BS11の報道番組「ウイークリーニュースONZE」のビジネス情報コーナー「BizBuz」では、「復興の光を放て!福島・川内村の工場」と題して、東京電力福島第1原発から30キロ圏内にある福島県川内村から新たな技術を発信し、復興への希望を灯す工場を紹介した。
エネルギー関連商品開発会社「コドモエナジー」(本社・大阪市旭区)は2009年、有田焼の釉薬の技術を応用し、蓄光顔料を釉薬として焼成した磁器素材「ルナウェア」を開発。水や摩耗、熱などに弱い蓄光顔料ががガラス層で覆われているため、ほぼ半永久的に劣化することなく、夜間や停電時の屋内などで長時間発光するという。有田焼という日本の伝統工芸の技術を使い、消防庁が定める蓄光式誘導標識規格で最高ランクの発光力を実現したことが評価され、2012年の日本ものづくり大賞・内閣総理大臣賞を受賞した。
佐賀県有田市でルナウェアを開発した岩本泰典社長は、受賞を機に量産工場の建設を目指し、近畿経済産業局などに相談したところ、福島県川内村を紹介された。同村は東京電力福島第1原発から30キロ圏内にあり、11年の原発事故後、一時は全村避難を余儀なくされ、事故1年後に遠藤雄幸村長が周辺自治体に先駆けて「帰村宣言」を出したが、元々中山間地域で過疎や高齢化の課題を抱え、主力産業である農業も原発事故の風評被害を受けて、復興への道のりは険しい状況だった。
同村では、企業誘致による雇用創出のため、工場団地の整備に取り組み、国・県の震災復興支援制度の利用も進めていた。岩本社長は同年4月に同村を視察、豊かな自然と村人の温かい人柄を知り、自身も阪神大震災を経験したことから、復興の手助けもしたいと進出を決めた。岩本社長は「原発事故という通常の災害以上に困難な状況に追い込まれた川内村で、津波や地震、災害などから人を助けるための防災の製品を生むものづくりを広げていきたい」と話す。
現在約6割が帰村を果たしたが、復興への課題は多いという遠藤村長は「復興もねまだ緒に着いたばかり。働く場所の確保と新たな産業の創出に取り組んでいるが、復興の先にある人口減少にどう対応していくのかというのがもっと深刻。コドモエナジーように新しい企業の進出とともに新しい風、新しい人も受け入れるためのインフラ整理を積極的に行っている。残念だが、震災前には戻らないので、新しい村をクリエイティブしていきたい」と語る。
岩本社長は県外の大学生を招いたり、村民と交流するカフェを建設するなど村に新たな風を吹き込もうとしている。「外の人間を招くことで、村の魅力を村民自身に知ってほしい。工場建設だけでなく、電気料金の補助などさまざま支援を活用して、多くのベンチャーが起業していけば」と復興への思いを語った。コドモエナジーのような“新たな風”を呼び込んでいくことが真の復興につながるのだろう。
2016年3月6日放送
放送時間:BS11毎週日曜日 午後6時00分~6時55分
キャスター:
元村 有希子(毎日新聞編集委員)
田野辺 美鈴
コメンテーター:
山路 徹(ジャーナリスト)
BizBuzコーナー
出演:猪狩 淳一(MANTAN)