「チワワちゃん」岡崎京子のマンガを門脇麦、成田凌らで映画化 刹那、孤独…青春の普遍を感じ
岡崎京子さんの短編マンガが原作の「チワワちゃん」(二宮健監督)が、1月18日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開。門脇麦さん、成田凌さん、村上虹郎さん、玉城ティナさんら若手実力派が集結。オーディションで選ばれた新人、吉田志織さんが看護学校生のチワワちゃんを演じる。若さの刹那(せつな)や孤独といった「青春の普遍」が心に突き刺さる群像劇だ。
1994年に発表された岡崎さんの同名短編マンガを、現代に舞台を移して映画化した。東京で夜な夜な集まる若者グループの一人、チワワちゃん(吉田さん)が東京湾でバラバラ殺人事件の被害者として発見される。ミキ(門脇さん)は、そこで初めて彼女の本名を知る。チワワをしのぶために元恋人のヨシダ(成田さん)、親友だったユミ(玉城さん)、チワワを好きだったナガイ(村上さん)ら仲間たちが集まるが、誰一人、彼女の素性を知らず、記憶の中の彼女は人それぞれバラバラだった……というストーリー。
「ここは退屈迎えに来て」(18年)や今年公開予定の「さよならくちびる」など、共演が多い門脇さんと成田さんの息はピッタリ。チワワに対する複雑な思いとミキの成長を、門脇さんが繊細に演じている。新人の吉田さんが、アイドル的な存在のチワワのミステリアスな魅力を存分に表現している。今後の活躍が楽しみだ。ミキとチワワのコントラストも鮮やか。脇を栗山千明さんや浅野忠信さんらが固めている。
恋愛、嫉妬、お金、名声……欲望のまま生きる青春の狂騒を、前半はポップにテンポよく、心臓の鼓動のようなリズムで描き出した。まるで青春の真っただ中にいるような楽しさで駆け抜けた後、その宴が終わりを告げる。チワワちゃんとは、一体何者だったのか……登場人物たちについた傷が、生々しい痛みとして肌身で感じられる。そこには大人になる手前の普遍的な感情があり、同世代の共感と、大人たちの忘れていた記憶を呼び起こしてくれそうだ。
25年前の作品を、SNSが普及した現代の物語にアップデートしたのは、桜井ユキさんと高橋一生さんが共演した「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY」(17年)で商業映画デビューを果たした1991年生まれの新鋭、二宮監督だ。主題歌は「Have a Nice Day!(ハバナイ!)」の「僕らの時代」。挿入歌は、UKバンド「Pale Waves」の「Television Romance」。この曲に乗って、チワワが踊るシーンが楽しい。(キョーコ/フリーライター)
「闇の歯車」瑛太と橋爪功の緊張感あふれるシーン 藤沢周平のサスペンス時代劇限定上映
俳優の瑛太さん主演の時代劇「闇の歯車」(山下智彦監督)が1月19日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで期間限定上映。原作は藤沢周平の同名サスペンス時代劇長編。一獲千金の夢を見て現金強奪に手を染める男たちの姿が描かれている。主人公の町人・佐之助を演じる瑛太さんと、謎の男・伊兵衛を演じる橋爪功さんの緊張感あふれるやり取りや対峙(たいじ)シーンには思わず引き込まれる。
江戸・深川が舞台。闇の世界で日々の糧を得ていた町人・佐之助は、行きつけの酒亭おかめで謎の男・伊兵衛からもうけ話の誘いを受ける。その場では席を蹴るが、ふとしたきっかけで一緒に暮らすことになった女性、おくみとの未来に希望を抱く佐之助は、伊兵衛の誘いに乗ることを決意。伊兵衛のもうけ話は、さる商家への押し込みで、仲間は伊兵衛同様、同じ酒亭でいつも顔を合わせていながら話したことのない男たちだった。佐之助らは、魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめくといわれる逢魔が刻(おうまがとき)に犯罪を決行するが……というストーリー。
時代劇専門チャンネルの開局20周年記念作。全国5大都市を中心に期間限定上映されるほか、同チャンネルで2月9日午後8時に放送される。緒形直人さん、大地康雄さん、中村蒼さん、蓮佛美沙子さん、高橋和也さん、石橋静河さんらも出演。
時代劇で見慣れた義理人情ではなく、サスペンス色が濃い。裏社会で生きるが情にもろい一面もある佐之助と、物腰柔らかだが老獪(ろうかい)で時折鋭い目つきを見せる伊兵衛。瑛太さんの時代劇といえば昨年の大河ドラマ「西郷どん」での大久保一蔵役が記憶に新しい。今回は町人役だが、たたずまいと表情で孤独と悲しみを抱える佐之助を見事に演じている。
佐之助と伊兵衛以外の3人も、無骨な浪人に気弱な若旦那、前科のある酒好きな老人……と皆個性的だ。犯罪に手を染める背景や抱えている問題もそれぞれ描かれているため、押し込みの後、一人一人の運命が狂っていく姿には胸が痛くなった。(河鰭悠太郎/フリーライター)