「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」おなじみキャラが今度は大英博物館へ
ベン・スティラーさん主演の人気シリーズ第3弾「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」が3月20日から全国で公開される。前2作に続いてショーン・レヴィ監督が手掛け、スティラーさんをはじめとするおなじみのキャストが、出会いあり、旅立ちありの、シリーズ最終章をうたうにふさわしいストーリーを繰り広げる。昨年、急逝したロビン・ウィリアムズさんの実写映画としての遺作でもある。 米ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館の展示物に魂を吹きこんでいたエジプト王の石板が、魔法の力を失いつつあった。このままでは展示物は二度と動かなくなってしまう。夜警のラリー(スティラーさん)はそれを食い止めるために、息子のニッキー(スカイラー・ギソンドさん)を伴い、テディことセオドア・ルーズベルト(ウィリアムズさん)ら“仲間たち”とともに、秘密を解くカギがあるとされるロンドンの大英博物館に向かう、という展開。 猿のデクスターが大活躍(?)したり、ミニチュアのジェデダイア(オーウェン・ウィルソンさん)とオクタヴィウス(スティーブ・クーガンさん)が“秘密兵器”を使ってYouTubeに書き込みをしたりと、おなじみのキャラがこれまで以上の好プレー、珍プレーを見せている。ラリーとうり二つの展示物ネアンデルタール人のラー(スティラーさん2役)とラリーの親子のようなやりとりは、笑いの中にもほほ笑ましさがあり、また、レヴィ監督つながりで、ある有名俳優が特別出演するという“こじゃれた”仕掛けもある。エッシャーのだまし絵も登場し、ラリーたちがその中で迷走したりもする。さらに特筆すべきは、2014年に亡くなったウィリアムズさんとミッキー・ルーニーさんのありし日の姿が見られること。ラリーがテディと最後の言葉を交わす場面は、ウィリアムズさんがすでにこの世にいないことと重なり、一層胸に響いた。ほかにベン・キングズレーさんや英ドラマ「ダウントン・アビー」シリーズ(10~12年)でブレークしたダン・スティーブンスさんらが出演している。20日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
「スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号」 及川光博が幻の仮面ライダー3号で登場
特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズの映画最新作「スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号」(柴崎貴行監督)が3月21日に公開される。約40年前にお蔵入りになっていた幻の仮面ライダー「仮面ライダー3号」が、仮面ライダー1号&2号を倒した「最強のライダー」として登場。ショッカーに支配されてしまった世界を舞台に、悪の仮面ライダーと正義に目覚めた仮面ライダーが戦い、史上最速を決するレーシングバトルを繰り広げる。迫力満点のアクションだけではなく、仮面ライダー3号に変身する黒井響一郎を演じる俳優の及川光博さんによる変身シーンも見逃せない。 1973年2月10日。仮面ライダー1号&2号の活躍で世界に平和が訪れたはずだったが、突然現れた謎の戦士・仮面ライダー3号に1号と2号は敗北を喫してしまう。そして2015年、全世界がショッカーの統治下にある中、泊進ノ介(竹内涼真さん)は仮面ライダーを倒すためにショッカーの一員となる。身を挺(てい)して子どもたちを救う仮面ライダーBLACK・南光太郎(倉田てつをさん)の姿を見て、異変に気付き始めた進ノ介の前に、仮面ライダー3号・黒井響一郎(及川さん)が現れ……というストーリー。 テレビシリーズでは「V3」が3人目の仮面ライダーなのだが、今作に登場するのは設定上、真の3人目となる仮面ライダー3号だ。それだけでも驚きなのに、歴代が書き換えられた結果、歴代の仮面ライダーたちが悪に染まってしまうなど、これまでの大戦シリーズを上回る仮面ライダー同士の激しい戦いが繰り広げられる。さらに仮面ライダー3号と仮面ライダーV3の邂逅(かいこう)も描かれていて、ヒーロー作品の常識を覆すようなストーリーからは1秒たりとも目が離せない。昭和ライダーファンから見ると、歴史が改編されたという前提があるものの、その展開にやきもきしてしまう面は否めないが、そこはBLACKの活躍ぶりで留飲を下げたいところ。そして最大の衝撃ともいえるのが仮面ライダーマッハの扱い。その運命は「仮面ライダー4号」に引き継がれるそうだが、この先の展開が気になるところだ。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「あしたになれば。」黒島結菜出演 男子高生の純情が光る夏の青春ストーリー
