「劇場版 サイコパス」 狡噛のその後は… 派手なアクションも魅力
大ヒットシリーズ「踊る大捜査線」の映画監督・本広克行さんが総監督を務めたことも話題になったテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の劇場版が1月9日に公開される。ヒロイン・常守朱(つねもり・あかね)が厚生省公安局に配属されてから約4年たった2116年が舞台で、第1期の最後で失踪した狡噛慎也 (こうがみ・しんや)も登場する。 「サイコパス」は、人の心理状態などを数値化して判断できるようになった近未来の高度情報化社会を舞台に、厚生省公安局の刑事の活躍を描く近未来SFアニメ。刑事は、犯人を捕まえる“執行官”と、執行官を管理する“監視官”のコンビで活動するという設定で、テレビアニメ版では、完璧に見える社会が持つ矛盾が描かれた。ストーリー原案と脚本をアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄(うろぶち・げん)さんが手がけたことも話題を呼んだ。2012年10月~13年3月に第1期、14年10~12月に第2期がフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された。 劇場版では、長期の内戦状態下にあったSEAUn(シーアン、東南アジア連合)が舞台。日本政府は、人の心理状態などを数値化するシビュラシステムをシーアンに輸出することになった。そんな中、朱は、シーアンのテロリストに、かつての同僚・狡噛らしき人物がいることを知り、シーアンに捜査に向かう。 狡噛は、シーアンで何を考え、何のために戦っているのか……。ファンにとって気になるのは、テレビアニメ第2期では回想シーンにしか登場しなかった狡噛のその後だろう。また、第1期は、ミシェル・フーコーやジョージ・オーウェルを愛読書とする犯罪者・槙島聖護 (まきしま・しょうご)が人気を集めたが、劇場版はフランツ・ファノンの言葉を引用する兵士のデスモンド・ルタガンダが登場し、狡噛と戦う。スリリングなガンアクションや激しい格闘シーンなど派手なアクションも見どころだ。 テレビアニメから引き続き、花澤香菜さんが朱、関智一さんが狡噛の声を担当するほか、神谷浩史さん、石塚運昇さんも声優として出演する。9日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(小西鉄兵/毎日新聞デジタル)
「映画ST 赤と白の捜査ファイル」 赤城対STのスリリングな展開 涙と笑いも
今野敏さん原作のテレビドラマの劇場版となる映画「ST 赤と白の捜査ファイル」(佐藤東弥監督)が1月10日に公開される。今作は今野さんの人気警察小説が原作で、架空の特殊機関である警視庁科学特捜班「ST」の活躍を描いている。2013年4月放送のスペシャルドラマが好評を博し、14年7月期には連続ドラマ化され、放送期間中に映画化決定が発表されていた。藤原竜也さん演じるSTのリーダー格・赤城左門と、岡田将生さん演じるSTの統括を任された百合根友久の軽妙な掛け合いや、個性豊かなSTメンバーらの顔ぶれが話題を呼んだ。映画では殺人事件の容疑者となり逃亡する赤城を、百合根らが追うというショッキングかつスリリングな展開となる。 天才ハッカーによる囚人脱獄事件が発生。犯人の鏑木徹(ユースケ・サンタマリアさん)は焼死体で見つかり、殺人の容疑者として警視庁科学特捜班「ST」の赤城左門(藤原さん)が逮捕された。STは解散するが、赤城が拘置所から脱走したため、青山翔(志田未来さん)、結城翠(芦名星さん)、黒崎勇治(窪田正孝さん)、山吹才蔵(三宅弘城さん)らSTメンバーは赤城追跡のため招集される。異動を2日後に控えたSTの責任者である百合根友久(岡田さん)も、赤城の無実を信じて捜査に参加。“フギン”というコンピューターウイルスとの関係に着目し、事情を知る謎の女・堂島菜緒美(安達祐実さん)の元へ向かうが……というストーリー。 いわゆる警察バディものだが、そのスタイルが斬新なのが魅力。とにかく個性が強すぎる登場人物たちによる濃すぎるほどのからみだけでも面白いのに、さらに視覚的にもタイポグラフィーをはじめポップなCGビジュアルで見る者を楽しませてくれる。