「64-ロクヨン-前編」 佐藤浩市主演 昭和最後の誘拐事件を端緒に人のあるべき姿を問う
「半落ち」「クライマーズ・ハイ」などの著書で知られる横山秀夫さんの小説を、佐藤浩市さん主演で映画化した「64-ロクヨン-前編」(瀬々敬久監督)が5月7日から公開される。綾野剛さん、榮倉奈々さん、瑛太さん、永瀬正敏さん、三浦友和さんら豪華キャストが出演。2部作を連続上映する作品が多い中、今作は2作とも逃さず見たい力作となった。 昭和天皇の崩御により、わずか7日で終わった昭和64(1989)年。その間に起き、迷宮入りとなった少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」が、時効を間近にした平成14(2002)年、再び浮かび上がる。「ロクヨン」を模倣した誘拐事件が起きたのだ。当時、事件に関わりながら真犯人を見つけられなかった刑事や被害者遺族らそれぞれの思いが交錯し、新たな誘拐事件の捜査が進む。警察とメディアのあつれき、刑事部と警務部の反目、さらに地方(県警)と中央(警察庁)の確執など、さまざまな障壁があらわになっていく……という展開。 前編は、県警でかつて刑事部の刑事として「ロクヨン」の捜査にも関わり、現在は警務部広報官のポストにある、佐藤さん演じる三上義信が、ある事件の加害者を匿名発表したことで、県警記者クラブと衝突する出来事を中心に語られていく。記者クラブを幹事社として仕切る東洋新聞キャップの秋川を瑛太さんが演じている。 映画が始まって早々、スクリーンにくぎづけになった。警察官、あるいはジャーナリストである前に、人としてどうあるべきか。人間関係を築くに当たり、どう考え、どう行動するべきか。そういったことを、14年前の誘拐事件を端緒に一つずつ積み上げていく。「ロクヨン」を模倣した事件の捜査は後編に委ねられ、また、後編につながる数々の伏線が仕掛けられている。その点で今作は、「周囲固めの章」といえる。 キャストに目を転じれば、佐藤さんの演技はお見事の一言に尽き、瑛太さんも憎まれ役を好演。中でも印象に残ったのは、警務部長の赤間を演じた滝藤賢一さんだ。瑛太さんの憎たらしさがウルトラ級とするなら、滝藤さんのそれはメガ級。三上に向かって暴言を吐くときは、真剣に首を絞めてやりたくなったほどだ。そのほか、夏川結衣さん、緒形直人さん、窪田正孝さん、坂口健太郎さん、吉岡秀隆さんらが出演。こんなわずかなシーンにこの俳優が!?というぜいたくなキャスティングにも驚かされた。7日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「ヒーローマニア-生活-」 東出昌大がコメディー初挑戦 世直しアクション作
福満しげゆきさんのマンガ「生活【完全版】」を基に、東出昌大さん主演で実写化した映画「ヒーローマニア-生活-」(豊島圭介監督)が5月7日に公開される。映画は、東出さん演じる会社をリストラされたさえない主人公が、謎の身体能力を誇るニート、夜は若者とケンカをする定年間近の会社員、情報収集力が高い女子高生と自警団を結成し、戦いを通して成長していく姿を描く。自警団のメンバーには東出さんのほか、窪田正孝さん、小松菜奈さん、片岡鶴太郎さんが扮(ふん)し、若手とベテランが個性的なキャラクターを演じ切っている。 会社をリストラされ、コンビニでアルバイトをしている中津(東出さん)は、バイト中に起きた事件をきっかけに、驚異の身体能力を持つニートの土志田(窪田さん)と出会い、ヒーローになることを持ちかける。その後、情報収集力に優れた女子高生・カオリ(小松さん)、夜になると悪事を働く若者を殴っているサラリーマン・日下(片岡さん)と出会い、自警団を結成する。夜な夜な悪事を働く者を裁く行為は、次第に市民からの支持を集め、巨大な組織に成長。低料金で警備をする「ともしび総合警備保障」を設立するが……というストーリー。 悪事を働く人間を裁くという勧善懲悪もののような設定でありながら、裁く側は世間的にはうだつが上がらないニートを中心とした自警団という変化球過ぎるヒーロー物語。スタイリッシュかつポップな世界観で物語に引き込まれる。窪田さん演じる土志田が見せるアクロバティックでクールなアクションは華麗だが、そのほかのヘタレで不器用ながら愛嬌(あいきょう)たっぷりのダメさ加減を見せてくれる東出さんや、ときに変顔をはさみつつ自警団の紅一点をキュートに演じる小松さんらとのギャップが新鮮。2人は新境地を切り開いた役どころで楽しませてくれる。 ヒーローものであるためアクションの重要度が高く、各キャラクターの個性がアクションで表現されるなど、アクション映画としても完成度も高く驚かされた。7日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「ROAD TO HiGH&LOW」 EXILE TRIBE出演ドラマを新たな視点で再構成
