「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」ソロの若き日を西部劇とロックテイストで描く
大ヒットSF映画「スター・ウォーズ」シリーズの中でもとりわけ人気の高いキャラクター、ハン・ソロの若き日を描く「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(ロン・ハワード監督)が、6月29日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開。ハンの生い立ち、名前の由来、チューバッカや愛機ミレニアム・ファルコン号との出会いなど、彼の知られざる過去が明かされていく……。
銀河帝国が支配を強め暗雲が立ち込める時代。惑星コレリアで生まれ育ったハン(オールデン・エアエンライクさん)に家族はいない。唯一心を許せるのは、共にスラムで育ったキーラ(エミリア・クラークさん)だけだった。今の生活から抜け出したいハンとキーラは、ある日、故郷からの脱出を試みるが……というストーリー。
ハンを、人生を懸けるだけの価値ある冒険に導くトバイアス・ベケットをウディ・ハレルソンさん、ハンとは浅からぬ因縁を持つことになるランド・カルリジアンをドナルド・グローバーさんが演じている。ランドの相棒の女性型ドロイド「L3-37」も登場する。
「スター・ウォーズ」シリーズが黒澤明監督の映画からインスピレーションを得ていることは周知の事実だ。来日したハワード監督によると、今回はそこに「スティーブ・マックィーンの『ブリット』(1968年)のような西部劇の匂いがするアメリカンクライム(犯罪)ものと、米国70年代のロックンロール的な感覚、そして初期の『スター・ウォーズ』の要素」をミックスさせたという。その言葉通りの手に汗握るチェイスシーンやワクワクさせられる活劇シーンが目白押しだ。
正直なところ、映画を見る前はハリソン・フォードさんと似ていないと思ったハン役のエアエンライクさん。しかし、やんちゃな雰囲気や、片方の口角を上げた笑い方、さらに、無鉄砲な行動の数々を見ているうちに、いつしか違和感はなくなっていた。ヨーナス・スオタモさんが演じるチューバッカの、190歳らしい(?)若さあふれる身のこなしも必見。師弟関係は「スター・ウォーズ」シリーズを貫く太い軸の一つ。ハンがベケットから何を学ぶかにも注目だ。(りんたいこ/フリーライター)
「パンク侍、斬られて候」町田康×宮藤官九郎×石井岳龍が放つ時代劇 キャストの個性光る快作
綾野剛さん主演の映画「パンク侍、斬られて候」(石井岳龍監督)が、6月30日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。芥川賞作家・町田康さんの小説を原作に、宮藤官九郎さんが脚本を書いた。江戸時代、ちょっといい加減な超人的剣客がまいた種によって起こる騒動を、テンポよくパワフルな展開で描いた娯楽大作。綾野さんのほか、北川景子さん、東出昌大さん、染谷将太さん、浅野忠信さん、豊川悦司さん、永瀬正敏さんら豪華キャストが個性的なキャラクターに扮(ふん)し、生き生きとしたせりふ回しで大いに笑わせてくれる。
超人的な剣客の掛十之進(綾野さん)は、巡礼の物乞いを斬りつける。掛が言うには「この土地に災いをもたらすから」という理由だったのだが……という展開。
綾野さんと石井監督は「シャニダールの花」(2013年)以来、2作目のタッグとなる。アクションも激しく、難しいキャラクターに挑んだ。村上淳さん、若葉竜也さん、渋川清彦さんらも出演。國村隼さんと近藤公園さんが、劇中で猿回し芸に挑戦している。宗教団体の元幹部を演じた浅野さんが、せりふなしで強烈な印象を残し、猿の将軍を演じた永瀬さんの特殊メークもインパクト大だ。
町田さん×宮藤さん×石井監督という、天才トリオの組み合わせで、パンクの最上級作品に仕上がった。現代言葉が飛び交う時代劇を、アクションあり、コメディーあり、ラブストーリーあり……と、さまざまな味つけで展開している。豪華キャストがひしめくだけでなく、頭にこびり付くくらいの振り切った演技が、摩訶不思議な世界へ観客をいざなう。テキトーな主人公が、テキトーを正当化するため、口達者に周囲を巻き込んでいくさまが、現代社会の写し絵となって、観客にさまざまなものを問い掛けてくる。
ド迫力の猿との合戦シーンなどの特撮は、石井監督と30年以上の付き合いのある「シン・ゴジラ」(16年)の尾上克郎さんが担当した。猿1億匹と人間3000人がワンカット内に映り込んだ壮大な映像。キャラクター・衣装デザインに「銀魂」(17年)の澤田石和寛さんら、スタッフには映画界のすご腕が集まり、登場人物の個性を際立たせている。
主題歌は、日本映画での公式な使用は初めてという英ロックバンド「セックス・ピストルズ」の「アナーキー・イン・ザ・U.K.」が採用された。エンディング曲は、宮藤さんが脚本を手がけたテレビドラマ「ゆとりですがなにか」(16年)でもおなじみの4人組ロックバンド「感覚ピエロ」が担当している。(キョーコ/フリーライター)
「宇宙戦隊キュウレンジャー VS スペース・スクワッド」キュウレンジャー同士が激突⁉
「宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド」(坂本浩一監督)が6月30日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開。宇宙刑事ギャバンを隊長に結成されたヒーローユニット「スペース・スクワッド」が活躍するVシネマシリーズの第3弾。今年2月に放送を終えた「宇宙戦隊キュウレンジャー」の世界を舞台に、ギャバン、シャイダーらが共演する。ドン・アルマゲとの激闘から4年。キュウレンジャーたちは平和な日々を送っていた。ハミィ(大久保桜子さん)がリベリオンを襲撃し、新たに開発された「ネオキュータマ」を盗み出し、宇宙連邦大統領のツルギ(南圭介さん)から全宇宙に指名手配されてしまう。仲間を信じない行動に激昂したラッキー(岐洲匠さん)はツルギらと対立。そこへ、十文字撃/宇宙刑事ギャバン(石垣佑磨さん)と烏丸舟/宇宙刑事シャイダー(岩永洋昭さん)が宇宙を越えてやって来る……というストーリー。
最も注目したいのはキュウレンジャー同士が激突するシーンだ。2人のレッドが繰り広げるアクションは迫力満点で、仲間を巡ってぶつかるだけにずしんと心に響くものがある。その他のメンバーたちの対決シーンもあり、思わずハラハラしてしまうだろう。
スペース・スクワッドの隊長としてギャバンがさまざまなヒーローをスカウトして戦う経緯も胸アツ。キュウレンジャーのテレビシリーズ第18話が、回想シーンとして効果的に使われているのもうれしい。戦隊ヒーローとしての予定調和を、いい意味で裏切る演出や展開にうならされた。ショウ・ロンポー/リュウコマンダー役の神谷浩史さんのカメオ出演も見逃せない。(遠藤政樹/フリーライター)