「火花」菅田将暉、桐谷健太W主演 解散ライブの臨場感が半端ない
俳優の菅田将暉さん、桐谷健太さんダブル主演の映画「火花」(板尾創路監督)が、11月23日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほかで公開。原作は、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんの第153回芥川賞受賞作。全く芽の出ない若手芸人が先輩芸人に弟子入りし、葛藤しながらも前進する10年間を描く。切なさといとしさ、そしてほろ苦さが漂う青春映画だ。
「スパークス」という名の漫才コンビを組み、デビューした徳永(菅田さん)と山下(「2丁拳銃」の川谷修士さん)。しかし、いっこうに芽が出ない。そんな中、営業先の静岡県熱海市で、「あほんだら」というコンビを組む先輩芸人の神谷(桐谷さん)と大林(三浦誠己さん)と出会う。神谷の常識にとらわれない芸風に魅了された徳永は、彼の弟子になるのだが……というストーリー。
神谷の恋人役で木村文乃さんが出演。ビートたけしさんが作詞・作曲した主題歌「浅草キッド」を、菅田さんと桐谷さんが歌っているのも話題だ。
既に2016年にNetflixでドラマ化され、その後、同ドラマはNHKでも放映された。映像化は後発のため分が悪いが、これはギャグか?と突っ込みを入れたくなるようなビジュアルを挿入するなど、芸人としても活躍する板尾監督ならではの演出が、味わいとおかしみをもたらしている。
序盤の、神谷がヤンキーの観客に向かって「地獄、地獄」と叫ぶシーンをはじめ、印象に残るシーンが数々ある。個人的に琴線に触れたのは、舞台袖で待機する若手芸人たちの姿だ。自分の出番が来ると、それまでの険しい顔つきを一変させ、バカがつくほどの能天気な笑顔で客の前に駆け出していく。そこには、苦しみと喜びの間で葛藤しながら日々芸を磨き続ける芸人の心 意気と人間くささが感じられ、胸が熱くなった。
そして、スパークスの解散ライブ。本心とは逆の事を言う漫才を見せる徳永と、彼の言葉をしっかりと受け止める山下。カット割りをせずに長回しで一気に撮影したというその場面は、スクリーン越しとはいえ臨場感が半端ではなく、その場で2人の漫才を見ているような錯覚に陥った。(りんたいこ/フリーライター)
「ジャスティス・リーグ」バットマンとワンダーウーマンが超人とチーム結成 デビュー戦に挑む!
バットマンをはじめとするDCコミックスのヒーローが集結するアクション映画「ジャスティス・リーグ」(ザック・スナイダー監督)が、11月23日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開。ついにDCコミックスでも某チームに対抗するジャスティス・リーグを旗揚げ! 前半は、そのメンバー集めにバットマンことブルース・ウェインとワンダーウーマンことダイアナ・プリンスが奔走。後半は、今作のビラン(悪役)、ステッペンウルフを相手にジャスティス・リーグのデビュー戦が繰り広げられる。
前作「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」(2016年)で命を落としたスーパーマン。彼亡き後、各地で犯罪が多発。それに追い打ちをかけるように、暗黒惑星アポコリプスから、強大な力を持つステッペンウルフ(声:キアラン・ハインズさん)がやって来る。1人では太刀打ちできないと踏んだバットマン(ベン・アフレックさん)は、ワンダーウーマン(ガル・ガドットさん)と共に、超高速で動くことができるフラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラーさん)、半分人間・半分アトランティス人のアクアマンことアーサー・カリー(ジェイソン・モモアさん)、サイボーグことビクター・ストーン(レイ・フィッシャーさん)といった超人をスカウトし、「ジャスティス・リーグ」を結成する……というストーリー。
おちゃめでテンション高めのフラッシュ、一見クールだが実は結構寂しがり屋のアクアマン、自分の体になじめず引きこもりがちのサイボーグという、強過ぎる個性ゆえに時に反発し合う彼らを、温かい愛情でまとめあげるのがワンダーウーマンだ。
彼女が彼らの母親的存在なら、バットマンは父親的存在。今回は、そういったメンバーの紹介と役割説明に重きが置かれている。
