「SCOOP!」福山雅治が中年パパラッチ役で新境地 陰と陽のバランスが絶妙なエンタメ作
歌手で俳優の福山雅治さんの主演映画「SCOOP!」(大根仁監督)が10月1日に公開された。今作で、以前はスターカメラマンだったが今は落ちぶれて借金まみれのパパラッチ・都城静を演じた福山さんは、クランクイン前から髪とヒゲを伸ばし、衣装を着込んで日常生活を送るなど徹底した役作りで撮影に臨んだという。静とタッグを組むことになる新人記者役で二階堂ふみさん、副編集長役で吉田羊さん、滝藤賢一さん、情報屋役でリリー・フランキーさんらが脇を固めている。とにかく冒頭から「えっ、これが福山雅治?」とその“汚れ役”ぶりに驚かされ、途中、チームの活躍に熱くなり、衝撃のラストまで2時間があっという間という快作だ。 「SCOOP!」は、1985年に劇場公開された原田眞人監督・脚本の作品「盗写1/250秒」が原作で、「モテキ」「バクマン。」などで知られる大根監督がメガホンをとった。かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきたカメラマンの都城静(福山さん)だが、その輝かしい業績も現役の雑誌編集者にはほとんど知られていなかった。過去のある出来事をきっかけに報道写真への情熱を失ってしまった静は芸能スキャンダル専門のパパラッチに転身。借金や酒にまみれた自堕落な生活を送っていた。そんな静にある時、転機が訪れる。ひょんなことから写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者・行川野火(二階堂さん)とコンビを組まされることになる。まったくかみ合わず、ケンカばかりの2人だったが、この凸凹コンビがまさかまさかの大活躍で独占スクープを連発。そして日本中が注目する大事件に巻き込まれていく……というストーリー。 元になった「盗写1/250秒」の大ファンだった大根監督は、福山さんの主演映画の企画を考えてほしいというオファーに、カメラマンとしても活躍する福山さんだったら「盗写1/250秒」の21世紀版が実現できるかもしれないと考えたという。福山さん演じる静には、オリジナル版で原田芳雄さんが演じたアウトローなカメラマンと宇崎竜童さんが演じた狡猾洒脱な相棒のキャラクターをミックスさせた。 よくいえばナチュラルヘア、ようはボサボサ頭に無精ひげというやさぐれた雰囲気の福山さんが新鮮。そしてイマドキ女子だった野火(二階堂さん)がスクープという魔力に取りつかれていくさまも一人の記者の成長物語として楽しめる。全体に漂う猥雑でムーディーな味わいの夜の雰囲気と、写真週刊誌の編集部の舞台裏や友情・努力・勝利(あと奇策?)でスクープをものにし部数を伸ばしていく王道のストーリーとの陰と陽のバランスが絶妙。そして最後には驚きの結末が待っているというエンターテインメント作品としての面白さが2時間に凝縮されている。福山さんはこの作品で文字通り新境地を開いた。2018年にはジョン・ウー監督の「追捕-MANHUNT」の公開が控えているが、今後、福山さんがどんな役でどんな姿を見せてくれるのか楽しみになる1作だ。主題歌は「TOKYO NO.1 SOUL SET feat.福山雅治 on guitar」の「無情の夜に」。10月1日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(細田尚子/MANTAN)
「カノン」比嘉愛未、佐々木希、ミムラが3姉妹役で共演 親子の絆を硬軟織り交ぜ描く
女優の比嘉愛未さん、佐々木希さん、ミムラさんが3姉妹を演じた映画「カノン」(雑賀俊朗監督)が10月1日に公開される。映画は、富山県や石川県など北陸の町と東京を舞台に、死んだはずの母が生きていたことを知った3姉妹が、母の過去をたどりながら自分たちの傷に向き合っていく姿を描く。比嘉さんが次女・藍役で主演を務め、ミムラさんが長女・紫役、佐々木さんが三女・茜役を担当し、3人の母親を鈴木保奈美さんが演じている。北陸の美しい景色の中、3姉妹が繰り広げる人間ドラマや母親との絆が感動を誘う。 富山県黒部市に住む小学校教師の次女・岸本藍(比嘉さん)、東京で暮らす専業主婦の長女・宮沢紫(ミムラさん)、金沢で老舗料亭の若女将として働く三女・岸本茜(佐々木さん)の3姉妹は、祖母の葬儀で久しぶりに顔を合わせる。そこで3人は祖母の遺書を読み、父の死をきっかけに酒に溺れ、火事で重傷を負って入院してからは一人離れて暮らし、死んだと聞かされていた母・美津子(鈴木さん)が生きていることを知り驚く。葬儀の翌日、母がいる富山の介護施設へ向かった3人だが、アルコール性認知症を患い、娘たちを思い出せずにいる母の姿があった……というストーリー。 今作は幼いころに離別して、以降は離れて暮らしてきた母と子が再会し、子どもたちが母親に何があったのかを知る旅に出るのだが、北陸の美しい風景とは裏腹に重めの描写も出てくる。家族再生の物語といってしまえば聞こえはいいかもしれないが、そこには映画的ではありつつも、現実に一歩踏み込んだドラマが繰り広げられ、酸いと甘さがまるで二重奏のように心をかき立ててくる。大切な人との別れや心の傷、そして家族をはじめとする他者との関わりが濃密に描かれ、それでいて決してネガティブではなく、穏やかさや明るさといった希望も感じさせ、じんわりと心が温められる。家族や親子の絆はもちろん、大切な人をより大事にしたい思いにかられた。10月1日から角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「アングリーバード」大人の方が共感できる? 人気スマホゲームをアニメ化
