「トゥモローランド」 ロマン満載で描かれる“理想の世界”
米俳優ジョージ・クルーニーさん主演のディズニーの新作映画「トゥモローランド」(ブラッド・バード監督)が6月6日から公開される。ディズニーランドの創設者、ウォルト・ディズニーが残した最大の謎で最高のプロジェクト「トゥモローランド」を巡って繰り広げられるミステリーアドベンチャーで、劇中に「トゥモローランド」として登場するテクノロジーが発達したロマン満載の“夢の世界”の描写や、ヒロインのケイシーをはじめ個性的な登場人物たちが繰り広げるスリリングな展開が見どころだ。 ある日、持ち物の中にまぎれ込んでいた見慣れぬピンバッジに触れ、テクノロジーの発達した未知の世界「トゥモローランド」を訪れた冒険心あふれる少女、ケイシー・ニュートン(ブリット・ロバートソンさん)は、現実に引き戻されてからも再びその世界へ戻ろうとする中で謎の少女・アテナと出会う。アテナに誘われるままに、かつて「トゥモローランド」へ行ったことがあるというフランク・ウォーカー(クルーニーさん)の元を訪れるたケイシーは、ウォーカーとアテナとともに「トゥモローランド」へ行こうとするが、そこにケイシーたちを狙う謎の敵も現れる……というストーリー。謎の少女・アテナ役をラフィー・キャシディさん、「トゥモローランド」と深い関わりを持つ謎の男、デビッド・ニックス役をヒュー・ローリーさんが演じている。 見どころの一つは、やはりテクノロジーが発達した、すべてが可能になる“理想の世界”として描かれている「トゥモローランド」の描写だろう。空を飛ぶ電車、空中遊泳を楽しむ人々、宇宙旅行……と、かつてマンガで読んだような未来がそのまま映像の中で立体化されている光景を見て、心が浮き立つ人は少なくないだろう。「ドラえもん」などで未来都市に憧れた経験を持つ人なら、おそらく誰もが眼前に現れたその夢の世界を見て、自分もその世界に遊んでみたいと思うに違いない。また、行動的なケイシーに引っ張られるように進んでいく物語もスリリングで飽きさせない。世界的に有名な観光地も思わぬ役回りで登場するなど、遊び心も満載だ。序盤では、少年時代のウォーカーが「イッツ・ア・スモール・ワールド」を体験するなどディズニーの世界ならではのシーンも出てきてディズニーファンを存分に楽しませてくれる。6日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(河鰭悠太郎/毎日新聞デジタル)
「ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス」 感情面に焦点当て前2作と異なる展開
ジェニファー・ローレンスさん主演の人気シリーズ「ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス」(フランシス・ローレンス監督)が6月5日から全国で公開される。2012年の1作目、翌年の2作目に続き3作目となる今作は、シリーズ最終章の前編に当たり、アクションが中心だった前2作とはがらりと趣を変え、登場人物の情緒面を描くことに重点が置かれている。ローレンスさんやジョシュ・ハッチャーソンさんといったレギュラー陣に加え、「アリスのままで」(14年)で今年のアカデミー賞主演女優賞に輝いたジュリアン・ムーアさんが出演しているのも見どころだ。 前作の最後で、ハンガー・ゲーム記念大会の闘技場から救出されたカットニス(ローレンスさん)。彼女が収容されたのは、滅亡したとされていた第13地区の地下にある反乱軍の秘密基地だった。反乱軍を統率するコイン首相(ムーアさん)は、腹心のプルターク(フィリップ・シーモア・ホフマンさん)らとともに、スノー大統領(ドナルド・サザーランドさん)が君臨する独裁国家パネムを倒そうと準備を進めていた。一方、スノー大統領は、人質にとったピータ(ハッチャーソンさん)をプロパガンダ番組に出演させ、政府に反抗する民衆の戦意を喪失させようとする……という展開。 文字通り、起承転結の「転」を担う今作では、カットニスはこれまでの戦いで身も心も疲弊しており、そこからどのように立ち上がっていくのかに焦点が当たっている。ピータの変わりようにも驚かされ、それがまたカットニスの心に大きな影を落とすことになる。反乱軍のリーダー、コイン首相とカットニスの関係がどう変化していくのかも気になる点で、このアカデミー賞女優2人の共演シーンにも注目だ。その一方で、カットニスの幼なじみゲイル(リアム・ヘムズワースさん)の活躍の場面が増えているのは、ファンにはうれしいところ。前作同様、「ここで終わるの」的エンディングでクリフハンガー状態を味わわされるが、それもまたシリーズものの定めと受け止め、後編「レボリューション」の今年11月の封切りを待つことにしよう。6月5日よりTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