大阪・南河内を舞台にしたひと夏の青春ストーリー「あしたになれば。」(三原光尋監督)が3月21日から公開される。地元のグルメコンテストに挑む高校生の男女6人の恋と友情が、透明感の中で描かれている。フレッシュな若手俳優たちが集結し、大阪・羽曳野市、藤井寺市、太子町の協力で撮影された。 大阪府南河内市。高校2年生の大介(小関裕太さん)は、夏の甲子園予選で敗退したことで、部活に行かなくなっていた。夏休みに大介は学校に呼び出され、元(葉山奨之さん)、健二(小川光樹さん)、昭吾(山形匠さん)とともに校長室を訪ねる。校長から地元のグルメコンテストへの出場を促された4人。「くいしんぼう」というだけで抜てきされ、浮かない顔の4人の前に、隣の女子高に通う美希(黒島結菜さん)と玉子(富山えり子さん)が現れ、一転して出場を快諾する。そして男女混合チームで地元のグルメコンテストを目指す……という展開。 男子校の4人と女子校の2人。モジモジと自己紹介するところからスタートし、次第に距離が縮まっていくさまが、丁寧に描写されている。家庭の事情を抱え、東京から転校してきた美希や、しっかり者の玉子と違って、男子4人は純朴そのもの。「結局は美少女に弱いのね……」という単純明快さが気持ちいいほど。ドキドキ感がよく伝わってくる。それもそのはず、大介の周囲の女性といえば、母親、祖母、妹ぐらい。一家はぶどう農家を営んでいて、俳優たちがまるで本当にそこで暮らしているかのような和を見せる。仲が良くあっけらかんとした家庭で育った大介の心根の良さが自然と伝わり、応援したくなってくる。大介の恋心は、親友の元をライバルに据えながら、自転車で夏の風を切るかのごとく爽やかだ。町ごと捉えた風景の中に、かけがえのない彼らの時間が刻まれている。音楽は、「旅立ちの島唄~十五の春~」(2012年)などのきだしゅんすけさん。アコーディオンなどを使った素朴なメロディーが、この映画の雰囲気にピッタリだ。地元食材を使ったアイデアレシピも見ていて楽しい。角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほかで21日から順次公開。(キョーコ/フリーライター)
「陽だまりハウスでマラソンを」 すてきながんこジジイが颯爽と走る姿に感銘
主演俳優のディーター・ハラーフォルデンさんがドイツ映画賞史上最高齢の最優秀主演男優賞を受賞して話題となった映画「陽だまりハウスでマラソンを」(キリアン・リートホ-フ監督)が、3月21日から公開される。伝説のランナーが、最愛の妻と仲間の応援を受けて、ベルリン・マラソンに挑む姿を描く人生応援歌だ。 1958年、五輪のマラソンで西ドイツに金メダルをもたらしたパウル(ハラーフォルデンさん)は、今やすっかり年老いてしまった。妻マーゴ(タチア・サイブトさん)の病気をきっかけに、娘のビルギット(ハイケ・マカッシュさん)の勧めで、しぶしぶ老人施設に入居した。管理主義的な施設スタッフや無気力な入居者たちがいて、合唱やつまらない工作に時間を潰す日々に嫌気が差したパウルは、ベルリン・マラソンに出ることを目標に掲げて久しぶりに走り始める。あきれていたはずのマーゴも名サポート役に復帰。笑って見ていた入居者たちだったが、パウルが誰なのかが分かると、当時のことを思い出し、応援に回る。しかし、施設側から理解を得られずに……という展開。 ドイツの国民的喜劇俳優ハラーフォルデンさんに目がくぎ付けになる。ジムとランニングで役作りをし、実際のベルリン・マラソンで撮影に臨んだというエピソードももちろん驚くが、妻マーゴとのシーンが絶妙だ。言い争った後のため息。「走りたい」と妻に懇願するときの、奥に信頼を宿した目。自分たちを「風と海」と例える夫婦が、同じ栄光を享受し、同じように年月を重ねてきた風情が、笑顔や仕草一つ一つに込められている。老夫婦の深い絆は、「過去の話ばかりしてゴメン」と娘に謝るほどのたくさんの思い出に支えられ、同時代を生きてきた入居者たちに力をもたらす。とはいえ、キャビンアテンダントとして多忙な娘との関わりにはシビアなものがあり、父親と一緒に住むことを娘が拒むシーンも。施設側の人物は「老人はこういうもの」と型通りで、終の棲家(ついのすみか)としての過ごし方を押しつける。万国共通の、老いていない者と老いた者との隔たり。しかし、そんな周囲をよそに自分を貫こうとするパウル。颯爽(さっそう)と走る姿に、すてきながんこジジイの生きざまがあった。ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで21日から順次公開。(キョーコ/フリーライター)