「スター・トレック BEYOND」 J.J.エイブラムス製作 アクション倍増の新シリーズ3作目
大ヒットSF作シリーズの最新作「スター・トレック BEYOND」(ジャスティン・リン監督)が10月21日に公開された。前2作で監督を務めたJ.J.エイブラムスさんが製作。「ワイルド・スピード」シリーズを手がけたリン監督が新たにメガホンをとり、アクション倍増で迫力ある宇宙での戦いを映し出す。 エンタープライズ号に乗って最後のミッションにあたっていたカーク船長(クリス・パインさん)らは、突然、謎の異星人クラール(イドリス・エルバさん)が率いる集団に急襲され、船を大破されて見知らぬ惑星に不時着する。そこでジェイラ(ソフィア・ブテラさん)という謎の女性戦士に案内され、100年前に消息を絶ったフラクリン号を見つける。そこに残されていたものとは? カークは、バラバラになってしまった仲間を救うことができるのか?……という展開。 2009年からJ.J.エイブラムス監督による新シリーズが始まって今作で3作目。5年間の宇宙探査の任務についてから3年目という設定だ。無限の宇宙を探査中のキャプテン・カークが、なんだか宇宙疲れを見せているなと思っていると、エンタープライズ号にいきなり試練が襲いかかり、早々に宇宙船が壊される。見ていて心が痛む激しい破壊の後、惑星に散り散りになって取り残されたクルーたちは、カークと若いチェコフ、指揮官スポックと医療部長ボーンズといったペアで、謎の敵に立ち向かっていく。旧作品のオリジナルにもあったような、少年SFものの原点ともいうべき、仲間との絆や平和への思いが前面に押し出されながらも、リン監督の手によるアクションは、発散された感情となって訴えかけてくる。 未来都市ヨークタウンのデザインは、もっとじっくり見たいと思うほど楽しく、置き去りにされて朽ちた宇宙船には、時間の重みも感じられる。敵対する異星人役は「マンデラ 自由への長い道」(13年)で主演したエルバさん。ごつい見てくれでありながら、見捨てられた恨みを募らせる弱さを巧みに表現し、印象深い。脚本は、本シリーズのスコット役で出演しているサイモン・ペッグさんらが担当。2016年に急逝したアントン・イェルチンさんが、チェコフ役で前2作に続き出演している。21日からTOHOシネマズ六本木(東京都港区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」 シリーズ最終章 丑嶋の過去が明かされる
山田孝之さん主演で実写化した「闇金ウシジマくん」シリーズの最終章となる映画「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」(山口雅俊監督)が10月22日に公開される。「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中のマンガが原作。トゴ(10日で5割)という違法な高金利で金を貸す「カウカウファイナンス」社長の丑嶋(ウシジマ)と不良債務者たちの姿をリアルに描き、これまで深夜ドラマを3シリーズ放送、劇場版が3作公開された。シリーズ最終章となる「ザ・ファイナル」は、ウシジマの中学生時代のエピソードや、闇金の世界に身を置くことになった過去の因縁などが明かされる。 丑嶋馨(山田さん)のもとに、ある日、竹本優希(永山絢斗さん)という中学時代の同級生が金を借りに来るが、ウシジマはその頼みを断る。金を借りることができなかった竹本は、鰐戸二郎(YOUNG DAISさん)という男の紹介で、住み込みで労働ができるという「純愛の家」に入居するが、その実態は過酷な労働を強いられる貧困ビジネスだった。二郎ほか一(安藤政信さん)、三蔵(間宮祥太朗さん)の鰐戸3兄弟とウシジマには12年前から因縁があり、その争いにウシジマのライバル闇金・犀原茜(高橋メアリージュンさん)やウシジマを破滅させようとする腕利き弁護士・都陰(八嶋智人さん)らも絡んできて……というストーリー。 今作は、原作の「ヤミ金くん編」をベースに映画オリジナルのキャラクターたちも参戦し、前作以上のバイオレンスもあり、一層パワーアップしている。さらに、これまではウシジマに借金を申し込みに来る依頼者を中心に進行していたストーリーが、今回はウシジマをはじめカウカウファイナンスのナンバー2である柄崎(やべきょうすけさん)、情報屋の戌亥(綾野剛さん)らの過去を描かれるなど、シリーズファンにとっては見逃せない内容だ。また貧困ビジネスや債務整理で稼ぐ弁護士が登場するなど、現代社会の“闇”を盛り込んだ展開は興味深く、リアルで寒気すら感じる。前作まである意味、傍観者だったウシジマが当事者となっていく様子はスリリングで、底抜けにお人好しの同級生・竹本との対比などを経て、最後に見せるウシジマの表情には注目したい。22日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「バースデーカード」橋本愛と宮崎あおい初共演 亡き母の愛に支えられ成長する娘
