「伊藤くん A to E」自意識過剰の“痛男”を岡田将生が怪演 木村文乃とW主演で異色の恋愛ストーリー
俳優の岡田将生さんと女優の木村文乃さんがダブル主演した映画「伊藤くん A to E」(廣木隆一監督)が、1月12日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)で公開。木村さん演じる女性脚本家が、脚本のネタにしようと「伊藤」という同じ名前の男について悩む4人の女たちの話を聞くうち、4人が語る「伊藤」は同一人物かもしれないと感じ始め……という展開。5人の女性を振り回す自意識過剰で無神経な“痛男(いたお)”の伊藤誠二郎を岡田さんが“怪演”している。 「伊藤くん A to E」は、「ランチのアッコちゃん」などのヒット作を生み出してきた柚木麻子さんが2013年に発表した直木賞候補作(幻冬舎)が原作。落ちぶれたアラサー脚本家の矢崎莉桜(木村さん)が「伊藤」という同じ名前の男について悩む4人の女たち(【A】~【D】)から切実な恋愛相談を受けながら、ドラマプロデューサーの田村伸也(田中圭さん)にたきつけられて起死回生の脚本のネタにしようとたくらむ。4人の女性が語る「伊藤」は同一人物かもしれないと手応えを感じ始めた矢先、莉桜の思惑は打ち砕かれ……という異色の恋愛ストーリー。 4人の女性は佐々木希さん、志田未来さん、夏帆さん、池田エライザさんが演じている。そのほか中村倫也さん、田口トモロヲさんらが出演。昨年8月からMBS・TBSで放送されたドラマ版では、最終回まで伊藤くんが姿を見せず、誰が演じるのか話題を呼んでいた。 映画版では岡田さんが演じる伊藤くんが大活躍。前半は、伊藤くんと5年付き合っていると思っていたが貢がされて捨てられる「都合のいい女」の智美(佐々木さん)、伊藤くんからストーカーもどきに追いかけられる「自己防衛女」の修子(志田さん)、3年も伊藤くんに片思いしていたが「重い」といわれてフラれ自暴自棄になる大学院生の実希(夏帆さん)、親友の実希が思いを寄せる伊藤くんを奪おうとする聡子(池田さん)の4人のエピソードが展開するが、各場面で自意識過剰で傍若無人、時に幼稚にすねたりする伊藤くんの対応にイラッとさせられる。 ただ見ていると、嫌悪感を抱きながらも、伊藤くんが次にどういう反応をするのかワクワクしている自分もいて、思わず最後は莉桜と伊藤くんがどう対峙(たいじ)するのか楽しみになっていた。撮影中は、各女優が伊藤くんと対峙するシーンのカットがかかると、伊藤くんに対して(決して岡田さんに対してではなく)「気持ち悪い」とつぶやき、眉をひそめていたというが、伊藤くんを乗り越えた5人の女性の晴れやかな表情に、こちらもスカッとした気分になった。さて、伊藤くん自身の結末は……映画館で確認してほしい。(細田尚子/MANTAN)
「悪と仮面のルール」悪となるために作られた男を演じる玉木宏の新境地 究極の愛の形とは?
