「孤狼の血」役所広司主演のヤクザ映画 昭和の男たちがしびれるほどカッコいい

役所広司がほえる!白石和彌監督の話題作 映画「孤狼の血」予告編

 俳優の役所広司さん主演の映画「孤狼の血」(白石和彌監督)が5月12日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。暴力団対策法成立前の、広島の架空都市が舞台。ヤクザ同士の抗争と、その間に入り、彼らを取り締まる警察組織が、それぞれの正義と矜持(きょうじ)を賭けて戦う姿を描いている。これまで、「仁義なき戦い」(1973年)をはじめとする数々の傑作ヤクザ映画を世に送り出してきた東映が威信をかけて作っただけあり、かなり暴力的でハード、かつ骨太な作品に仕上がっている。

 昭和63(1988)年、広島県呉原市。暴力団組織が覇権争いにしのぎを削る中、新たに進出してきた五十子(いらこ)会系「加古村組」と、地場の暴力団「尾谷組」の間で抗争が起きようとしていた。そんな中、加古村組のフロント企業の金融会社社員(駿河太郎さん)が失踪。ベテラン刑事の大上(役所さん)と、新人刑事の日岡(松坂桃李さん)は捜査に乗り出すが、やがて事件は、暴力団と警察の血で血を洗う戦いに発展していく……というストーリー。

 情報を取るためなら犯罪まがいのことを平気でやってのける大上役の役所さん。強烈にカッコいいキャラクターだ。その大上に不信感を抱きながらも次第に染まっていく日岡を松坂さんが好演。ほかにも、江口洋介さんや竹野内豊さん、ピエール瀧さん、真木よう子さん、石橋蓮司さんら実力派俳優たちが、それぞれの役を熱演している。

 原作は、柚月裕子さんの同名小説。ややこしい話がみっちり書き込まれたその傑作小説を、「任侠ヘルパー」(2012年)や「日本で一番悪い奴ら」(16年)などの脚本で知られる池上純哉さんが、密度の濃さはそのままに、すっきりとまとめ上げた。

 それに、白石監督が、やり過ぎと思えるほどのバイオレンスやビジュアル映えするシーンを盛り込み、映画らしい作品に仕上げた。「仁義なき戦い」を彷彿(ほうふつ)させるナレーションも心憎い。柚月さん自身、小説「孤狼の血」を書いたきっかけは「仁義なき戦い」にあると公言している。

 最近は、草食系などソフトな男性が好まれるが、今作に登場するのは昭和の硬派な男たちばかり。いってみれば“絶滅危惧種”だが、しびれるほどカッコいい彼らをスクリーンで堪能したい。(りんたいこ/フリーライター)

「ラブ×ドック」吉田羊の初単独主演 鈴木おさむが描くアラフォー女性の悲喜こもごもの恋愛模様

吉田羊、15歳“年下のカレ”からバックハグ、玉木宏とキス寸前…  映画「ラブ×ドック」予告編が公開

 女優の吉田羊さんの初の単独主演映画「ラブ×ドック」(鈴木おさむ監督)が5月11日にTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。今作は、放送作家の鈴木おさむさんの初監督作品となるラブコメディー。仕事は完璧だけど恋愛は失敗続きの、崖っぷちアラフォー独身女性のパティシエ・剛田飛鳥(吉田さん)が遺伝子レベルで恋愛を操作するクリニック「ラブドック」を見つけ、女医の冬木(広末涼子さん)から特別な薬を処方されると……という展開。飛鳥は、吉田鋼太郎さんが演じる“強引でズルい大人のカレ”役の、野村周平さん演じる15歳も年が離れている“ピュアすぎる危険な年下のカレ”、玉木宏さん演じる“肉食オレ様な同世代のカレ”の3人の“運命の相手候補”との悲喜こもごもの恋愛模様が描かれる。

 スイーツショップ「trad」の40歳の人気パティシエ・剛田飛鳥(吉田さん)は人生で成功を収めながらも店で一緒に働くひとまわり以上も年下のパティシエ・花田星矢(野村さん)から突然告白される。それをきっかけに、36歳の時にハマった年上のオーナー(吉田鋼太郎さん)との不倫や、38歳の時に経験した、友人が思いを寄せる整体ジムのトレーナー(玉木さん)との恋など、かつてのつらい恋を思い出す。恋も仕事もすべてが順調だった飛鳥の人生は、35歳を過ぎてから徐々に計算が狂い始めていた。困り果てた飛鳥は「遺伝子検査をすれば恋にまつわることがすべてわかる」という不思議な診療所「ラブドック」を訪れる……というストーリー。

 篠原篤さん、成田凌さん、大久保佳代子さん、音尾琢真さん、唐田えりかさん、男性デュオ「CHEMISTRY(ケミストリー)」の川畑要さんも出演する。主題歌は加藤ミリヤさんの書き下ろしの新曲「ROMANCE」。