女優の橋本愛さんの主演映画「バースデーカード」(吉田康弘監督)が10月22日に公開される。映画は吉田監督によるオリジナル脚本で、亡くなった母親から毎年届くバースデーカードに書かれたメッセージを通して母親と娘の絆や深い愛情を描く。主人公・紀子を橋本さん、紀子が10歳のときに亡くなった母・芳恵を女優の宮崎あおいさんが演じ、2人が親子役で初共演していることでも話題だ。紀子の父・宗一郎をユースケ・サンタマリアさん、弟・正男を須賀健太さんが演じ、温かく感動的なヒューマンストーリーを盛り上げる。 子供のころ、泣き虫で引っ込み思案だった紀子(橋本さん)をいつも励ましてくれたのは、母・芳恵(宮崎さん)だった。紀子は優しくて明るい芳恵のことが大好きだったが、紀子の10歳の誕生日、芳恵は2人の子供たちが20歳になるまで毎年手紙を送ると約束して亡くなってしまう。その約束通り、11歳の誕生日から紀子の元には毎年母からのバースデーカードが届けられる。そして20歳を迎え受け取った最後の手紙には、紀子が母に投げかけた質問の答えが書かれていて……というストーリー。 幼くして母親を亡くし、その母が残していかなければならない娘と息子に宛てて毎年の誕生日に手紙を送るという物語だけに、少し暗めな展開を想像していたが、いい意味でその予想は裏切られた。もちろん子供のときに母親を亡くすということ自体は悲しいことだが、今作は家族の別れがテーマではなく、引っ込み思案な娘が母からの手紙を助けに成長していく姿を、すがすがしく愛にあふれたストーリーに包んで見せてくれる。亡くなった人からの手紙の内容が、主人公の人生のターニングポイントで役に立つというファンタジー的な要素は若干薄めで、むしろ手紙には母から娘の深い愛がつづられ、目に見えないほどだが紀子の成長の糧になっているあたりがほほえましい。今作は娘と母にスポットを当ててはいるが、映画を見た人は男女や年齢の差を問わず、多くの人が自分と親のことと照らし合わせて、温かい気持ちに満たされるのではないだろうか。22日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「奇蹟がくれた数式」アインシュタイン並みの天才の波乱の半生を友情とともに描く
のちに“アインシュタイン並みの天才”とたたえられることになる一人のインド人数学者の波乱の半生を描いた「奇蹟がくれた数式」(マシュー・ブラウン監督)が10月22日に公開される。第1次世界大戦下、英国とインドの数学者が数式を通じて出会い、やがて大きな発見を形にしていく……。その過程で育まれる国籍を超えた友情を描いた感動作だ。 1914年、英ケンブリッジ大学トリニティーカレッジで教授を務めるハーディ(ジェレミー・アイアンズさん)の元に、インドから1通の手紙が届く。そこには、数式にまつわる驚くべき発見が記されていた。ハーディは早速、差出人のラマヌジャン(デヴ・パテルさん)を大学に招聘(しょうへい)するが、身分が低く、独学で数学を学んだというラマヌジャンを、ほかの教授たちが受け入れるはずがなかった。それでも、研究熱心なラマヌジャンは直感で次々と新しい公式を生み出していく。そんな彼にハーディは、“証明”の必要性を説き続けるが……というストーリー。 「無限級数」や「連分数」といわれても、その意味はさっぱり分からないが、ともかくこのラマヌジャンという人物は、数学界に多大な貢献をもたらした人らしい。その頭脳は「アインシュタイン並みの天才」といわれ、彼の研究はブラックホールの解析にも役立っているという。映画の舞台となった1914年当時、インドは英国の植民地で、インド人が英国に渡ることは禁じられていた。それでも自分の力を試したくて海を渡ったラマヌジャン。美しい大学や部屋にある紙の上等さに感激する一方で、ベジタリアンの彼にとって、英国での生活は不自由なことばかりだった。その中で研究に没頭していく様子が、今作では明らかにされていく。もちろんその背後には、彼を招聘し支えた英国の数学者G・H・ハーディの存在もある。 学生時代、いろんな数式を必死になって覚えたが、それらを生み出した人のことなど、これまで思いも及ばなかった。しかし、その人たちは間違いなくいた。そのことに、この作品は気づかせてくれた。また、インド人の数学的能力の高さがしばしば話題になるが、ラマヌジャンのような人を生んだ国なら、それも当然だと確信した。なお、ケンブジリッジ大学の最高峰トリニティーカレッジが撮影に使われており、「ニュートンのリンゴの木」がある中庭なども見ることができる。ラマヌジャンがノートにしたためた数式がとても美しく見えたことを最後に言い添えておく。22日から角川シネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。