「ルドルフとイッパイアッテナ」井上真央と鈴木亮平が声優 はっとする言葉に出合えるアニメ
映画「ポケットモンスター」シリーズの湯山邦彦さんと、テレビアニメ「パックワールド」の榊原幹典さんが共同で監督を務めた劇場版3DCGアニメ「ルドルフとイッパイアッテナ」が、8月6日に公開される。女優の井上真央さんと俳優の鈴木亮平さんがルドルフとイッパイアッテナの声を担当し、2人とは気付かないほどの熱演を“聞かせて”いる。91年にNHKで放送された母と子のテレビ絵本「ルドルフとイッパイアッテナ」でナレーションと猫の声すべてを一人で演じたタレントの毒蝮三太夫さんが、今作で“ゲスト出演”しているのも“聞き逃せ”ない。 原作は、1987年の刊行以来、シリーズ累計100万部を超える斉藤洋さんの児童小説。原作の杉浦範茂さんによるルドルフの絵は、失礼ながら目つきが鋭く、可愛いとは言い難い。それが今作では、つぶらな瞳のキュートな猫に変身し、愛嬌(あいきょう)と威厳を併せ持つノラ猫のボス、イッパイアッテナとの友情を育みながら大冒険を繰り広げる。 岐阜で暮らす猫のルドルフ(声・井上さん)は、飼い主のリエちゃんが大好き。今日もおばあちゃんの家に行くリエちゃんに同行しようと家を出るが、ちょっとした間違いから長距離トラックに乗ってしまう。気付くとそこは東京。見たことのない景色にぼう然とするルドルフ。そんな彼を助けたのが、人間の文字が理解できるしま模様のボス猫、イッパイアッテナ(声・鈴木さん)だった。イッパイアッテナと寝食を共にするうちにノラ猫として成長していくルドルフ。しかし、彼の心にはいつもリエちゃんの元に帰りたいという思いがあった……というストーリー。 製作陣がこだわったというだけあり、ルドルフをはじめとする猫たちの、ふわふわ、ぽやぽやした毛並みや動きの滑らかさに、改めて、コンピューターグラフィックス(CG)の威力を感じた。猫目線を意識した低い位置からの映像が、普段の生活では味わえないスリル感を追体験させ、さらに、日本の美しい四季折々の風景が、ルドルフのノラ猫生活が長期に及んでいることを物語り、リエちゃんの元に早く返してあげたいという思いが募った。そういった映像面からもたらされる感慨の一方で、イッパイアッテナがルドルフを、「やみくもに帰ろうとするのは教養のないやつがすることだ」とたしなめたり、「絶望は愚か者の答えだ」と叱ったりするなど、児童小説が原作とはいえ、大人でもはっとさせられる言葉に出合うことができる。 ノラ猫というと、とかく貧相で可哀そうなイメージがあるが、ルドルフたちを見て、彼らも彼らなりに悠々と生きているんだなあと、ちょっと心が軽くなった。6日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
「ニュースの真相」2人のオスカー俳優の報道人としての演技に注目 闘う人々に響く作品
ブッシュ米大統領の再選を目前に、米国CBSニュースのスクープ番組の裏側で起きた実話を基にした「ニュースの真相」(ジェームズ・バンダービルト監督)が8月5日から公開される。ケイト・ブランシェットさんとロバート・レッドフォードさんという2人のオスカー俳優が実在の人物に扮(ふん)し、真実を求めて闘う報道人を渾身(こんしん)の演技で見せている。 2004年。メアリー・メイプス(ブランシェットさん)は、20年のキャリアを持つCBSニュースのプロデューサー。番組「60ミニッツ!!」でアンカーを務めるジャーナリストのダン・ラザー(レッドフォードさん)とは、父と娘のような信頼関係で結ばれている。大統領選の年に新たなテーマに向かって取材を始めたメアリーは、現職のジョージ・W・ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑に迫るために取材チームを結成し、裏付け調査を行う。スクープを放送し、一度はセンセーションを巻き起こしたが、保守派のブロガーに証拠の文書偽造を疑われたことをきっかけに、批判の矢面に立たされ……という展開。 