特に外せないのが赤城と百合根の漫才のようなやり取りで、互いに長ぜりふを早口でまくし立てるさまは、シリアスな場面すらコミカルに感じさせる。もちろんSTメンバー以外の脇を固めるキャラクターも魅力的で、ユースケさんをはじめとした劇場版から登場する人物も含め、STの世界観を拡充するのに成功している。頭脳戦と赤城の意外な本格アクションなど、ドラマ版からその世界観もスケールアップ。見どころを挙げればキリがないが、ストーリーは心地いいほどのどんでん返しも用意された会心作だ。随所で表示されるカウントダウンにも注目してほしい。TOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「96時間/レクイエム」ミルズにまさかの殺人容疑! 家族愛がより強く伝わる最終章
リーアム・ニーソンさんがアクションに挑み新境地を開拓した映画「96時間」(2008年、12年)シリーズの第3弾にして最終章「96時間/レクイエム」(オリビエ・メガトン監督)が1月9日から全国で公開される。前2作では、自らの命の危険を顧みず娘と元妻を守り抜いた、ニーソンさん演じる元CIA秘密工作員ブライアン・ミルズが、今作では一転、元妻殺しの容疑者にされてしまう。リュック・ベッソンさんが製作と脚本を担当。シリーズ最終章らしくミルズの“家族愛”がより強く伝わる作品となった。 トルコのイスタンブールで犯罪組織を壊滅させた元CIA工作員のブライアン・ミルズ(ニーソンさん)は、米ロサンゼルスで平穏な日々を送っていた。元妻レノーア(ファムケ・ヤンセンさん)との関係も良好で復縁の可能性も出てきた。ところが、そのレノーアがミルズの自宅で死体となって発見され、ミルズは容疑者として指名手配されてしまう。さらに、娘キム(マギー・グレイスさん)にも危険が迫り、ミルズは警察に追われながら、事件の黒幕に迫っていく……という展開。 前2作で舞台となったパリとイスタンブールでは、ちょっとやり過ぎだろうというところまでやってのけ、キムやレノーアを救い出したミルズ。今作では、追う立場から追われる立場に変わったことで、行動はやや自粛気味になっている。その一方で、勝手知ったるロスの街を、レノーア殺しの真犯人を見つけるべく、また、三度窮地に陥ったキムを救うために疾走するミルズからは、愛する者を失った悲しみと、「娘=命」の思いが強烈に伝わり、このシリーズが貫いてきた家族愛がより鮮明に浮かび上がる仕上がりだ。ミルズとかつての仲間たちの結束力の強さを証明する場面も盛り込まれ、シリーズファンにはうれしい展開も用意されている。ニーソンさんのアクションに以前ほどのキレがなくなったことは否めないが、1作目から6歳も年を取ったこと(現在62歳)を考えれば、ミルズだって“人の子”、その人間くささにむしろ好感を持った。ミルズを追う刑事をオスカー俳優のフォレスト・ウィテカーさんが演じているという豪華さに最終章らしさが出ていた。9日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「トラッシュ! この街が輝く日まで」 子どもがたくましいダルドリー監督最新作
「リトル・ダンサー」(2000年)や「めぐりあう時間たち」(02年)のスティーブン・ダルドリー監督の最新作「トラッシュ! この街が輝く日まで」が1月9日から公開される。リオデジャネイロのスラム街に住む3人の少年たちが、街に奇跡を起こすストーリー。ゴミの山から拾った財布に隠された謎を追いながら、権力に立ち向かう少年たちを描いた痛快な作品。 ブラジルのリオデジャネイロ郊外。やんちゃなラファエル(リックソン・テベスさん)と賢いガルド(エデュアルド・ルイスさん)と心優しいラット(ガブリエル・ウェインスタインさん)は、ゴミの山からお金になりそうなものを回収して生活をしていた。ある日、ラファェルはゴミの中から財布を拾った。中身は、お金、IDカード、ポケットカレンダー、少女の写真、アニマル・ロトのカード、コインロッカーの鍵。警察が財布を捜索し始め、少年たちの住むスラムにもやって来る。何か特別な財布であることを感じた3人は、財布の中にあった鍵に合うコインロッカーを探り当て、一通の手紙と数字が書かれたメモを手に入れる。