「ドラゴンボールZ 復活の『F』」 フリーザ復活で“卒業”ファンも“再入学”
世界累計発行部数2億3000万部の大ヒットマンガが原作の2年ぶり19作目の劇場版アニメとなる「ドラゴンボールZ 復活の『F』」が4月18日に公開される。原作者の鳥山明さんが劇場版アニメで初めて脚本を手がけ、人気悪役のフリーザも登場する話題作だ。 破壊神ビルスとの戦いを終え、孫悟空とベジータはビルスの星で修業を続けていた。一方、フリーザ軍の生き残り、ソルベとタゴマが、ドラゴンボールでフリーザを復活させるために、地球へと近づいていた……という展開。 1984年の原作スタートから30年以上、人気のコンテンツであり続ける「ドラゴンボール」だが、数年前までは正直一線から退いていた感があったのも事実だ。ところが、2013年に鳥山さん自らが関わった17年ぶりの新作劇場版アニメ「ドラゴンボールZ 神と神」が公開されると、“卒業”してしまっていたかつてのファンが“再入学”。ここに来て再ブレークを果たした。 そんな再ブレークという土壌ができた今回、鳥山さんが初めて自ら脚本を手がけ、しかも原作でも特に人気が高い“フリーザ編”の系譜に連なる新作がお目見えした。そこまでファンじゃない人でも期待するなというのが無理というものだ。 既に話題になっている“超サイヤ人ゴッドのパワーを持ったサイヤ人の超サイヤ人”となった青い髪の悟空と、生まれて初めてトレーニングし、「ゴールデンフリーザ」に進化したフリーザのリターンマッチはそんな期待を裏切らないだろう。さらに、復活したフリーザ軍の1000人の兵士とは、孫悟飯らに加えて、なんと天津飯や亀仙人も戦う。特に久しぶりに戦線に復帰した亀仙人の「MAXパワー」に興奮するオールドファンも多いのではないだろうか。 社会現象となるほどヒットした作品は数少ないが、その中でも昔の作品として変に懐かしがられることもなく、時代や世代を超えて長年“現役”で愛され続ける作品となると、日本のエンタメ史を振り返ってもわずか数本程度だ。テレビアニメ「ドラゴンボールZ」は、約20年前の1996年1月に最終回を迎えているが、その後もコンスタントにゲームやアニメなどさまざまなコンテンツを送り出し、作品を古くさせないように心を砕いてきた。そういった継続的な展開が親子2世代にわたるファンを生み、前作のヒットや、今回の“原作者の手による新作”という最高の結果にもつながったのだろう。“創造主”が作り出した悟空たちの新たな活躍を堪能したい。新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで18日から公開。(立山夏行/毎日新聞デジタル)
「名探偵コナン 業火の向日葵」初のアートミステリーはダークな怪盗キッドに注目
青山剛昌さんのマンガが原作の人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版最新作「名探偵コナン 業火の向日葵」(静野孔文監督)が4月18日に公開される。劇場版19作目の今作は、ゴッホの名画「ひまわり」を巡る謎にコナンが挑むシリーズ初の“アートミステリー”で、巨大宝石(ビッグジュエル)しか狙わないはずの怪盗キッドが名画への犯行予告を出し、コナンらと激しい攻防を繰り広げる。「名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)」(2013年)でもタッグを組んだ静野監督と脚本の櫻井武晴さんが、予想もつかない展開で観客を魅了する。ゲスト声優として絵画鑑定士・宮台なつみ役で女優の榮倉奈々さんが出演しているほか、2人組ロックバンド「ポルノグラフィティ」が主題歌「オー!リバル」を担当した。 大富豪が集まるオークション会場で、以前日本で消失したといわれているゴッホの名画「ひまわり」を鈴木財閥の相談役・鈴木次郎吉(声・富田耕生さん)が落札する。次郎吉は世界各所に散らばる7枚の「ひまわり」を集め、日本での展覧会開催を発表。絵画を護衛するスペシャリスト「7人のサムライ」を紹介していると、巨大宝石しか狙わないはずの怪盗キッド(声・山口勝平さん)が現れ、絵画を奪うことを宣言し去っていく。