 冒頭のナレーションで「ポップコーンでも食べながら気楽に」と言っている通り、映画館の前を通りかかって何の気なしに見ても楽しめるラブコメだ。ポップなタイトルバックや広末さん演じる女医がいる「ラブドック」のピンク色の怪しい室内など随所に海外ドラマのようなおしゃれな雰囲気を差し込んであり、全編ウキウキした気分で見ることができた。3人のお相手候補はそれぞれ問題を抱えているが、そんな障害を乗り越えるのも恋愛の楽しさでもある。ラストは意外な展開が待ち受けているため、最後まで目が離せない。さて、あなたは年上との不倫、友達の彼氏、年下の後輩のどのシチュエーションがお好み?(細田尚子/MANTAN)

「蝶の眠り」中山美穂5年ぶり主演作 美しいロケ地に目を奪われる大人のラブストーリー

中山美穂が主演 映画「蝶の眠り」予告編

 女優の中山美穂さんが5年ぶりに主演した映画「蝶の眠り」(チョン・ジェウン監督)が5月12日から角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。韓国映画「子猫をお願い」(2001年)のチョン監督が脚本も手がけた。中山さん演じる遺伝性のアルツハイマー病に侵されている売れっ子小説家と、韓国ドラマ「コーヒープリンス1号店」(07年)で知られるキム・ジェウクさんが演じる韓国人留学生との年齢や国籍を超えた大人のラブストーリーだ。

 売れっ子小説家の松村涼子(中山さん)は遺伝性のアルツハイマー病に侵されていることを知り、“魂の死”を迎える前に何かをやり遂げようと、大学講師の仕事を始める。ある日、大学の近くの居酒屋で韓国人留学生のチャネ(キムさん)と出会い、成り行きでチャネは涼子の執筆活動を手伝うことになる。作業を進めるうち、2人は徐々に引かれ合うが、アルツハイマー病は進行し、涼子はチャネとの関係を清算しようとする……というストーリー。石橋杏奈さん、勝村政信さん、菅田俊さん、眞島秀和さん、澁谷麻美さん、永瀬正敏さんらも出演。新垣隆さんが音楽監督を務めている。

 ドキュメンタリー映画「語る建築家」(2012年、日本未公開)など、建築ドキュメンタリーの分野で高い評価を得ているというチョン監督。今作はすべて日本で撮影されたというが、小説家の涼子の住む家や大学の校舎など、登場するロケ地は雰囲気のある建物であふれており、つい目を奪われる。特に、年代物だがモダンで趣のある涼子の家は、埼玉県所沢市にある建築家の阿部勤さんの邸宅をそのまま利用して撮影されたという。大きな窓に緑があふれるおしゃれな空間の中で繰り広げられる文学的なせりふのやりとり。アルツハイマー病という悲劇をはらみながらも、美しい愛の世界に引き込まれた。

 中山さんが主演した95年の日本映画「Love Letter」(岩井俊二監督)は、韓国でも非常に人気があり、チョン監督も同作を見て、中山さんとのタッグを熱望していたという。そんなチョン監督の熱い思いに中山さんが見事に応えた、心に残るラブストーリーだ。(細田尚子/MANTAN)

「四月の永い夢」朝倉あきが恋人の死の喪失感から解放されるヒロインに

朝倉あきが主演 映画「四月の永い夢」予告編

 故・高畑勲監督の遺作「かぐや姫の物語」(2013年)のヒロインの声で知られる女優、朝倉あきさん主演の映画「四月の永い夢」(中川龍太郎監督)が、5月12日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで公開。恋人の死後、時間が止まったままの27歳のヒロインが、新たな出会いや人々との交流を通じて再び前へ踏み出すまでを描いている。2017年のモスクワ国際映画祭で、国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞という快挙を成し遂げた。

 3年前に恋人を亡くし、以来、時間が止まったままの滝本初海(朝倉さん)の元に、ある日、恋人が生前したためた手紙が恋人の実家から届く。それがきっかけで、かつての教え子(川崎ゆり子さん)との再会や、染物工場で働く青年(三浦貴大さん)からの告白で、初海の心は少しずつ喪失感から解放されていく……というストーリー。志賀廣太郎さん、高橋惠子さんらも出演している。

 朝倉さんの力みの無い表情と演技が、見ていてなんとも心地良い。相手役の三浦さんも、朴訥(ぼくとつ)とした若者役が似合っている。2人の醸し出す素朴な空気が、すっと心に入ってくる。花火、日本手ぬぐい、浴衣、銭湯、旧式ラジオに扇風機、そういった懐かしい香りのする品々が心地良さを後押しする。

 脚本も手掛けた中川監督は詩人としても活動している。そのためだろうか、余白……詩や小説でいうところの行間を、スクリーンに残しているように感じる。同時に咲き誇る菜の花と桜の花、早朝の田んぼや田舎道、新緑がまぶしい森の中……いずれも余白がぜいたくに取られていて、それは大スクリーンで見てこそ引き立つ。

 花火大会の帰り道、音楽を聴きながら歩く初海を横からとらえた映像は、足取りから初海の高揚感が伝わってきて、見ているこちらまで笑顔がこぼれる。ストーリーも映像も決して派手ではないが、スクリーンで見るからこそ感じることができる作品だ。(りんたいこ/フリーライター)

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