「十二人の死にたい子どもたち」 杉咲花、新田真剣佑、橋本環奈ら若手12人が繰り広げる密室サスペンス
「天地明察」などで知られる作家、冲方丁さんの小説を映画化した「十二人の死にたい子どもたち」(堤幸彦監督)が、1月25日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開。12人の子供たちを演じるのは、杉咲花さん、新田真剣佑さん、北村匠海さん、高杉真宙さん、黒島結菜さん、橋本環奈さんと勢いのある若手俳優たち。オーディションで選ばれた6人が加わり、密室でのサスペンス劇が展開する。
その日、廃病院に子供12人が集まって来た。目的は集団自殺。ところが、予定の12人がそろったと思われた時、主催者サトシ(高杉さん)が現れる。てっきり、既にベッドに横たわる死体で12人になると思っていた11人は仰天する。ならばこの死体はいったい誰なのか? この中の誰が殺したのか? だとしたら自分も殺されるのか? 12人は安心して自殺するために、死体の謎を解き明かすことにする……。ほかに吉川愛さん、萩原利久さん、渕野右登さん、坂東龍汰さん、古川琴音さん、竹内愛紗さんが出演する。
死に場所を求めて集まったにもかかわらず、自分も殺されるのではないかとおびえる矛盾した子供たちの考えには首をひねった。
でも、犯人捜しを続ける中でそれぞれの心の闇が露呈していく過程は、実にスリリングだ。自殺の理由が深刻な者。あきれるほど軽い者。当初、本音が見えないためにのっぺらぼうだった12人の顔は、言葉を重ねるにつれ輪郭がはっきりしていく。
高度な知性の持ち主で、面倒くさい論理を振りかざし、自分の意にそぐわない人間を論破していくアンリ役の杉咲さん、卑屈さがどんどんあらわになっていくメイコ役の黒島さんら、それぞれ思春期特有の心の揺れを表現した俳優12人の絶妙なアンサンブルに目がくぎ付けになった。
物語が進むにつれてパズルのピースがはまっていく感じが心地いい。原作を読んだ時に困惑させられた複雑な描写も、映像化されたことでスムーズに理解でき、なるほどそういうことかと膝を打った。映画の最後に、12人の素顔が垣間見える映像が流れる。その趣向は心憎く、改めて映画の力に感じ入った。(りんたいこ/フリーライター)
「愛唄 -約束のナクヒト-」 横浜流星、清原果耶、飯島寛騎で命を題材にした青春ストーリー
4人組ボーカルグループ「GReeeeN」の楽曲を題材にした映画第2弾「愛唄 -約束のナクヒト-」(川村泰祐監督)が1月25日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。主人公の野宮透(トオル)を「烈車戦隊トッキュウジャー」(2014~15年)に出演後、めきめきと頭角を現している横浜流星さん、ヒロインの伊藤凪を若手最注目株の清原果耶さん、トオルの旧友の元バンドマン・坂本龍也を「仮面ライダーエグゼイド」(16~17年)の飯島寛騎さんと、旬な若手俳優が顔をそろえ、みずみずしい演技を披露している。脚本家の清水匡さんと共にGReeeeN自身が脚本を担当。「愛唄」をモチーフに、命を題材にした青春ラブストーリーが心に突き刺さる。
今作は、17年公開の「キセキ -あの日のソビト-」(兼重淳監督)に続く第2弾。他人を夢中になるほど好きになったこともなく大人になってしまったトオル(横浜さん)が、自分の人生のタイムリミットを突然告げられる。そんなとき、元バンドマンの旧友・龍也(飯島さん)と再会、そして、運命の少女・凪(清原さん)と出会い、生きることの意味を考えながら成長していく青春ストーリー。成海璃子さん、財前直見さん、富田靖子さん、中山美穂さん、中村ゆりさん、野間口徹さん、奥野瑛太さんらが出演している。
副題の「ナクヒト」とは“泣く人”の意味で、涙するほど全力な人のことを指すGReeeeNによる造語。トオルと凪が命のきらめきを必死で探し求める様子、そんなトオルを全力で励ます龍也の姿には、期せずして涙がこぼれた。清原さんは、同時期に公開する「デイアンドナイト」(26日公開)にも物語の鍵を握る不幸な生い立ちの少女を演じているが、今作の幼い頃から病気がちな少女を演じる際には、はかなげだが力強さも感じさせる絶妙な表情を見せており、その才能には驚かされた。
公式サイトなどで公開された特別映像では、横浜さん、飯島さん、清原さんの3人が「愛唄」のオリジナルバージョンを歌っており、めったに聴けない3人の歌声やメーキング映像、インタビューなども収録されており、本編を見た後でも、見る前でも作品を多角的に楽しむことができる。(細田尚子/MANTAN)
「デイアンドナイト」 山田孝之プロデュース、鍵を握る少女に清原果耶 善悪を考えさせられる力作
俳優の山田孝之さんが初の全面プロデュースに徹した「デイアンドナイト」(藤井道人監督)が、1月26日からシネマート新宿(東京都新宿区)ほかで公開。長編映画初主演の阿部進之介さんが、自身の企画を藤井監督に打診したことから作られた映画。正義とは、悪とは、その境目はどこなのか、など深く考えさせられる。
地方にある町工場の社長が死んだ。東京の居酒屋で働いていた息子の明石幸次(阿部さん)は、訃報で帰郷する。父の死の真相を探りながら、父の遺(のこ)した負債のために金策に走る明石の前に、ある日、児童養護施設のオーナー、北村(安藤政信さん)が現れる。北村の計らいで施設の厨房(ちゅうぼう)を任された明石は、北村が孤児たちを養うために非合法な手段で金を稼いでいることを知り……。明石が心を通わせる、施設で暮らす少女、奈々を清原果耶さんが演じ、ほかに田中哲司さん、小西真奈美さんらが出演している。山田さんは出ていない。