一方、江戸川コナン(声・高山みなみさん)たちもニュースに注目していたが……というストーリー。 シリーズ初の美術もので、コナンとキッドが戦うという展開はシリーズファンなら間違いなくテンションが上がるはず。しかも今作のキッドはダークな雰囲気をまとっているなど、いつもとは違った切り口で驚かせてくれる。一番の見どころは作品のスピード感。冒頭のオークションシーンを皮切りに、絵画を輸送する飛行機でのトラブル、クライマックスでのアクションと、これでもかというほど怒濤(どとう)の展開が押し寄せる。テンポを重視したためか、登場人物たちの心情描写などが少なめな印象も受けるが、スケール感のあふれる映像が補ってあまりあるほど完成度を高めている。主役のコナンは途中までは押され気味だが、推理だけでなく男気あふれる活躍を見せてくれる。だが、今回ばかりはキッドのクールなカッコよさに素直に酔いしれたい。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「ワイルド・スピード SKY MISSION」ポール・ウォーカー最後のシリーズ第7作
ヴィン・ディーゼルさんとポール・ウォーカーさんが天才的ドライバーに扮(ふん)し大活躍するヒットシリーズ最新作「ワイルド・スピード SKY MISSION」が17日から全国で公開される。2001年に始まったシリーズも、早いもので今作が7作目。撮影期間中に急逝したウォーカーさんが遺した最後の作品となる。どうまとめるかが懸念されたが、「よくぞここまで」と感嘆せずにいられない仕上がりだ。一足早く封切られた米国では、公開2週目で興行収入2億ドル(約238億円)を突破する大ヒットとなっている。 前作で、オーウェン・ショウ(ルーク・エバンスさん)率いる国際犯罪組織を壊滅させたドミニク(ディーゼルさん)は、ブライアン(ウォーカーさん)やその家族と米ロサンゼルスで平和な日々を送っていた。ところがその平穏は、オーウェンの兄デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサムさん)の出現によって破られる。弟の復讐(ふくしゅう)に燃えるデッカードは、ドミニクの仲間の命を狙い……というストーリー。 弟のあだ討ちに燃えるデッカードと、その悪らつぶりに怒りにかられるドミニクたち。そこに、別の犯罪組織による誘拐事件がからみ、事態は複雑化していく。公道でのカーチェイスはもちろん、今回は、車が空を舞う仰天かつ爽快なシーンもある。ドミニクらの車5台が砂漠地帯の一本道を駆け抜けるシーンでは、その美しさに見とれたほどだ。ゲストも多彩で、「エクスペンダブルズ」シリーズ(10年、12年、14年)での頼れるナイスガイぶりがすっかり定着していたステイサムさんが、大胆な悪役を演じているのが新鮮で、カート・ラッセルさんが演じる“ミスター・ノーバディ”も映画のいいアクセントになっている。監督は、3~6作目を手掛けたジャスティン・リン監督に代わって、「ソウ」(04年)や「死霊館」(13年)などの作品で知られるジェームズ・ワン監督が務め、ミシェル・ロドリゲスさん、ジョーダナ・ブリュースターさん、ドウェイン・ジョンソンさんらおなじみのメンバーが勢ぞろいしている。実は映画を見る前、一部の「泣ける」との声に半信半疑だったが、実際に作品を見て、ストーリーのよさもさることながら、ワン監督の心憎い演出に、「それは反則だよ」と私もまた泣いてしまった。17日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「恋する・ヴァンパイア」夢と恋を追いかけるキュートなバンパイア映画
