俳優の柳楽優弥さん、田中泯さんがダブル主演を務める映画「HOKUSAI」(橋本一監督、5月28日公開)の本編映像が5月27日、公開された。武士という身分を隠しながら筆を取る戯曲者・柳亭種彦(永山瑛太さん)に、北斎(田中さん)が自身の絵に対する熱い胸の内を明かすシーンとなっている。
宴会中、浮かない顔をしていた種彦が家の外へ出て物思いにふけっていると北斎の姿が。「今日は冷えますね。」と他愛もない会話をしようとする種彦に「(戯曲を書くのを)やめるんか?」と北斎が切り込むと、種彦は表現の自由を弾圧する幕府によって筆を折ろうかと迷っていることを告げる。続けて「先生は、絵のためにすべてを捨てられますか? お栄さんもお弟子さんたちも何もかも」と問いかけると、北斎は一点の曇りもない真っすぐな目を種彦に向けて「いつかは……いつかは人に指図されねえで生きていける世の中がくる。生きてるうちにそんな世の中がみてえ!」と種彦の肩をつかみ力強い口調で語り、「わたくしもです」と種彦も北斎の言葉にうなずく。
北斎の生きた江戸時代はさまざまな庶民文化が花開いた時代だった一方、浮世絵や種彦が書く戯曲などは、風紀を乱すものとして幕府からの厳しい処罰を受ける対象となった。劇中でも北斎のライバルでもあった歌麿が処罰されたり、版元・蔦屋重三郎は財産を没収される。そんな中、本来ならば芸術を取り締まる立場である武士の生まれの種彦は、身分を隠しながら命を懸けて戯曲制作に情熱を注ぐ。しかし、厳しい取り締まりのために一度は筆を折ることも考える種彦でしたが、北斎が全身全霊を懸け、絵に打ち込む姿に共鳴し、表現の自由を弾圧する幕府にあらがうように戯曲を書き続け、己の信念を最後まで貫いていくことになる。
映画は、幕府に風俗が厳しく取り締まられていた江戸時代後期を舞台に、「冨嶽三十六景」などで知られる江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の生涯を描く。北斎の青年期を柳楽さん、老年期を田中さんが演じた。