しさも感じた。(りんたいこ/フリーライター)
「恋と嘘」 森川葵、北村匠海、佐藤寛太が共演 斬新な設定が効いた恋愛物語
ムサヲさんのマンガを基に実写化した映画「恋と嘘」(古澤健監督)が10月14日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。DeNAのマンガアプリ「マンガボックス」で連載中のマンガが原作で、原作とは逆の女1人、男2人のアナザーストーリー。DNAなどあらゆるデータに基づき政府が最良の結婚相手を通知してくれる恋愛禁止の世界を舞台に、女子高生が、政府から通知された男性と幼なじみとの間で揺れ動く姿を描く。
未来の日本では少子化対策のため、政府が国民の遺伝子情報を分析し最良の結婚相手を通知する「超・少子化対策法」を施行。通知が来るのを心待ちにしている女子高生・仁坂葵(森川葵さん)は、誕生日の前日、幼なじみの司馬優翔から「好きだ」と告白され、戸惑う。そこに政府通知の相手で、無口でミステリアスな高千穂蒼佑が現れる……というストーリー。ダンス・ロックバンド「DISH//(ディッシュ)」の北村匠海さんが優翔、「劇団EXILE」の佐藤寛太さんが蒼佑を演じている。
お笑いコンビ、チュートリアルの徳井義実さん、アイドルグループ、SUPER☆GiRLSの浅川梨奈さんらも出演している。
結婚観は時代によって変わっていくものなのだろう。政府が最良の相手を通知してくれ、しかも遺伝子レベルでのマッチングだから幸せになれるというのは、意外にありかもしれないと感じる。
ただ、自由恋愛が禁止のため、葵のように告白された幼なじみとイケメンの通知相手に挟まれたら、選択に悩んでしまうことだろう。そのあたりの葛藤を、イケメン2人に囲まれてあたふたしながら森川さんが演じているシーンがキュートだ。もし自分がこの世界にいたら……と想像しながら見ると、より味わい深い。(遠藤政樹/フリーライター)
「弱虫ペダル Re:GENERATION」テレビシリーズ第3期に新作カットを追加し再構築
劇場版アニメ「弱虫ペダル Re:GENERATION」(鍋島修監督)が10月13日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。「弱虫ペダル」は、渡辺航さんが「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載中の自転車マンガで、これまで3回、テレビアニメ化された。18年1月から第4期がスタートする。劇場版ではテレビアニメ第3期「弱虫ペダル NEW GENERATION」の総集編に新作シーンをプラスし、新世代メンバーたちの始まりの物語を描く。
初心者ながら今やチームのエースクライマーとなった小野田坂道や新キャプテンの手嶋純太ら、新生チームになった総北高がインターハイの頂点を目指して戦いに挑む。昨年インターハイを制した総北高校自転車競技部のメンバー、金城真護、巻島裕介、田所迅の3人は、新チームを応援するため、インターハイ開催地の栃木に向かう……というストーリー。声優は山下大輝さん、岸尾だいすけさん、安元洋貴さん、森久保祥太郎さん、伊藤健太郎さんらが出演している。
テレビシリーズの再構成作品を劇場公開するのは、新作テレビアニメ放送前のお約束となりつつある。今回も基本的には総集編でありながら、ほとばしる熱量で純粋に楽しませてくれる。テレビ版でも十分に伝わってくるが、やはり映画館の大スクリーンで見ると、レースの場面は圧倒的な迫力。まばたきも忘れて見入ってしまう。レースシーンだけでなく、個性あふれるキャラクターたちが互いに高め合い成長していく姿にも目頭を熱くさせられる。新作パートは車中での会話から思わぬ展開を見せてくれ、ファンなら思わずニヤリとするだろう。(遠藤政樹/フリーライター)