桐谷美玲さんがキュートなバンパイア(吸血鬼)役で主演している映画「恋する・ヴァンパイア」(鈴木舞監督)が4月17日から公開される。世界一のパン職人を目指しながら普通の女の子として暮らすバンパイアが、好きになってはいけない相手、人間との恋に悩むラブストーリーをカラフルな映像で描いている。A.B.C-Zの戸塚祥太さんが相手役として映画初出演を果たした。 キイラ(桐谷さん)は普通の女の子だが、実はバンパイア。大きな屋敷で両親の愛情を受けながら大切に育てられたが、12歳のときに両親を亡くし、母親の妹夫婦(田辺誠一さん、大塚寧々さん)に引き取られた。夫婦が営むパン屋で働くキイラのもとに、ある日、幼なじみで初恋の相手である哲(戸塚さん)が偶然訪れる。哲はギターと歌が大好きな少年だったのだが、今や怪しい商品の営業マン。再会を喜ぶキイラは、偶然出会った女の子(モン・ガンルーさん)に応援されながら、次第に2人の時間を持ち始める。しかし、思いが募るほど苦しくなってきて……という展開。 タイトルから想像できるように、カラフルでキュートなガールズムービーだ。バンパイアと人間の古典的なラブストーリーに、個性的なアイデアがいっぱい詰め込まれている。「アンチアンチエイジング」という薬を飲んで、バンパイアが人間のように年を取る努力をしていたり、可愛らしいパンダ形のパンと音楽という取り合わせも楽しい。パン屋を切り盛りしているのは、本当の夫婦である田辺さんと大塚さんで、この2人、なんだかほのぼのしている。バンパイアであるおばが人間と恋愛結婚した設定で、キイラが恋や結婚に憧れるのもよく分かる。夢を追いかけ、恋に悩む等身大の女の子を演じる桐谷さんがキュートで、相手役の戸塚さんも素朴で明るい雰囲気と歌声がいい。原作・脚本も兼ねた鈴木舞監督は、北京の中央戯劇学院で演劇を学び、今作で監督デビューを果たした。ガンルーさん、イーキン・チェンさん、チェ・ジニョクさんと、アジアから俳優が集まった。音楽はPerfumeなどのプロデューサーとして知られる中田ヤスタカさんが担当した。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで17日から公開。(キョーコ/フリーライター)
「クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~」メキシコでドタバタ劇
人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場版最新作「映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~」(橋本昌和監督)が4月18日に公開される。シリーズ23作目となる今作は、しんのすけら野原一家が埼玉県春日部市からメキシコへと引っ越し、慣れない土地で巻き起こす騒動を描いている。引っ越しをテーマにした物語だが、異国の地でもマイペースなしんのすけの姿にほっこりさせられる。ゲスト声優として、博多を拠点にしたアイドルグループ「HKT48」のさしここと指原莉乃さんがしんのすけから「スマホちゃん」と呼ばれるメキシコ人の少女を、お笑いコンビ「日本エレキテル連合」が本人役で出演。人気男性デュオ「ゆず」が主題歌「OLA!!」で初めて「クレヨンしんちゃん」の主題歌を担当した。 父・野原ひろし(声・藤原啓治さん)が転勤となり、一家そろっての引っ越しを決意する。春日部を離れることになった野原家の行き先はなんとメキシコ。しんのすけ(声・矢島晶子さん)らの引っ越し先の街「マダクエルヨバカ」で、個性的な近所の人たちと新生活が始まるが、突然、街のサボテンが人食いキラーサボテンとなって暴れ出す……というストーリー。 野原家が春日部から引っ越しという設定には衝撃を受けたが、案の定、引っ越しシーンでは狙いとは分かっていながらもじんわりと感動させられる。メキシコに舞台を移してからは恐怖感をあおる人食いキラーサボテンが登場し、パニックムービー風に楽しませてくれる。随所に笑いのネタが仕込まれていて、クレヨンしんちゃんらしさを満喫。それでいて感動のエッセンスやしんのすけらがサボテンに立ち向かうバトルの緊張感もあり、緩急自在の展開で最後まで飽きさせない。しんのすけと風間くんの友情、そして今回も父・ひろしのカッコよさが際立っている。子どもだけでなく、大人も心から楽しめる劇場版アニメだ。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「セッション」 狂気に満ちた鬼教師のレッスンの先にあるものは?
