「仮面病棟」坂口健太郎がピエロの凶悪犯に立ち向かう外科医に ヒロイン永野芽衣を守れるか!?
俳優の坂口健太郎さん主演の映画「仮面病棟」(木村ひさし監督)が、3月6日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開される。ピエロの仮面をつけた凶悪犯に占拠された病院。捕らわれの身となった医師や看護師、入院患者たちに脱出の手立てはあるのか。映画単独初主演の坂口さんは男前の演技が際立つ。ミステリー映画初挑戦の永野芽郁さんが扮(ふん)するヒロインのおびえた表情も新鮮。そこここに仕掛けられた伏線が終盤に向かって回収されていく。そういうことかと納得させられるラストまで、スクリーンにくぎ付けになる!
外科医の速水秀悟(坂口さん)は、先輩医師の小堺司(大谷亮平さん)の代理として、田所病院で一夜限りの当直医をする。身元不明や寝た切りの患者で満床の田所病院だが、問題は起きないはずだった。
ところが、ピエロの仮面をつけた男が、銃で撃たれた女子大生・川崎瞳(永野さん)を人質にとり、1階フロアに現れる。男は近くのコンビニを襲った犯人だった。男は速水や瞳たちを監禁状態にし、院内にたてこもる。速水と瞳は必死に脱出を試みるが……。ほかに内田理央さん、江口のりこさん、朝倉あきさん、高嶋政伸さんらが出演している。
「任侠学園」や「屍人荘の殺人」(共に2019年)の木村監督が、現役医師で作家の知念実希人さんの同名小説(実業之日本社文庫)を映画化。シリアスなストーリーにコミカルな演出をあて、作品にユーモアを持たせるのを得意とする木村監督。今回はそれを封印し、徹底的にシリアス路線で攻めている。
ピエロの正体は? その目的は? 監禁された院長や看護師たちにもそれぞれの思惑がありそうで、観客を疑心暗鬼に陥らせる。その中で目を引いたのは、速水の立ち位置だ。演じる坂口さんは、これまでのソフトなイメージとは一線を画した、たくましく勇敢な男性を好演。瞳を守ろうとする男前の姿に改めてほれ直した。(りんたいこ/フリーライター)
「Fukushima 50」佐藤浩市主演 渡辺謙、吉岡秀隆、安田成美ら出演 イチエフの最前線で日本を救った50人の壮絶な闘い
俳優の佐藤浩市さん主演の映画「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」(若松節朗監督)が、3月6日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで公開される。2011年3月11日、福島第一原子力発電所(イチエフ)を襲った東日本大震災の大津波。その時イチエフ内では何が起きていたのか。現場の作業員50人は、どんな思いで福島を、いや、日本を救おうとしていたのか。海外では「Fukushima50」と呼ばれ英雄視された彼らの壮絶な闘いを真正面から描いた真実の物語だ。
2011年3月11日。巨大地震が起こした大津波でイチエフの全電源が喪失、原子炉を冷やせなくなった。このままでは炉心は溶融してしまう。1・2号機当直長の伊崎利夫(佐藤さん)ら現場の作業員は、自らの身の危険も顧みず、原子炉建屋内に残り、原子炉の制御に奔走する……。
イチエフの所長・吉田昌郎を渡辺謙さんが演じ、吉岡秀隆さん、緒形直人さん、火野正平さん、平田満さん、萩原聖人さん、佐野史郎さん、安田成美さんらが出演する。
当時、新聞やテレビなどのメディア越しに、イチエフで起きていたことは伝わってきていたが、その情報はあくまで断片的で、現場の人々が具体的に何をしていたかまでは分からなかった。
それを今回、ジャーナリスト、門田隆将さんのノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫)を基に時系列で描いたことで、錯綜していた情報がつながり、現場がいかに逼迫(ひっぱく)していたかを改めて思い知らされた。作業に当たった人々の決死の行動に胸が熱くなり、当時、そこまで思い至らなかったことに、国民の一人として申し訳なさでいっぱいになった。今なら断言できる、彼らこそ真のヒーローだと。
メガホンをとった若松監督は「ホワイトアウト」(2000年)、「沈まぬ太陽」(2009年)、「空母いぶき」(2019年)などの作品で知られる。脚本を担当したのは、ドラマ「孤高のメス」(2019年)や「頭取 野崎修平」(2020年)、放送中のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」に参加している前川洋一さん。