スナイダー監督らしく、ダイナミックかつ痛快なアクションシーンは健在。今後仲間が増えていくのか、どんな敵とどんな戦いが繰り広げられていくのか興味は尽きない。次作につながる伏線もしっかり張られ、「あれ、このキャラクターって……!?」と好奇心をかき立てられる映像が用意されているので、エンドロールが終わるまで席を立たないように。(りんたいこ/フリーライター)
「覆面系ノイズ」中条あやみ&志尊淳らがバンドメンバーに 音楽と恋の青春二重奏
モデルで女優の中条あやみさん主演の映画「覆面系ノイズ」(三木康一郎監督)が、11月25日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。2013年から「花とゆめ」(白泉社)で連載されている福山リョウコさんのマンガが原作。幼い頃に出会って別れた幼なじみ2人との再会を信じて歌い続けていたヒロインが高校生になって再会を果たし、その2人との恋と友情を、音楽を交えた物語で描く。
高校2年生のニノこと有栖川仁乃(中条さん)は、子供のころ、何をするのも一緒だったモモとユズという2人の少年たちと離れ離れになった過去を持つ。ある日、ニノは転校先の学校でユズこと杠花奏(志尊淳さん)と再会。人気覆面バンド「in NO hurry to shout;(通称イノハリ)」のメンバーとなっていたユズは、ニノを新ボーカルとして誘う。一方、ニノはモモこと榊桃(小関裕太さん)のことを思い続け、歌っていればいつか会えると信じていた。オーディション会場でモモらしき人物を見かけ……というストーリー。
イノハリのメンバーとして、特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」やNHK連続テレビ小説「ひよっこ」などに出演した磯村勇斗さんや、注目の若手俳優、杉野遥亮さんらが出演している。
幼なじみ、恋、再会、音楽と、青春ものの王道路線ともいうべきテイストが詰め込まれている。主演の中条さんや志尊さんら若手キャストの熱量と勢いあふれる演技で、青春の甘酸っぱさを呼び覚まされた。
ユズがニノの気持ちを最優先して陰から支えようとする姿が胸にジンと響く。恋愛要素が強い作品だが、演奏シーンも完成度が高く、展開に沿って流れる楽曲がロマンチックさを演出し、ムードを盛り上げる。中条さんの熱唱シーンも見どころだ。(遠藤政樹/フリーライター)
「映画かいけつゾロリ ZZのひみつ」恋も描かれるオリジナル物語 ももクロ・百田が劇場版アニメのヒロインに
人気児童書「かいけつゾロリ」シリーズが原作の劇場版アニメ最新作「映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ」(藤森雅也監督)が11月25日からシネ・リーブル池袋(東京都豊島区)ほかで公開。劇場版アニメ5作目。原作シリーズ30周年記念作で、ゾロリの原点に迫るオリジナルストーリーが描かれる。アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のリーダー、百田夏菜子さんがヒロイン役の声優に初挑戦していることでも話題だ。
「かいけつゾロリ」は、いたずらの王者を目指すキツネのゾロリが、双子イノシシのイシシ&ノシシと冒険を繰り広げる作品で、累計発行部数3500万部を突破している原ゆたかさんの児童書シリーズ。今作はゾロリたちが過去にタイムスリップし、衣装に縫い付けられたトレードマーク「ZZ」の秘密が明かされる……というストーリーだ。
脚本は劇場版アニメ「聲の形」や「夜明け告げるルーのうた」などの吉田玲子さんが担当し、ゾロリの声優は山寺宏一さん、イシシとノシシは愛河里花子さん、くまいもとこさんが務め、ヒロインの若き日のゾロリの母・ゾロリーヌを百田さんが担当する。
意外にも前半はほのかな恋愛描写。キャラクターのいじらしい距離感にドキッとさせられる。安定した山寺さんのゾロリの演技はもちろんだが、ゾロリーヌ役を演じた百田さんのおっとりしつつも積極的かつ大人っぽさも漂うヒロインぶりが、初挑戦とは思えないほどハマっていて、気付けばすっかり恋もアクションもギャグも織り交ぜられたゾロリワールドにハマってしまっていた。
「ゾロリ庵」という名のタイムマシン(?)など、どことなくあの人気SF映画を連想させる描写に遊び心が感じられ、ニヤリとさせられる。ゾロリらだけでなく、“謎のかいじゅう”や登場するメカのデザインも可愛らしく、そういった点にも注目して見てほしい。(河鰭悠太郎/フリーライター)