マンガや小説の映画化が相次ぐ中、脚本は完全オリジナルだ。山田さんが藤井監督、小寺和久さんと共に4年かけて書き上げたという力作。誠実だからこそ善と悪の境界線を踏み越えてしまう明石を、阿部さんが盤石な演技で表現し、心をひりつかせる。山田さんが、その表現力にほれ込んだという清原さんの、透明感と愁いを帯びた表情にも魅了された。
作品のテーマが、心に重くのしかかる。正義を貫こうとした人間が悪に染まらざるを得なくなるという展開は、見ていて身につまされた。たとえそれが悪事でも、得をする人間が多ければ正義になるというのは理不尽極まりないが、今の社会を見回すと、承認せざるを得ない。そんな中にあって、明石が奈々と厨房で交わす言葉が、心にぬくもりをもたらす。とりわけ、明石が奈々に、「誕生日の献立は何がいいか」と尋ねた時のほのぼのとした雰囲気には救われた。(りんたいこ/フリーライター)
「あした世界が終わるとしても」 3DCGの女の子が可愛い! SFアクションに高校生の恋も
アニメ「INGRESS THE ANIMATION(イングレス)」などの櫻木優平監督が手がける劇場版アニメ「あした世界が終わるとしても」が1月25日、新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。3DCGならではのダイナミックなアクションを楽しめるほか、高校生の恋模様が描かれる。
幼い頃に母を亡くして以来、心を閉ざしがちな高校生・狭間真と幼なじみの泉琴莉の前に突然、もう一つの「日本」からもう一人の「僕」が現れる……というストーリー。製作発表の際に公開されたのは新宿で真と琴莉が横断歩道を歩くビジュアルだったため、恋愛もの、胸キュンものなのか……などと勝手に想像していたが、いい意味で裏切られた。
もう一つの日本「日本公国」からレジスタンスのハザマ ジンや少女の姿をした人型兵器・ミコが登場するなどSF色も強いアニメになっている。とはいえ、琴莉に対して煮え切らない態度を取る真にモヤモヤするなど恋愛要素もしっかりある。
「イングレス」と同じく3DCGで描かれたキャラクターも魅力的だ。特に琴莉をはじめとした女性キャラクターはアニメらしさがありながらリアルでもあり、3DCGの女の子がこんなに可愛くなるのか!と驚かされた。
櫻木監督は、岩井俊二監督の「花とアリス殺人事件」や宮崎駿監督の「毛虫のボロ」などでもCGを手がけてきた若手クリエーター。「イングレス」「あした世界」と話題作を連発していることもあり、今後、どんな作品を生み出していくのかも楽しみだ。(小西鉄兵/MANTAN)
「そらのレストラン」 大泉洋主演北海道映画シリーズ第3弾 チーズ職人と仲間たちの絆を明るく描く
大泉洋さん主演の映画「そらのレストラン」(深川栄洋監督)が1月25日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。北海道の牧場で酪農とチーズ工房を営む主人公と仲間たちの絆を描いたハートフルな物語。海に面した広大な土地の美しい風景と豊かな食物の物語に癒やされる。「しあわせのパン」(12年)、「ぶどうのなみだ」(14年)に続く大泉さん主演の北海道映画シリーズの第3弾。
北海道せたな町で酪農を営む設楽亘理(したら・わたる=大泉さん)は、妻のこと絵(本上まなみさん)と娘・潮莉(庄野凛ちゃん)と暮らす。チーズ職人の大谷(小日向文世さん)に師事し、亡き父から引き継いだ牧場でとれる牛乳でチーズ作りに精を出していた。ある日、地元のマルシェに有名シェフの朝田(眞島秀和さん)が現れたことがきっかけで、作物のおいしさを再確認。地元で一日限定のレストランを開くアイデアを思いつく……。
東京から来て牧羊をする青年役に岡田将生さん、亘理の仲間の農家の人々を、マキタスポーツさん、高橋努さん、UFO好きの漁師役を石崎ひゅーいさんが演じている。男同士の無邪気な会話が楽しいシーンを演出。有名シェフを演じる眞島さんもコミカルだ。彼らの交流から、それぞれの人生にとって新しい発見をする。そんな人間関係がすてきに描かれている。
熟成したチーズ、フレッシュな野菜。おいしそうなものを仲間と一緒に分かち合う姿は、生きる幸せそのものだ。青い空と海が広がる大自然の中、ロングショットで人々を捉え、絵画のような美しさを描いたかと思うと、時にカメラは食材に寄り、食欲がそそられる。
フードコーディネーターは、「ぶどうのなみだ」のフードスタイリスト・齋藤亜希さん。フードアドバイザーは「ぶどうのなみだ」に食材コーディネーターで参加し、フランスの山羊チーズ農家に住み込んで修業した経験を持つシェフの塚田宏幸さんが担当した。主題歌は、澤部渡さんのソロプロジェクト「スカート」の書き下ろし曲」「君がいるなら」。
米国の3DCGアニメ「グリンチ」(18年)では主人公グリンチの声を、映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(18年)では難病の主人公を演じるなど、最近は映画に引っ張りだこの大泉洋さんの楽しい雰囲気が、作品全体を明るく引っ張っている。(キョーコ/フリーライター)