主要キャストだけでも40人は下らない。ほかにも地元の人々、米軍人や自衛隊員も登場する。彼らを一つに束ね、バランス良く演出した若松監督の手腕にも感服した。(りんたいこ/フリーライター)
「星屑の町」のんが歌手を夢見るヒロインを好演 人気舞台を映画化 昭和歌謡の熱唱シーンにも注目
女優ののんさん主演の映画「星屑の町」(杉山泰一監督)が3月6日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。1994年の初上演以来25年間愛されてきた舞台「星屑の町」シリーズを映画化した作品。のんさんが行動力にあふれた夢見る田舎娘のヒロインを好演。「新宿の女」をはじめ数々の昭和歌謡を歌い上げる姿も見どころだ。
大手レコード会社社員だった山田修(小宮孝泰さん)ら売れないムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」は、ベテラン歌手のキティ岩城(戸田恵子さん)と地方を回りながら細々と活動を続けていた。そんなある日、ハローナイツのメンバーは東北の田舎町で歌手になることを夢見ている久間部愛(のんさん)と出会う。愛はハローナイツに入りたいと直訴し、大騒動の末に加入。あっという間に人気に火が付き、スポットライトを浴びるまでになるが……。
ハローナイツのメンバーとしてラサール石井さん、渡辺哲さん、有薗芳記さん、でんでんさん、大平サブローさん、愛の祖父・六造役で柄本明さんも出演する。
かつて岩手・北三陸の田舎町が舞台のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」でヒロインを好演したのんさんが、東北の田舎町で歌手を夢見る活発なヒロインを演じている。なまりが強く、どこかあか抜けないが、純粋で行動力は人一倍ある愛を生き生きと演じ、そのハマりっぷりにうならされる。
のんさんが藤圭子さんの「新宿の女」などの昭和歌謡の名曲を情感たっぷりに熱唱する歌声やギター演奏、レトロなワンピース姿などにも注目だ。
ハローナイツのメンバーを演じるベテランキャストの軽妙な掛け合いにクスリとさせられ、本音をむき出しにした衝突に人生の悲哀を感じ……と笑いあり涙ありのストーリーは、派手さはないが温かく、鑑賞後はどこかすがすがしい気持ちにもなった。(河鰭悠太郎/フリーライター)
「劇場版 おいしい給食 Final Battle」“甘利田”市原隼人が挑む給食バトルの行方は
俳優の市原隼人さん主演の映画「劇場版 おいしい給食 Final Battle」(綾部真弥監督)が3月6日からユナイテッド・シネマ豊洲(東京都江東区)ほかで公開される。1980年代の中学校を舞台に、給食マニアの教師・甘利田幸男(市原さん)と生徒の神野ゴウ(佐藤大志さん)が、「どちらがよりおいしく給食を食べるか」というバトルを繰り広げるコメディー。テレビ神奈川ほかで昨年10月期にテレビドラマが放送された。映画では、学校から給食がなくなるとの知らせを聞いた甘利田とゴウが奮闘する姿を描く。
給食を愛してやまない教師の甘利田(市原さん)は、同じく給食マニアの生徒・神野ゴウ(佐藤さん)と給食バトルを繰り広げていた。ある日、学校から給食がなくなるという衝撃のニュースが飛び込む。給食廃止を阻止すべく、ゴウは“給食改革”を起こすため生徒会選挙への出馬を決意。甘利田も給食を守るために立ち上がる……。
女優の武田玲奈さん、人気ユニット「BOYS AND MEN」(ボイメン)の辻本達規さん、水野勝さんらも出演。そのほか直江喜一さん、いとうまい子さんら学園ドラマファンに刺さるキャストも出演している。
ドラマシリーズでも市原さん演じる甘利田先生のハイテンションぶりがすごかったが、劇場版では切れ味がさらに増した。振り切った演技には大笑いさせられる。
そのライバル、佐藤さん演じるゴウもまた絶妙。映画ではドラマからの成長も感じられる一方で、甘利田とは教師と生徒の間柄ということを思い起こさせる描写もあり感慨深い。武田さん演じる御園と甘利田の関係性を描いたシーンが甘酸っぱく、ドキドキさせられる。
ドラマを見ていた人は変わらぬノリと集大成的な物語を堪能でき、映画で初めて見る人も甘利田らのキャラが立ちまくっているので、思い切り楽しめる。(遠藤政樹/フリーライター)