今年の第87回アカデミー賞で3部門を受賞した映画「セッション」(デイミアン・チャゼル監督)が4月17日に公開された。偉大な音楽家になることを夢見て名門音楽学校に入学した青年が、天才を創り出すことにとりつかれた鬼教師の指導を受けるも、次第にレッスンが狂気に満ちていく様子を描いている。「スパイダーマン」シリーズなどに出演した米俳優のJ・K・シモンズさんが鬼教師役を怪演し、生徒とのサスペンス感あふれるやりとりで魅了する。物語と合わせてパワフルなドラムプレーも見どころだ。 名門音楽大学へ入学したアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラーさん)は、フレッチャー(J・K・シモンズさん)のバンドにスカウトされる。バンドで成功すれば偉大な音楽家になるという夢はかなったも同然だったが、ニーマンを待ち受けていたのは、天才を生み出すことにとりつかれたフレッチャーの完璧を求める常人には理解できないレッスンの日々。罵声を浴びせられ、時には暴力も辞さない指導にニーマンは精神的に追い詰められながらも必死に食らいついていく。ニーマンは家族や恋人などすべてを投げ出しフレッチャーが求める高みを目指していたが……という展開。 ジャズドラマーが主人公の音楽映画だが、おそらく一般的な音楽映画とは似て非なるものだろう。楽曲の素晴らしさや登場人物たちの才能を軸に展開する音楽映画は多いが、今作はそのセオリーを完全に無視。とにかくどこまでいってもフレッチャーの過激なスパルタぶりが止まらず、もはやサイコスリラーかと感じてしまうほどの過酷さに震え上がってしまうほど。そしてフレッチャー役のシモンズさんの狂気じみた演技と悪人顔が見事で、想像のはるか上をいく演技には無条件で拍手を送りたくなる。予告でもあおっている「ラスト9分19秒」は、結末へ持って行くために物語があったのだと納得させられ、予想外の結果とエネルギーに打ちのめされる。細かいことは考えず純粋に面白いと感じさせてくれる映画だ。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で17日から公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「グッド・ライ~いちばん優しい嘘~」米国に渡ったスーダン青年たちに心動かされる
「ダ・ヴィンチ・コード」(06年)で知られるロン・ハワード監督が製作した「グッド・ライ~いちばん優しい嘘~」(フィリップ・ファラルドー監督)が4月17日に公開された。スーダン内戦の難民として育ち、米国に渡った「ロストボーイズ」と呼ばれる青年たちの実話を基にした物語で、兄弟の絆、国境を越えて人と人とが響き合う姿を丁寧に描いている。 マメール(アーノルド・オーチェンさん)は子供の頃、1983年に始まったスーダン内戦によって南部の村から逃げてきた。逃げる途中で兄テオと離れてしまい、妹アビタル(クース・ウィールさん)や、北から逃げてきた兄弟のジェレマイア(ゲール・ドゥエイニーさん)とポール(エマニュエル・ジャルさん)とともに13年間難民キャンプで暮らしている。医療の手伝いをしながら医師になることを夢見ていたある日、仲間とともに米国に移住することになる。カンザスシティーの職業紹介所で働くキャリー(リース・ウィザースプーンさん)は、マメールたちに仕事を紹介する任務を携えて、空港へ迎えに行く。ファストフード店も知らず、全く文化の違う難民たちに、キャリーは頭を悩ませる……という展開。 命からがら難民キャンプにたどり着くまでの過酷な子供時代が、臨場感あふれる映像で描かれ、このパートだけでも見応えがある。青年たちのバックボーンがしっかりと描かれたあと、大国を訪れたマメールたちのカルチャーショックは温かな笑いが流れ、純粋な心にほのぼのさせられたり、ハッとさせられたりする。投げやりな雰囲気だったキャリーが、彼らと過ごしながら大事なものを取り戻していく様子も、並行して語られ、人と人との関わりから生まれる希望の物語に心を動かされる。心根のまっすぐな主人公マメールも魅力的だ。祖先から伝わる誇り高き生き方、兄弟の強い絆、医師という夢に向かうブレない強い心。土地も両親も奪われた難民のマメールだが、実は人としてたくさんの大切なものを持っている。離れ離れになった妹、子供の頃、別れた兄はどうしているのだろうか、という展開も見る者を引きつける。脚本のマーガレット・ネイグルさんは、実際の「ロストボーイズ」約1000人から話を聞いたという。元少年兵だった俳優や難民キャンプ出身の女優がキャスティングされているのも話題だ。TOHOシネマズ シャンテ(東京都千代田区)ほかで17日から公開。(キョーコ/フリーライター)