冒頭、メアリーの功績として、イラクのアブグレイブ刑務所での捕虜虐待事件のスクープが伝えられ、敏腕プロデューサーとしての姿が印象づけられる。彼女の報道人としての闘いを軸に、権力に立ち向かうリスクや勇気が語られていく。前半と後半で、メアリーの立場がガラリと変わる。その過程が彼女の仕事ぶりとともに緊張感を持って刻々と描かれ、スクリーンに釘づけになる。ブランシェットさんの演技が秀逸だ。政権を揺るがすスクープに向かって突進していくときの意気揚々とした姿。証拠を偽証だといわれて、すべてが翻っていき窮地に立たされたあとの、人間的な弱さにも注目だ。それでも決して信念に屈しない女性の美しい姿に見ほれてしまう。 プロが真実をつかんだという確証も、無名のブロガーによって隙を突かれてしまう。さらに、出来レースである内部調査、旧来型のメディアの役割の崩壊といった今日的な問題をまざまざと見せつけられる。メアリーいわく「人間性まで疑われて、異常な騒ぎとなる」というような……。まったく息苦しい社会だ。だからこそメアリーをそっと支えるダンや夫の存在が温かい。ジャーナリストは何のために闘っているのか。虐待、病苦、自然災害などと闘っている人々が世界中にいるからだ。最後のダンのせりふが闘うすべての人々に響くだろう。5日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
「劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間」 戦いの先にある衝撃
特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」の劇場版最新作となる「劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂(アイコン)とゴースト運命の瞬間(とき)」(諸田敏監督)が8月6日に公開される。「仮面ライダーゴースト」(テレビ朝日系)は、主人公の天空寺タケル(西銘駿さん)が異世界の怪人「眼魔(がんま)」の手により命を失い、完全に生き返るため「15の偉人」のアイコンを求めて戦う設定が注目を集めている。劇場版ではタケルが全世界の人間をゴーストにしようとたくらむダークゴーストの陰謀に立ち向かう。新たなライダー「仮面ライダーゼロスペクター」に変身する深海大悟役で俳優の沢村一樹さんがゲスト出演している。 ある日、天空寺タケル(西銘さん)たちの前に、3人の仮面ライダーダークネクロムを率いた仮面ライダーダークゴーストが現れる。戦いの中、タケルらはダークゴーストを追って七色の光の中へ入っていくと、歴史上の偉人たちの魂が実体化して暮らしている不思議な村にたどり着く。ダークゴーストの目的は、100の眼魂を集めて「究極の眼魂」を完成させ、すべての世界の人間をゴーストにすること。ダークゴーストの野望を阻止するため、タケルと深海マコト(山本涼介さん)、アラン(磯村勇斗さん)が戦いに身を投じるが……というストーリー。 テレビ放送もクライマックスが近付いてきているゴーストだが、「切ない仮面ライダー」というコンセプトを、今回の劇場版でも痛いほど感じさせてくれる。冒頭でタケルとアカリ(大沢ひかるさん)がとある約束をするのだが、この指切りのシーンがクライマックスへ向かうにつれ、かなり効いてくる。「仮面ライダーゴースト」では家族に関するエピソードが登場人物それぞれで描かれてきたが、沢村さん演じるマコトとカノン(工藤美桜さん)の父親・大悟の描写もかなり濃く、思わず見入ってしまう。偉人たちと力を合わせたり、敵・味方入り乱れてのライダーたちのバトルなど、劇場版ならではのスケール感あるド派手なアクションは文句なくカッコいい。劇場版のキャッチコピー「さよなら、オレ」という言葉の意味を知ったとき、かなりの衝撃を受けた。テレビ版で主題歌を担当するロックバンド「氣志團」のメンバーが、音楽の偉人たちとして登場するのはシャレが利いていて面白い。6日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)