しかし、少年たちを追ってきた警察により、3人は窮地に陥る。保護者代わりのジュリアード神父(マーティン・シーンさん)とボランティアのオリビア(ルーニー・マーラさん)の力を借りながら、少年たちは街の不正に立ち向かう……というストーリー。 ミステリーっぽい始まり方で、財布を少年たちが偶然手に入れる。彼らは社会の最底辺で生活しているが、持って生まれた知恵と勇気と優しさがあって、彼らを見守る神父やボランティアの導きによる“正しい心”を持っていた。少年たちは立ち上がり、権力で街を牛耳る大人たちを相手に戦う。ロトカードに秘められた謎を解きながら、子どもならではのすばっしこさで追っ手をかわしていく様子がスピーディーで、まるで猛獣に追われる小動物のようなハラハラ感だ。アクションもたっぷりで痛快。一貫して少年を描いてきたダルドリー監督が、無名の3人に子どものたくましさを託し、スクリーンは躍動感でいっぱいになる。スラムに住む子どもたちの日常を描いた「シティ・オブ・ゴッド」(02年)のフェルナンド・メイレレスさんが製作総指揮を務め、格差社会が広がる街をリアルに描いている。TOHOシネマズスカラ座/みゆき座(東京都千代田区)ほかで9日から公開。(文・キョーコ/フリーライター)
「オズ めざせ!エメラルドの国へ」 原作者のひ孫が書いたドロシーの新たな冒険
児童文学作品「オズの魔法使い」の“その後”の冒険を描いた劇場版アニメ「オズ めざせ!エメラルドの国へ」(ダニエル・サンピエール監督、ウィル・フィン監督)が1月10日に公開される。今作は、原作者のライマン・F・ボームさんのひ孫にあたるロジャー・S・ボームさんの小説「ドロシー・オブ・オズ」を基に映像化。ドロシーが再びオズの国に戻り、エメラルドの都を守るため、新たな仲間とともに悪い魔法使いのジェスターに立ち向かう物語が描かれる。日本語吹き替え版で、タレントの野々村真さんの長女でモデルの香音さんが声優に初挑戦したことでも話題を集めている。 冒険を終え自分の世界に戻ったドロシー(声・リア・ミシェルさん)と愛犬トトは、かつての仲間、かかし(声・ダン・エイクロイドさん)、ライオン(声・ジェームズ・ベルーシさん)、ブリキ男(声・ケルシー・グラマーさん)が送ってきた「魔法の虹」に乗り、オズの国へ連れ戻される。オズでは道化師ジェスター(声・マーティン・ショートさん)が支配し、邪悪な魔法の前には誰も太刀打ちできない。ドロシーは、フクロウのワイザー(声・オリバー・プラットさん)、マシュマロのマロー保安官(声・ヒュー・ダンシーさん)、陶器の王女(声・メーガン・ヒルティさん)、森の古い樹のタグ(声・パトリック・スチュワートさん)らの力を借り、ジェスターの待つ城へと向かうが……という展開。 ドロシーと一緒に旅をする仲間たちは「オズの魔法使い」に欠かせないが、今作でも個性豊かなキャラクターたちが多数登場する。ふくよかでおしゃべりなフクロウのワイザー、真面目で頼れるマシュマロのマロー保安官など、愛らしい外見の仲間たちと繰り広げるアドベンチャーには心を奪われるはずだ。ディズニーやドリームワークスの作品を数多く手掛けてきた監督やスタッフが作り上げたオズの世界は、お菓子の国や陶器の国、エメラルドの都などの色彩豊かな映像に心が躍り、オズの国に行ってみたくなる。さらにカナダ出身の人気アーティストのブライアン・アダムスさんの生み出した楽曲は、ロックやオペラ調など曲調が多岐にわたり、楽しいだけではなく感動も呼び起こし、物語を盛り上げる。子供向けとはいえ、大人でも十分楽しめ、見ていてドキドキ、ワクワク感が止まらない。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「ストライクウィッチーズ OVA Vol.2 エーゲ海の女神」思い出の島を守る戦い
