「君は月夜に光り輝く」永野芽郁と北村匠海がW主演 光り輝く生き方教えられる
女優の永野芽郁さんと人気グループ「DISH//」のメンバー、北村匠海さんのダブル主演映画「君は月夜に光り輝く」(月川翔監督)が3月15日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開。不治の病に侵されたヒロインと、彼女の願いを「代行体験」する青年が絆を深めていくラブストーリー。ファンタジックな要素を多分に含んだ内容ながら、生きるということ、人を思うということについて、改めて考えさせられる作品だ。
高校生の岡田卓也(北村さん)は、病院に入院中の同級生、渡良瀬まみず(永野さん)に届け物をするために病室を訪れる。まみずは、細胞異常で皮膚が発光する不治の病「発光病」にかかっていた。病院から出られないまみずのために、彼女の願いを代わって実行する「代行体験」をすることになる卓也。やがて2人の間には絆が生まれ、それは恋心に変わっていく。しかし、まみずの病気は進行していき……というストーリー。第23回電撃小説大賞を受賞した佐野徹夜さんの小説を、「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」(2017年)、「響-HIBIKI-」(18年)などで知られる月川監督が映画化した。
優しさのかたまりのような卓也を北村さんが好演。まみずのために手を尽くす卓也が頼もしく見えた。永野さんも「余命ゼロ」のヒロインを愛らしく演じ切り、その屈託ない笑顔は心に深く刻み込まれた。そのほか、甲斐翔真さん、松本穂香さん、今田美桜さん、優香さん、生田智子さん、長谷川京子さん、及川光博さんらが出演する。
スマホを使った、まみずと卓也の遠隔デートや、イヤホンを分け合っての音楽鑑賞など、思春期の少年、少女には胸キュンのシチュエーションが詰め込まれている。一方で、余命を前向きに生きようとするまみずと、彼女を支える卓也の姿には、光り輝く生き方とはかくあるべきと思い知らされた。まみずが卓也に託す最後の代行体験は、私たちへのメッセージでもある。それには大人も胸を突かれるはずだ。(りんたいこ/フリーライター)
「キャプテン・マーベル」マーベル初の女性ヒーロー単独主役 失われた記憶を巡る攻防に目を離せない
米マーベル・スタジオの最新作「キャプテン・マーベル」(アンナ・ボーデン監督、ライアン・フレック監督)が3月15日、TOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開。最強のヒーローチーム「アベンジャーズ」結成前の1995年が舞台。空から降ってきた謎の女性キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソンさん)が、国際平和組織「S.H.I.E.L.D.(シールド)」のエージェント、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソンさん)とタッグを組み、失った記憶の謎に迫り、その秘密を手に入れようとするさまざまな勢力との攻防がサスペンスフルに展開する。「フォトンブラスト」という最強のパワーを駆使し、打ちのめされても何度でも立ち上がる最強ヒロインの姿に元気をもらえる作品だ。
空から降ってきた謎の女性キャプテン・マーベルは、驚異的な能力を持っていたが、身に覚えのない記憶のフラッシュバックに悩まされていた。その記憶に隠されている秘密を、自在に姿を変える正体不明の異星人らが狙っていた。キャプテン・マーベルは、やがて「アベンジャーズ」を結成することになる若き日のニック・フューリーと共に、自らの記憶を巡る戦いに立ち向かっていく……というストーリー。
日本語吹き替え版では、主人公のキャプテン・マーベルを声優で歌手の水樹奈々さんが、その師でエリート・ソルジャーチーム「スターフォース」の司令官を森川智之さんが担当。ほかに日笠陽子さん、安元洋貴さん、日野聡さん、関俊彦さんらが声優を務めている。
マーベル初の女性ヒーロー単独主役の映画だけに、こちらもマーベル初の女性監督、ボーデン監督をはじめ、脚本・ストーリー、製作総指揮、編集、衣装デザインなどに女性クリエーターを起用。主演のラーソンさんが脚本の初稿を受け取った時、「これは女性の視点だとは感じられない、というような警戒すべきことは何もなかった」と振り返っているように、女性の心の動きに沿ったせりふやストーリー展開に、最後まで違和感なく楽しめた。
ニック・フューリーがアイパッチをするきっかけが明かされるほか、若き日の「S.H.I.E.L.D.」のフィル・コールソン役でクラーク・グレッグさんが「アベンジャーズ」(2012年)以来の登場を果たし、フューリーとの絆が生まれる瞬間が描かれるのも、アベンジャーズファンにはうれしいところ。ネタバレを避けるため詳細は語れないが、敵や味方が入り交じってのキャプテン・マーベルの記憶を巡る目まぐるしい攻防に、最後までハラハラ、ドキドキさせられ、スクリーンから目を離せなかった。(細田尚子/MANTAN)
「まく子」西加奈子の小説を映画化 山崎光初主演 父・草なぎ剛との不器用なやりとりが印象的
直木賞作家・西加奈子さんの同名小説を映画化した「まく子」(鶴岡慧子監督)が、3月15日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開。大人になりたくない少年が不思議な少女と出会って成長する姿と、ある奇跡を描いた物語。「真夏の方程式」(2013年)で恭平役を演じた山崎光さんが映画初主演を果たした。思春期のもやもやをみずみずしく演じ切っている。浮気性の父親にふんした草なぎ剛さんとの不器用なやりとりが、印象に残る。
小学5年生のサトシ(山崎さん)は、山あいの温泉街で旅館「あかつき館」を営む両親と暮らしている。母親の明美(須藤理彩さん)は旅館を切り盛りし、父親の光一(草なぎさん)は料理長として働いている。サトシは、大人の体へと成長していく自分に抵抗感、女好きの父親に嫌悪感を抱いていた。ある春の日、旅館の従業員用の寮へ母親と共に引っ越してきたコズエ(新音<にのん>さん)が、サトシのクラスに転入してくる。サトシはその不思議な魅力に引かれていく。ある日、コズエがサトシに秘密を打ち明ける……というストーリー。
NHK朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で松坂桃李さんの子供時代を演じた山崎さんが、14歳(撮影時)で主演デビュー。自身も思春期の真っただ中にあり、リアリティーにあふれる表情で、繊細に演じている。コズエ役の新音さんは、RADWIMPSの「狭心症」のミュージックビデオにも出演したモデルで、大人っぽく謎めいた美少女ぶりで存在感を放っている。つみきみほさん、お笑いコンビ「しずる」の村上純さん、根岸季衣さん、小倉久寛さんらが出演している。
王道の「通過儀礼」を描いている。思春期に差しかかかったサトシの揺れる心情が、リアルでほほ笑ましい。大人になるのが怖いサトシの言葉、一挙手一投足が、10代のものであり、対照的に自分の成長を楽しむコズエに引かれるのも分かる。
サトシが超えるべき相手の父親・光一は、女好きのダメ男だが、演じる草なぎさんが、優しさと色気も兼ね備えた演技で、本当は家族を愛する男であることを繊細な演技で見せてくれる。父親の手で握られたゴツゴツとした握り飯も味わい深い。光一がサトシとどう対峙(たいじ)するのかも見ものだ。登場人物は、不器用に生きる素朴な人間ばかり。すべての人を祝福するかのような美しい奇跡をぜひ見届けてほしい。
主題歌は、高橋優さんが書き下ろした「若気の至り」。群馬県の四万温泉の自然豊かな美しい風景の中でロケをしたという。劇中の砂絵は、鶴岡監督の友人で砂絵アニメーターの佐藤美代さんが手がけた。(キョーコ/フリーライター)