「アイネクライネナハトムジーク」伊坂幸太郎の短編集が原作 三浦春馬×多部未華子ら豪華俳優陣で贈る恋愛群像劇
映画「アイネクライネナハトムジーク」(今泉力哉監督)が、9月20日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。原作は伊坂幸太郎さんの連作短編集。男女が出会い、時にすれ違うドラマを、仙台を舞台に描いた恋愛群像劇。三浦春馬さんと多部未華子さんらが共演している。原作完成までに伊坂さんと影響を与え合ったミュージシャンの斉藤和義さんが音楽を担当。斉藤さんは主題歌「小さな夜」も書き下ろした。
マーケティングリサーチ会社で働く佐藤(三浦さん)は、仙台駅前で街頭アンケートをとっていた。誰も立ち止まってくれない中、本間紗季(多部さん)が答えてくれた。2人は付き合うようになり、10年後に佐藤は紗季にプロポーズをするが……。
三浦さんと多部さんは、「君に届け」(2010年)など3度目の共演。佐藤の親友で良きアドバイザーの織田一真役に矢本悠馬さん。その妻、由美役には森絵梨佳さん。そのほか、妻子に逃げられてしまった佐藤の上司、藤間役に原田泰造さん、由美の友人の美奈子役に貫地谷しほりさんが扮(ふん)し、それぞれが愛すべき人に真摯(しんし)に向き合う。恒松祐里さん、萩原利久さん、八木優希さんらフレッシュな顔ぶれも印象を残している。
仙台駅前の大型ビジョンにはボクシングの試合が流されている。真面目そうな男、佐藤と、気立ての良さそうな紗季の出会いの瞬間から、心が温かくなり、応援したくなる。偶然の出会いから、時を重ねることで変化していく愛の形や人間関係。長過ぎた春を過ごしてしまった男女を、三浦さんと多部さんが自然な雰囲気を作りながら、息の合った芝居で見せる。年齢や立場の違う男女数組が登場し、それぞれの事情が細やかに描き込まれる。普通の人々が真面目に頑張っている日常を眺める視線が温かい。
原作は、斉藤さんが「出会い」をテーマにした曲の歌詞を伊坂さんに依頼したことがきっかけとなって生まれたという。今泉監督の「こっぴどい猫」(2012年)を見た伊坂さんが同監督にオファーした。原作では独特の立ち位置だった「斉藤さん」は、ストリートミュージシャンの設定になっている。フォークシンガーのこだまたいちさんが扮(ふん)し、主題歌を弾き語りするシーンもある。(キョーコ/フリーライター)
「見えない目撃者」吉岡里帆が盲目の元警察官に 高杉真宙と事件を追う 手に汗握るスリリングな展開
女優の吉岡里帆さん主演の映画「見えない目撃者」(森淳一監督)が、9月20日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開される。自らの過失で盲目となった元警察官が正義感と洞察力を駆使し、高校生と共に少女誘拐事件を追うサスペンス劇。全編ハラハラし通しで、握りこぶしに力が入ること請け合いだ。
警察官として有望視されていた浜中なつめ(吉岡さん)。しかし、自らの過失で弟を事故死させ、自身も視力を喪失。3年、失意の中から少しずつ回復していたなつめは、自動車とスケボーに乗った高校生の接触事故に遭遇。現場から走り去る車から少女の助けを求める声を聞いたなつめは、事件性を嗅ぎ取り、警察に通報する。しかし警察はまともに取り合ってくれず、やがて捜査は打ち切られる。あきらめ切れないなつめは、事故現場に居合わせた高校生、国崎春馬(高杉真宙さん)を探し出し、一緒に少女の行方を追い始める……。
吉岡さんが、陰鬱さやおびえ、孤独、頭脳明晰(めいせき)で粘り強く調査するなつめを柔軟に表現。弟を死なせてしまったことへの罪悪感と無力感を、少女を救い出すという使命感に昇華させていく様に説得力を持たせている。音に反応した時の表情もとてもうまい。
スマホやSNSといった小道具も効果的に使われている。映画の端々に敷かれた伏線は上手に回収されていく。それらがスリリングな展開とあいまって、ドキドキ感を加速させる。その一方で、一人の女性の再生と、彼女の生き方に触発されていく高校生の成長を描き、ヒューマン作の側面も持たせている。ラストも潔い。
韓国でヒットした映画「BLIND(ブラインド)」(2011年)を、「ミュージアム」(2016年)の脚本家、藤井清美さんと、「重力ピエロ」(2009年)の森監督が、今の日本の文化を考慮して脚色。韓国映画のリメーク「22年目の告白-私が殺人犯です-」(2017年)を成功させた小出真佐樹さんがプロデューサーを務めた。(りんたいこ/フリーライター)
「3人の信長」誰が本物の信長なのか!? TAKAHIRO、市原隼人、岡田義徳のうそつき合戦にハラハラ
信長と今川軍の残党の誇りを懸けた攻防を描く時代劇エンターテインメント「3人の信長」(渡辺啓監督)が、9月20日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。我こそは信長と主張する3人の男を演じるのは、人気グループ「EXILE」のTAKAHIROさん、俳優の市原隼人さんと岡田義徳さん。誰が本物の信長なのか? 3人が心理戦で見る人の心を揺さぶる。
永禄13(1570)年。金ヶ崎の戦いから撤退し、逃げる織田信長の首を、元今川軍の蒲原氏徳(高嶋政宏さん)が狙っていた。廃村に逃げ込んで捕らえられた3人の男(TAKAHIROさん、市原さん、岡田さん)が、それぞれが「信長だ」と主張する。影武者の首を討っては恥になると元今川軍は、本物を見極めようとするが……というストーリー。
TAKAHIROさんは時代劇初挑戦。頭の切れるかぶき者を演じる。市原さんは貫録があって天然な男を、岡田さんがうつけ者でのらりくらりとした男を演じる。それぞれの「らしい信長」を楽しめる。敵役の高嶋さんはさすがの存在感のある芝居を見せている。そのほか、今川義元の元家臣、瀬名信輝役を相島一之さん、蒲原の家来、半兵衛役を前田公輝さん、信長に恨みを抱く戦国大名の妻、朽木ハル役をE-girlsの坂東希さんが演じる。
笑いの中にも、戦国武将の命懸けの生き方や、男同士の絆がしっかりと描き込まれ、最後の最後まで駆け引きが続き、緊張感が継続する。俳優、声優、脚本家と多方面にわたって活躍してきた渡辺啓さんの映画監督デビュー作。信長に関する資料をあさり、言い伝えられているさまざまな信長を3人の男に振り分け、史実と虚実を織り交ぜて脚本を完成させたという。主題歌を、オオカミ頭の5人組ロックバンド「MAN WITH A MISSION」が担当した。(キョーコ/フリーライター)