人気アニメ「ストライクウィッチーズ」の新作で、3部作で描かれる「Operation Victory Arrow」の第2弾「ストライクウィッチーズ Operation Victory Arrow Vol.2 エーゲ海の女神」(高村和宏監督)が1月10日に劇場公開される。「ストライクウィッチーズ」は、魔法が存在する20世紀の地球を舞台に、突然出現した異形の敵を倒すため魔力を持ったウィッチ(魔女)と呼ばれる少女たちの戦いを描く。新シリーズは、2010年7~9月に放送されたテレビアニメ第2期と、12年3月に公開された劇場版との間をつなぐエピソード。第2弾となる今作では、ストライクウィッチーズとストームウィッチーズのメンバーたちが力を合わせてバトルを展開。バトルシーンの迫力と熱気は思わず手に汗握るほどだ。 第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」によるロマーニャ解放から半月、シチリア島で休暇を過ごしていたシャーロット・E・イェーガー(声・小清水亜美さん)とフランチェスカ・ルッキーニ(声・斎藤千和さん)は、クレタ島基地に召集される。基地にやって来た2人は、第31統合戦闘飛行隊「ストームウィッチ―ズ」に所属するハンナ・ユスティーナ・マルセイユ(声・伊藤静さん)とライーサ・ペットゲン(声・楠見藍子さん)と組み、ネウロイせん滅作戦に参加するが……というストーリー。 昨年9月に劇場公開された「Vol.1 サン・トロンの雷鳴」では、サン・トロン基地に駐留するカールスラントメンバーたち中心の物語だったが、2作目となる今作は南欧滞在中のシャーリーとルッキーニ、さらにアフリカ軍団のマルセイユとライーサの活躍が楽しめる。戦闘中にすらけんかするほどかみ合わない4人のやり取りを見ていると、思わずにやついてしまうものの、ルッキーニの思い出の島を守るために一致団結する様子には心打たれる部分も。大迫力の戦闘シーンには胸が躍り、キャラクターたちの日常シーンにおけるキュートさとのギャップがたまらない。シリーズ特有のノリと、安定感がありながらも期待値を上回るクオリティーで楽しませてくれる。5月に公開予定の「vol.3 アルンヘムの橋」が今から待ち遠しい。角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第7章」 名作「パト2」の後日譚
「機動警察パトレイバー」シリーズの実写化プロジェクト第7弾「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第7章」が1月10日に公開される。「パトレイバー」は、歩行式の作業機械・レイバーが実用化された近未来を舞台に、レイバー犯罪に立ち向かう警視庁の特科車両二課中隊(特車二課)の活躍や泉野明ら隊員の日常を描いたSF作品。全7章の最後を飾る今作は、1993年に公開された劇場版アニメ「機動警察パトレイバー 2 the Movie」のアフターストーリーとなるエピソード12「大いなる遺産」(押井守監督)と、「シリーズ総集編」で構成されている。アニメシリーズでも人気の高いキャラクター・南雲しのぶが登場するほか、5月に公開予定の長編劇場版「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」への布石となる内容も盛り込まれるなど注目を呼んでいる。 「エピソード12」は、警視総監が病に倒れ後継者の人事がうわさされる中、無用の長物といわれながらも存続してきた特車二課の解体が現実味を帯びてきた。不穏な空気を察知した特車二課隊長の後藤田継次(筧利夫さん)は、先代隊長が特車二課存続のため警察内部に仕掛けたという“遺産”の調査を開始。そして後藤田は、かつて幻のクーデターを企てて、現在は収監されているある男の存在にたどり着く……という展開。 昨年4月にスタートした、全7章からなる実写化プロジェクトもついに最終章。押井監督自らがメガホンをとったエピソード12は、シリーズ中で最もシリアスな展開かつハードな内容で、特車二課解体の危機をめぐる深刻なドラマが繰り広げられる。しかもキーパーソンとして、南雲しのぶに加えて、彼女と関係の深い柘植行人も登場するなど、パトレイバーファン垂涎(すいぜん)ものの要素も盛り込まれ、物語を盛り上げる。最終章にふさわしい謎が次々に飛び出し、盛り上がりの連続には息をのむ。また、メリハリの利いたBGMが期待感をあおる。6章までも見どころ満載だったが、シリーズのラストだけあって、その完成度の高さに思わず引き込まれる。長編劇場版へとつながる物語だけに見逃せない。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)