「RANMARU 神の舌を持つ男」 向井理主演ドラマの劇場版 事件は舌でなめて解決
俳優の向井理さんの主演映画「RANMARU 神の舌を持つ男」(堤幸彦監督)が12月3日、公開される。“絶対舌感”という特殊能力を持つ蘭丸(向井さん)が、事件を解決するためとはいえ、さまざまな物をなめるシーンには何ともいえない面白さがあり、そんな蘭丸を支える(?)寛治(佐藤二朗さん)と光(木村文乃さん)を合わせた3人の掛け合いが絶妙だ。 「神の舌を持つ男」は今年7月期にTBS系で放送された連続ドラマで、“絶対舌感”を持つ主人公・蘭丸が行く先々で事件に巻き込まれ、その特殊能力を駆使して解決するというコミカルミステリーだ。初の劇場版となる今作は、ドラマで謎の温泉芸者ミヤビに失恋した蘭丸が傷心旅行の途中、ひょんなことからある村の温泉街で働くことになり、またしても事件に遭遇してしまう。ドラマ版から出演の木村さんと佐藤さんに加え、市原隼人さん、木村多江さんらも出演している。 堤監督の構想20年のアイデアを実現したという「神の舌を持つ男」だが、それすらもネタなのではと感じさせるほどコメディーとミステリーが混在し、破天荒すぎる世界観に心揺さぶられる。サスペンス部分がしっかりと構築されているのに、事件解決の糸口は蘭丸がなめることで発見するというシュールさがたまらない。ドラマ版よりも大掛かりな仕掛けと、ふんだんに詰め込まれたミステリーオマージュ、そして意外に骨太さも感じさせてくれる。ちなみに正式タイトルは「RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー!略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編」。3日から丸の内ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」 ストリープが夢見る“音痴”歌手を好演 ヒューは年下のダメ夫と思いきや
名女優のメリル・ストリープさんが伝説の“音痴”歌手を演じた主演映画「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」(スティーブン・フリアーズ監督)が12月1日、公開された。映画は、1944年に音楽の殿堂カーネギーホールでコンサートを開いた富豪の女性フローレンスさんをモチーフにしている。たぶん財産目当てで不倫までしている一見すると年下のダメ夫のシンクレア役を、ヒュー・グラントさんが飄々(ひょうひょう)と演じている姿に注目だ。 伝説として語り継がれてきた実在の“音痴”のソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンスさんが主人公。ニューヨークの社交界のトップとしてその名の知られているマダム・フローレンスは、ソプラノ歌手になる夢を追い続けていたが、自身の歌唱力のなさに気づいていなかった。夫のシンクレアは、愛する妻に夢を見続けさせるため、お人よしのピアニストのコズメ(サイモン・ヘルバーグさん)という伴奏者を見つけ、マスコミを買収して信奉者だけを集め、小さなリサイタルを満員にしていた。ある日、フローレンスがカーネギーホールで歌うと言い出し、慌てるシンクレアだったが、持病を抱えながら音楽に生きるフローレンスの命懸けの挑戦に心を動かされ……というストーリー。 ストリープさんは「マンマ・ミーア!」など数々のミュージカル映画に出演し、その歌のうまさには定評がある。うまい人がへたに歌うのは、へたな人がうまくなるより大変かもしれないが、彼女はそれを希代の演技力で乗り越えている。そして、そのフローレンスを支える夫・シンクレアは見た目はヤサ男で、さぞや財産目当ての悪いやつかと思いきや、妻への愛情にあふれ、どうにかして夢をかなえてあげようと必死になる。酷評が載った新聞を全部買い占めてすぐに見つかってしまうようなゴミ箱に捨てるあたり、かなり脇が甘いが、心根は温かい人として描かれている。このように本当の悪者がいない心温まる映画で、しかも米国人にはなじみ深い実話が基になっているという点が、この映画を名作にしたゆえんだろう。1920~30年代の社交界のファッションを見るのも楽しい。1日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほかで公開。(細田尚子/MANTAN)
「アズミ・ハルコは行方不明」 蒼井優と高畑充希が閉塞感を抱える現代女性を“生きる”
「百万円と苦虫女」(2008年)以来の蒼井優さんの単独主演作「アズミ・ハルコは行方不明」(松居大悟監督)が12月3日から公開される。NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のヒロイン役も記憶に新しい高畑充希さんとともに、現代女性の息苦しさを繊細に演じ、役を“生きている”。 とある地方都市に住む安曇春子(蒼井さん)が行方不明となる。彼女の顔のポスターが、木南愛菜(高畑さん)のボーイフレンドたちの手によって、グラフィティアートとなって街に拡散されていく。一方そのころ、少女ギャング団による男性暴行事件が起きていた……というストーリー。原作は山内マリコさんの同名小説。出演は、太賀さん、葉山奨之さん、石崎ひゅーいさん、山田真歩さん、加瀬亮さんら。主題歌は、チャットモンチーが脚本を読んで書き下ろした。 小さな会社でもんもんとして働く春子。流れにまかせて生きるギャル風の愛菜。真逆の2人に見えるが、男性社会で閉塞感を抱えながら生きているのは同じだ。その感情の発露として登場する少女ギャング団が、2人の物語にどう絡んでいくのか。時間軸を交錯させたスリリングな展開の中、女性のパワーがあふれ出していく。3日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
「TOKYO CITY GIRL 2016」 東京で生きる少女たちの本音を垣間見る
注目の若手女優と若手監督による短編オムニバス映画「TOKYO CITY GIRL-2016-」が12月3日、公開される。2015年に公開された「TOKYO CITY GIRL」に続く第2弾で、東京で生きる女性たちにスポットを当て、彼女たちの思いや葛藤などを情感たっぷり描くシーンからは、“生きる”ことの切なさや温かさが感じられる。 映画は、出会いと別れを通じて大人へと成長していく少女(武田玲奈さん)の物語「LOCAL→TOKYO」(志真健太郎監督)、顔の見えない「あなた」の夢を見る麻紀(高見こころさん)が、「あなた」の声に出会い真実を知っていく「あなたの記憶(こえ)を、私はまだ知らない。」(佐藤リョウ監督)、もてない女4人組の一人である看護師のマイ(飯田祐真さん)がフィアンセがいることを隠していて……という「幸せのつじつま」(山田能龍監督)、子離れできない過保護な父と親離れしきれない娘(増田有華さん)を描く「ひらり、いま。」(澤口明宏監督)の4編で構成。栗原類さん、お笑いコンビ「キャイーン」の天野ひろゆきさん、戸塚純貴さんらも出演している。 思春期の成長物語から少しファンタジックなものまで、ほっこりしたりうるっときたりと、どれも心の奥までじんわりとしみ入るようなエピソードがそろう。さらにガールズバンド「ねごと」、Ms.OOJAさん、fumikaさん、AZUさんら女性アーティストが手がける各主題歌がそれぞれの世界観にマッチし、想像以上にドラマを盛り上げる。女性目線のストーリーだが、男性が見ても思わずうなずけるようなものばかりだ。3日からお台場シネマメディアージュ(東京都港区)で公開。(遠藤政樹/フリーライター)