ダンス&ボーカルグループ「EXILE」「三代目 J Soul Brothers」「劇団EXILE」のメンバーらが出演する映画「ROAD TO HiGH&LOW」(久保茂昭監督)が5月7日に公開される。映画は、2015年10~12月に放送された連続ドラマ「HiGH&LOW ~THE STORY OF S.W.O.R.D.~」(日本テレビ系)を、コブラ(岩田剛典さん)、ヤマト(鈴木伸之さん)、ノボル(町田啓太さん)の3人の視点で再構成し、未放送カットや16年7月公開の映画本編のシーンも収められている。EXILEファミリーが数多く登場するほか、窪田正孝さん、林遣都さん、井浦新さん、YOUさん、小泉今日子さんらバラエティー豊かなキャストも出演し、熱いドラマを盛り上げる。 幼い頃から無二の親友であるコブラ(岩田さん)、ヤマト(鈴木さん)、ノボル(町田さん)の3人。頭がよく大学に進学したノボルは、ケンカしか取り柄のないコブラとヤマトの希望だったが、ある日、ノボルに突然の悲劇が襲いかかる。コブラとヤマトは、ノボルの戻ってくる場所として「山王連合会」を結成。「White Rascals」「鬼邪高校」「RUDE BOYS」「達磨一家」を合わせた五つのチームがせめぎ合い、それぞれの頭文字をとってSWORD地区と呼ばれるようになる。同地区にノボルが戻ってくるが、SWORD地区の支配をもくろむ「家村会」の一員となっていて……というストーリー。 今作は、ドラマ、配信、マンガ、SNS、音楽、ツアー、そして7月公開の映画と、数多くのメディアで展開されているビッグプロジェクトの一環で、ドラマのシーズン1総集編として上映されるが、コブラ、ヤマト、ノボルという3人のキャラクターの視点で物語が進むため、新たな青春ストーリーとしても楽しめる。さらにドラマ放送時から緻密な世界観や迫力満点のアクションが話題を呼んでいたが、劇場で流れる映像はスクリーンになっても見応え十分。EXILE TRIBEたちの表情や演技は素晴らしく、岩田さん演じるコブラは無口な役どころだが、豊かな表情で秘められた感情を表現し、人間ドラマに厚みを持たせた。ハードなアクションだけではなく、抗争劇の裏側で繰り広げられる熱い群像劇は必見。7日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で2週間限定公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「亜人-衝突-」 3部作の2作目 7人の亜人が集結 壮絶な戦いと息詰まる心理戦が展開
不死の新生物「亜人」をめぐる争いを描く桜井画門さんのマンガが原作の劇場版アニメ「亜人」の第2部「衝突」(安藤裕章監督)が5月6日、公開された。3部作の第2部で、亜人研究所から逃走した主人公の永井圭の行方や“帽子の男”こと佐藤の真の狙い、窮地に立った亜人管理委員会の責任者・戸崎の思いもよらない行動など第1部以上の謎と衝撃の展開が待ち受けている。 「亜人」は、2012年から「good!アフタヌーン」(講談社)で連載中のマンガが原作。交通事故をきっかけに、何度死んでも生き返る新生物・亜人であることが判明した少年・永井圭が、警察などの捕獲作戦から逃れる姿を描いている。劇場版アニメは3部作で、第1部「衝動」が2015年11月27日に公開。テレビアニメ版も16年1月期に放送された。圭を宮野真守さんが演じているほか、声優として福山潤さん、小松未可子さんや細谷佳正さん、櫻井孝宏さんらが出演している。 第2部はテロリスト・佐藤の呼びかけに応じて7人の亜人が集結し、佐藤は彼らに驚くべき計画「大量殺りく」を告げる。集められた亜人の一人、中野攻は、佐藤の話に戸惑いを隠せずにいたが……。佐藤対中野、戸崎対永井、そして中野対永井の亜人対人間のみならず亜人対亜人の壮絶な戦いも描かれる。新キャストとして鈴村健一さん、森川智之さん、坂本真綾さん、梶裕貴さんらが参加。 アニメーション製作はCGアニメでは世界の最先端を行っているスタジオ「ポリゴン・ピクチュアズ」が担当。監督・演出を瀬下寛之総監督と安藤監督のコンビが手がけた。亜人ならではのダイナミックでスピーディーな戦いと息詰まる心理戦は前作以上。9月23日に公開される完結編となる第3部の前に、この第2部を必ず見て予習しておきたい。主題歌は15年にメジャーデビューした4人組バンド「LAMP IN TERREN」(ランプ・イン・テレン)の「innocence」。6日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で3週間限定公開。(細田尚子/MANTAN)