「町田くんの世界」不器用な男子が恋に目覚め… 岩田剛典、戸田恵梨香ら主役級が高校生役で超新人を取り囲む
「舟を編む」(2013年)などで知られる石井裕也監督の新作「町田くんの世界」が、6月7日から丸の内ピカデリー(東京都中央区)ほかで公開される。勉強も運動も苦手だけど、人を愛する才能に長けた男子高校生が、恋を知り、自分と向き合い、周囲に影響を与えるさまをコミカルに映し出す。1000人を超えるオーディションで選ばれた新人の細田佳央太さんと関水渚さんを、池松壮亮さん、岩田剛典さん、前田敦子さん、高畑充希さん、太賀さん、戸田恵梨香さん、佐藤浩市さん、北村有起哉さん、松嶋菜々子さんら主役級俳優陣が包んでパワフルに展開する。
原作は15~18年にマンガ誌「別冊マーガレット」(集英社)で連載され、16年に手塚治虫文化賞新生賞受賞を受賞した安藤ゆきさんの同名マンガ。
町田一(細田さん)は勉強も運動もできず、要領も悪く、携帯電話も持っていない地味な高校生。温かい家族と暮らし、人を愛する才能だけはズバ抜けていた。ある日、授業中にけがをして保健室を訪れると、そこでサボっていた猪原奈々(関水さん)と出会う。不在だった先生の代わりに手当てしてもらった町田くんは、人嫌いの彼女に心を奪われ……というストーリー。
細田さんはこれまで登場人物の幼少期役はあったものの、これが映画初主演。関水さんは17年にCMデビューをしたばかりの新人だ。2人共、「主演は新人で」とは決めていなかった石井監督のハートをつかみ、異例の大抜てきをされた。同じ高校生の役を、岩田さん、高畑さん、前田さん、太賀さんが演じ、リズム感のある芝居で楽しませてくれる。
メガネ男子の町田くんは、とにかく一生懸命。全ての人が好きだが、まだ恋を知らなかった。彼の善行と、不器用な日常、そして愛すべき性格がテンポ良く語られていき、冒頭からワクワクする。
純朴そうな風貌の町田くんと、野性味のある美少女、猪原さんが恋に落ちる瞬間を、不器用男子の視点で見せてくれ、ニヤリとさせられる。その後、恋という、生まれて初めての感情に出合った町田くんが、頭をかきむしり、翻弄(ほんろう)されていき、疲れた大人や友達、周りをどんどん巻き込んでいく。予想のつかない展開、ラストまでパワフルで、スクリーンから目が離せない。
石井監督にとって、初めての少女マンガ原作。新人俳優と主演級俳優とのコラボレーションを、緊張感を持って35ミリフィルムで撮り上げた。町田くんの遅過ぎる走りっぶりがあまりにも面白い。原作にある「50メートルが12秒4」を実写化するため、細田さんは訓練を積んだそう。主題歌は、平井堅さん書き下ろしの「いてもたっても」。(キョーコ/フリーライター)
「アラジン」ウィル・スミスがランプの魔人ジーニーに 現代的アレンジで王女ジャスミンが力強い女性に
日本で1993年公開のディズニー人気アニメーション映画を実写化した「アラジン」(ガイ・リッチー監督)が、6月7日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。原作のストーリーを踏襲しつつ、現代に合わせたアレンジが施された。名曲「ホール・ニュー・ワールド」などが新たなキャストの歌声で披露され、物語の盛り上げに大きく貢献している。
ダイヤモンドの心を持ちながら貧しい暮らしを送る青年アラジン(メナ・マスードさん)は、アグラバー王国の王女ジャスミン(ナオミ・スコットさん)と運命的な出会いをする。アラジンは王国の乗っ取りを企む国務大臣ジャファー(マーワン・ケンザリさん)の甘言につられ、魔法の洞窟(どうくつ)からランプを探してくることに。そのランプから現れた魔人ジーニー(ウィル・スミスさん)は、アラジンに「三つの願いをかなえてあげる」と言うが……というストーリー。
日本語吹き替え版でアラジンの声を担当するのは俳優の中村倫也さん。ジャスミンを女優の木下晴香さん、ジーニーを声優の山寺宏一さん、ジャファーを俳優の北村一輝さんが担当している。
何といっても心をつかまれたのは、ジャスミンの新しいキャラクター像だ。運命の人の出現を待っているだけのお姫様ではなく、民のための国王を目指す力強い女性として描かれている。そのジャスミンが思いのたけを込めて熱唱する新曲「スピーチレス~心の声」は、胸がすくほどの爽快感と感動を与えてくれる。
ジーニーがラップ調にアレンジされた「フレンド・ライク・ミー」を歌い踊る場面は、ラッパーとしても有名なスミスさんの独壇場。洞窟の中でのショーを見ているようだった。
アニメでおなじみの、魔法のじゅうたんに乗ったアラジンとジャスミンのデートシーンは、実写だけにロマンチックさと臨場感が増し、アトラクションに乗っているような気分を味わえた。アクション満載でハラハラドキドキさせられるランプ争奪シーンや、おなじみの曲「アリ王子のお通り」が流れる絢爛(けんらん)豪華なパレードのシーンなど見どころは満載。キャスト総出で歌い、踊る大団円まで、大いに楽しめること請け合いだ。(りんたいこ/フリーライター)
「聖☆おにいさん 第II紀」松山ケンイチ&染谷将太の聖人コンビ再び 山田裕貴も登場!
イエスとブッダの日常を描く人気マンガの実写化作品「聖☆おにいさん 第II紀」(福田雄一監督)が6月6日から立川シネシティ(東京都立川市)ほかで期間限定で順次公開される。俳優の松山ケンイチさんがイエス役、染谷将太さんがブッダ役。住み慣れた東京・立川を飛び出し、パソコンオタクのイエスがずっと行きたかったという聖地の秋葉原で、2人は「奇跡」で笑いを巻き起こす。
原作は、中村光さんがマンガ誌「モーニング・ツー」(講談社)で連載中のマンガ。俳優の山田孝之さんが製作総指揮、映画「銀魂」シリーズ、ドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)などの福田監督がメガホンをとり、脚本も担当した。動画配信サイト「ピッコマTV」などで先行配信されている。
「聖☆おにいさん」は世紀末を無事に乗り越えたブッダ(染谷さん)とイエス・キリスト(松山さん)は、下界でバカンスを取ろうと、東京・立川のアパートでルームシェアを始める。ブッダとイエスの下界への興味は尽きることなく、日々をエンジョイする中でついつい「奇跡」を起こしてしまう……というストーリー。ゲストキャラクターとして、イエスを取り調べする警察官役で山田裕貴さんが出演している。
原作のテイストそのままに、松山さんと染谷さん2人の完成度が高いビジュアルも相まって、どこかアンニュイな空気感が心地良く、自然にクスッとさせられる。そもそも聖人が普通に暮らしているというだけでもシュールなのに、2人がプリクラを撮ったり、インスタ映えを気にしたり、果ては民を導くはずの存在が補導されたりなど、思いっ切り人間らしさを垣間見せ、聖人コンビのドタバタが巻き起こす、心の奥をくすぐるような笑いがクセになる。(遠藤政樹/フリーライター)