全世界でシリーズ累計30億ダウンロードという大人気スマホゲームを劇場版アニメ化した「アングリーバード」(ファーガル・ライリー監督、クレイ・ケイティス監督)が、10月1日から公開される。丸っこい図体の鳥たちが、緑色のブタを体当たりでやっつけるという極めてシンプルな内容のゲーム。制作したロヴィオ社には「なぜ鳥たちはそんなに怒っているのか」という質問が一番多く寄せられるのだという。そこに目を付けた劇場版アニメ「怪盗グルーの月泥棒3D」(2010年)のプロデューサーが、鳥とブタの争いの起源にまつわる物語に仕立て上げた。 飛べない鳥たちが平和に暮らす島“バードアイランド”。ところが、ぶっとい眉毛に赤く丸っこい図体のレッド(声:坂上忍さん)は、いつも怒ってばかりいることから、ほかの鳥たちから厄介者扱いされていた。ある日、島にピッグ軍団なる緑色の豚の集団が友好を求めてやって来る。ほかの鳥たちが歓待する中、レッドだけは、ピッグ軍団に疑いの目を向ける。やがて、ピッグ軍団が鳥たちの卵を盗もうとしていることに気付いたレッドは、お調子者のチャック(声:勝杏里さん)や小心者のボム(声:乃村健次さん)とともに、このピンチを切り抜けるため、伝説のヒーロー、マイティ・イーグル(声:山寺宏一さん)を探す旅に出る……というストーリー。 主人公のレッドは確かに怒りんぼうだが、理不尽なことは何一つ言っておらず、ただ、自分の心に正直なだけだ。むしろ権力におもねることなく、正義にあつく、ここぞというときには仲間のために立ち上がる、いわゆる“一匹狼型のヒーロー”だ。そんな彼を中心に、びっくりすると爆発するボムや、“伝説のヒーロー”のくせに態度がまったくヒーローらしくないマイティ・イーグルなど、擬人化された鳥たちは、どれも“人間社会にもこんな人いるいる”と思わせるキャラクターばかり。 つぶらな瞳とぽよぽよ毛並みのひな鳥たちの愛らしさも悶絶もの。レッドたち鳥チームとピッグ軍団とのバトルシーンではスピード感や浮遊感が味わえ、もちろん、レッドのリーダーとしての成長ぶりを見守りながら、仲間や友情のありがたみを実感することもできる。子供はもとより大人も、いや、むしろ大人の方が、「あのキャラ、自分に似ている」と共感しながら楽しめるのではないだろうか。なお、日本語吹き替え版のみの上映で、俳優の坂上さんがレッドの声を担当するほか、元サッカー日本代表の前園真聖さんが声優初挑戦ながら、イケメン鳥ジョニーと悪者ブタのピッグ7の、一人二役を演じるという“離れ業”をやってのけている。10月1日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。3Dも同時公開。 (りんたいこ/フリーライター)
「CUTIE HONEY-TEARS-」 西内まりや初主演作 石田二コルの“美”と“ドSぶり”にも注目
女優の西内まりやさんが初めて主演を務めた映画「CUTIE HONEY-TEARS-」(A.T.&ヒグチリョウ監督)が10月1日に公開される。永井豪さんの人気マンガを原作にしながら、CGを多用したスタイリッシュなSFアクションへと世界観を一新。西内さんは新キューティーハニーとしてバトルスーツによるアクションに加え、ゴージャスで美しいドレス姿から男装まで、華麗な“七変化”も披露している。 「キューティーハニー」は、「デビルマン」「マジンガーZ」を手掛けた永井さんのマンガで、1973年に「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載を開始。女性型アンドロイドの如月ハニーと、ハニーの体内に内蔵された「空中元素固定装置」を狙う犯罪組織「パンサークロー」との戦いを描いた物語。人気を得てテレビアニメ化されたほか、庵野秀明さんが監督、佐藤江梨子さん主演で2004年に映画化もされた。 今回の実写「CUTIE HONEY-TEARS-」は、近未来、富裕層が暮らす上層階と貧困層が暮らす下層階との二層に分けられた街を舞台に、人類最大の危機を救うため人間の感情を持つアンドロイドの如月瞳(西内さん)が下層階の仲間たちと力を合わせ、上層階で世界を支配する感情を持たないアンドロイドのジル(石田二コルさん)に戦いを挑む……というストーリー。上層階で働く下層階出身のジャーナリスト・早見青児役で三浦貴大さん、キューティーハニーの生みの親・如月博士役で岩城滉一さん、下層階のレジスタンスとして高岡奏輔さん、永瀬匡さん、今井れんさんも出演する。 いわゆる“お色気シーン”がないことで話題を集めている今作だが、西内さんは随所で体当たり演技を挑戦している。パンチにキック、ワイヤにつられながらの“空中殺法”と、次々と敵をなぎ倒していくシーンは痛快だ。そんな西内さん扮(ふん)する瞳(キューティーハニー)の前に立ちふさがるのが、石田さん演じるジル。ジルは一切、感情を持たず、人間を生かし、管理することを目的に作られたアンドロイドで、まるで精巧に作られた人形のような“美”と、時おり浮かべる冷笑が相まって、見る者に強い印象を残す。瞳とジルによる人類の存続をかけた最後の直接対決は最大の見どころで、得意の冷笑とその完璧さをもって瞳を追いつめるジルの“ドSぶり”と、瞳の痛々しいほどの“やられっぷり”や己の正義を貫こうとするけなげさに、妙なエロチックさを感じてしまった。賛否両論はあって当然だが、これも一つのガールズパワームービーとして楽しむこともできるだろう。映画は10月1日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)