こうの史代さんのマンガが原作の劇場版アニメ「この世界の片隅に」(片渕須直監督)に新規カットを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が12月20日に公開されることが分かった。3月29日、テアトル新宿(東京都新宿区)で開催された同作のイベントで発表された。イベントで、片渕監督は「実はまだ、絶賛製作中のため『完成しました!』というご報告ができず、本当に気合と根性がないとこの場に立てないのですが、今日はよろしくお願いします」とあいさつした。
同作は2018年7月に、同年12月に公開することを発表したが、製作に想定以上の時間がかかったことから、延期されることになった。片渕監督は「頑張ればなんとかなるという意気込みがあった。でも少数精鋭で製作をしているため物理的な問題もあり、完成がかなわなかった。楽しみにしてくれていた皆様には本当に申し訳ない思いがありますが、せっかく前作を気に入っていただいた皆様に、急いで変なものをお見せするわけにはいかないと思い、このような流れになってしまいました」と説明した。
イベントでは特報も公開。特報には、リンとともに桜の木に登るすずや、りんどうの茶わんを眺めるすず、雪の中を白い息を吐きながら懸命に歩くすずなどが描かれている。
「この世界の片隅に」は、「漫画アクション」(双葉社)で連載され、09年に「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門優秀賞を受賞したこうのさんのマンガが原作。戦時中、広島・呉に嫁いだ18歳のすずの生活が、戦争の激化によって崩れていく様子が描かれた。劇場版アニメは16年11月に公開され、いわゆる“単館系”の作品だったが、異例のヒットを記録した。日本アカデミー賞で最優秀アニメーション作品賞に選ばれたほか、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門審査員賞を受賞した。