「おかあさんの木」 鈴木京香主演 戦地へ息子を送り出す母の大きな愛に胸打たれる
女優の鈴木京香さん主演の映画「おかあさんの木」(磯村一路監督)が6月6日に公開される。約45年前に発表された大川悦生さんの児童文学が原作で、戦後70年企画として「解夏(げげ)」(2004年)などの磯村監督がメガホンをとり、映画化された。7人の息子を戦争にとられながらも無事を祈って帰りを待つ母の愛や、親子の愛情などを描いている。戦争によって人生を翻弄(ほんろう)された人々の姿や心情を丁寧に表現し、どのような時代であれ、強く生きる人々に心打たれる。 昭和初期、長野県の小さな田舎の村に暮らす女性ミツ(鈴木さん)は、謙次郎(平岳大さん)と結婚し7人の息子に恵まれ、裕福ではないが幸せな日々を送っていた。ある日、謙次郎が心臓発作で急死し、ぼうぜんとするミツだったが、さらに戦争が始まり一郎(細山田隆人さん)、二郎(三浦貴大さん)ら成長した息子たちが次々と徴兵されてしまう。ミツは息子を送り出すたびに桐の木を1本ずつ庭に植え、息子たちの帰りを待ち続けるが……というストーリー。 児童文学を基にした古典的な泣ける映画だと分かっていても、じんわりと涙腺を刺激される。序盤の明るい雰囲気から一転、当時の状況を再現するかのように次第に暗く重くなっていく展開で、悲しみとつらさが詰まっているが、その一方で母親の愛情を再確認することができる。戦争を題材にした映画でも、身内を兵隊として送り出した母や家族を描いた作品は少なく、通常の戦争映画とは一線を画す。構成はシンプルな反戦映画だが、母親役を演じる鈴木さんから漂う風格が物語に重みを与え、単純な感動ものだけにとどまっていない。子供たちの姿を少年時代から描いていることも感情移入に拍車をかけ、涙腺を刺激する。鑑賞後は、現代の平和な日常がとてつもなくいとおしく感じられた。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「台風のノルダ」元ジブリ新井陽次郎の劇場アニメ監督デビュー作 少年らの友情物語
スタジオジブリで「借りぐらしのアリエッティ」などのアニメーターを務めた新井陽次郎さんの劇場版アニメ監督デビュー作「台風のノルダ」が6月5日に公開された。「陽なたのアオシグレ」(2013年)で知られるスタジオコロリドの2年ぶりの新作で、「フミコの告白」「陽なたのアオシグレ」の石田祐康さんがキャラクターデザインと作画監督を担当した。離島の中学校を舞台に、少年たちの友情が描かれる。俳優の野村周平さんが主人公の少年・東シュウイチ役で、劇場版アニメの声優に初挑戦していることも話題だ。 とある離島の中学校では、観測史上最大級の台風が近づいている中、翌日に控えた文化祭の準備が進められていた。東(声・野村さん)は幼い頃から続けていた野球をやめたことがきっかけで、親友の西条(声・金子大地さん)とケンカ。そんなとき、東は突然現れた赤い目をした不思議な少女ノルダ(声・清原果那さん)と出会い……というストーリー。
子供の頃、台風が来るとなると大人たちが慌ただしくしていても、なぜかワクワクするような感覚になるなど、大人たちと違った感じ方をしていたという人も多いだろう。今作の映像はそういった感覚を思い出させ、どこかノスタルジックな風景の描写と合わせて味わい深い。台風の話にピンとこなくとも、親友とのケンカや文化祭前夜の独特な雰囲気といった親近感が湧くシチュエーションが用意され、そこで不思議な少女に出会うという世界観に入り込みやすい。日常の中に潜むファンタジーのバランスが絶妙で、短編ながらも多彩な要素が絡み合っていて見応えは十分。中でも物語の軸となる少年2人の友情からは、言葉にすることや素直に話し合うことの大切さを痛感させられる。石田さんが監督が務めた「陽なたのアオシグレ」は同時上映。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「トイレのピエタ」 RADWIMPS・野田洋次郎の初主演作 リアルな死生観に感動
ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎さんの初主演映画「トイレのピエタ」(松永大司監督)が6月6日に公開される。手塚治虫さんが死の直前まで書いていたという病床日記の最後のページに残されていたアイデアに着想を得たオリジナル作。突然余命3カ月を宣告された青年が、一人の女子高生と出会い、交流を深めていく姿を描いている。演技初挑戦の野田さんと、1年にわたるオーディションの末にヒロインに選ばれた杉咲花さんが、生きる喜びやつらさ、切なさなどを体当たりで表現している。ドキュメンタリー映画「ピュ~ぴる」の松永監督の初の長編映画でもある。 画家への夢をあきらめ窓拭きのアルバイトをして暮らす園田宏(野田さん)は、美大時代の恋人・さつき(市川沙椰さん)と再会し、彼女の個展に誘われるが、絵など見る気にもなれないでいた。ある日、突然倒れ病院へ運ばれた宏は、精密検査の結果を聞くのに家族を呼ばなければならなかったが、郷里の両親に連絡する気になれず、偶然知り合った女子高生の真衣(杉咲さん)に妹役を演じてもらう。そこで余命3カ月を告げられた宏は、漠然とした恐怖に支配されながらも入院生活を送ることになる……というストーリー。 松永監督が10年ほど前に出会った手塚さんの日記からアイデアを得たという今作は、透明感のある世界観ながらひりひりとした焦燥感が印象的だ。余命少ない主人公という設定の物語は数多くあれど、今作だから出演したという初挑戦とは思えない野田さん演技や、魂の叫びが聞こえてきそうな花咲さんの演技からは生々しさが感じられる。いなくなる人と残される人が真剣にぶつかり合う姿に、絶望と執着の間に見える小さな光が自然体で表現されていて胸に突き刺さる。生きていると楽しさもあるが、それを上回るぐらいのつらさも多く、生きる意味を感じられないと日々嘆いてしまうこともあるだろう。そんなふうに人の心に一石を投じる作品だ。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
「奇跡のひと マリーとマルグリット」高次の人間の魂が受け継がれていく姿に感涙
ジェニファー・ローレンスさん主演の人気シリーズ「ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス」(フランシス・ローレンス監督)が6月5日から全国で公開される。2012年の1作目、翌年の2作目に続き3作目となる今作は、シリーズ最終章の前編に当たり、アクションが中心だった前2作とはがらりと趣を変え、登場人物の情緒面を描くことに重点が置かれている。ローレンスさんやジョシュ・ハッチャーソンさんといったレギュラー陣に加え、「アリスのままで」(14年)で今年のアカデミー賞主演女優賞に輝いたジュリアン・ムーアさんが出演しているのも見どころだ。 前作の最後で、ハンガー・ゲーム記念大会の闘技場から救出されたカットニス(ローレンスさん)。彼女が収容されたのは、滅亡したとされていた第13地区の地下にある反乱軍の秘密基地だった。反乱軍を統率するコイン首相(ムーアさん)は、腹心のプルターク(フィリップ・シーモア・ホフマンさん)らとともに、スノー大統領(ドナルド・サザーランドさん)が君臨する独裁国家パネムを倒そうと準備を進めていた。一方、スノー大統領は、人質にとったピータ(ハッチャーソンさん)をプロパガンダ番組に出演させ、政府に反抗する民衆の戦意を喪失させようとする……という展開。 文字通り、起承転結の「転」を担う今作では、カットニスはこれまでの戦いで身も心も疲弊しており、そこからどのように立ち上がっていくのかに焦点が当たっている。ピータの変わりようにも驚かされ、それがまたカットニスの心に大きな影を落とすことになる。反乱軍のリーダー、コイン首相とカットニスの関係がどう変化していくのかも気になる点で、このアカデミー賞女優2人の共演シーンにも注目だ。その一方で、カットニスの幼なじみゲイル(リアム・ヘムズワースさん)の活躍の場面が増えているのは、ファンにはうれしいところ。前作同様、「ここで終わるの」的エンディングでクリフハンガー状態を味わわされるが、それもまたシリーズものの定めと受け止め、後編「レボリューション」の今年11月の封切りを待つことにしよう。6月5日よりTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)