俳優の玉木宏さんの主演映画「悪と仮面のルール」(中村哲平監督)が1月13日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開。芥川賞作家、中村文則さんの同名小説が原作。特殊な環境で育ってしまった男が、愛する人を守るために葛藤しながらも罪を重ねていく姿を描く。 絶対的な悪=“邪”になるために“つくられた”ことを父親に告げられた11歳の久喜文宏(玉木さん)。自分を完全な邪とすべく、初恋の女性・香織(新木優子さん)に父が危害を加えようとしていることを知り、文宏は父を殺して失踪する。十数年後、文宏は顔を変えて新谷弘一という別人になりすまし、香織を守るために罪を犯すことを決意するが……というストーリー。ほかに吉沢亮さん、光石研さん、柄本明さんらが出演している。 愛する女性を守ることに存在意義を見いだし、その愛ゆえに悪に手を染めていく主人公を熱演する玉木さんの姿に、これまでの演じてきた爽やかさや清潔感あふれる役のイメージとがらりと変わり、その悪のたたずまいにドキリとさせられた。 難解なせりふや全編を通して陰鬱とした雰囲気が漂う独特の世界観ながら、実は恋愛ものとしても楽しめる側面もあり、手段を選ばない文宏の行動にどこかシンパシーを感じる部分もある。 善と悪という答えがあるようで正解がないという文学的な要素に考えさせられつつも、クライマックスでの文宏の出した一つの答えに胸がキュッと締め付けられた。玉木さんや吉沢さんらイケメンがダークな役を演じると、妖艶さに思わず見とれてしまう。(遠藤政樹/フリーライター)
「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」必殺技連発の圧巻のバトルシーン! 熱い人間ドラマも
1970年代を中心に人気を集めたロボットアニメ「マジンガーZ」の新作劇場版アニメ「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」(志水淳児監督)が1月13日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。マジンガーZや光子力研究所の仲間によって平和を取り戻してから10年後が舞台。謎の復活を遂げた宿敵のDr.ヘルと主人公・兜甲児らの戦いが描かれる。 「マジンガーZ」は、地球の平和を守るため、主人公・兜甲児がスーパーロボット「マジンガーZ」を操り、世界征服をたくらむ悪の天才科学者Dr.ヘルが作り出した機械獣軍団と戦う姿が描かれた。永井豪さんのマンガが72年にマンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載開始。テレビアニメが72~74年に放送された。 新作「INFINITY」は、70年代に放送されたテレビアニメの10年後の世界が舞台。パイロットを離れ科学者となっていた兜甲児はある日、富士山の地中に埋まった超巨大遺跡インフィニティと、そこから現れた謎の生命体リサに遭遇する。時を同じくして謎の復活を遂げたDr.ヘルは、無限の可能性を秘めるインフィニティで、野望を完遂しようとしていた。絶体絶命の危機に、伝説のパイロット・兜甲児がマジンガーZと共に再び立ち上がる……という展開。 森久保祥太郎さんが兜甲児の声優を務め、甲児の恋人の弓さやか役で茅野愛衣さん、甲児の弟・兜シロー役で花江夏樹さん、謎の少女リサ役で上坂すみれさんが出演。初代・兜甲児の声優で知られる石丸博也さん、テレビアニメシリーズで弓さやか役を務めた松島みのりさんも声優として出演するなど、新旧の声優たちが集結することでも話題になっている。 最新の映像で復活したマジンガーZ、グレートマジンガーは、まさにカッコいいの一言。子供のころに胸を高鳴らせた記憶が一気によみがえった。Dr.ヘルが乗り込む地獄大元帥、あしゅら男爵のアシュラーP1などの敵のロボットも負けず劣らずの迫力で、戦闘シーンを盛り上げる。終盤のバトルシーンは、「ロケットパンチ」「ブレストファイヤー」など必殺技のオンパレード。大人になった往年のファンも納得の出来に仕上がっているのではないだろうか。 バトルシーンのすごさだけでなく、「それは、神にも悪魔にもなれる」という本作のキャッチコピーの通り、善悪の意味を問う奥深い作品ともなっている。大人になった甲児とさやかの関係、物語のカギとなるリサの存在、炎ジュンと剣鉄也の愛、ボスたちの友情など、思わずグッとくる人間ドラマも必見だ。ボス、ヌケ、ムチャの3バカトリオのギャグや、マジンガールズの活躍というお色気要素が絶妙なバランスで織り込まれている。見終わった後には爽快な気分を味わえた。(岡本温子/MANTAN)
「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」宮崎吾朗が吹き替え版を監修 力を封じられた孫悟空の成長談
中国の伝奇小説「西遊記」を基にした3DCG劇場版アニメ「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」(ティエン・シャオポン監督)が1月13日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。本来の力を封じられた孫悟空が、子供を連れ去る妖怪に挑む姿を描く。2015年に中国で公開されるや、中国産アニメとして国内歴代1位の興行収入を記録するなど大ヒットした。日本語吹き替え版では、「ゲド戦記」(06年)や「コクリコ坂から」(11年)などで知られる宮崎吾朗さんが監修を担当した。 孫悟空が五行山に封じ込められてから500年。妖怪が町に現れ、子供をさらう事件が起きていた。ある日、修行中のリュウアーは、妖怪に襲われた女の子を助けようとし、五行山に迷い込み、そこで偶然に悟空を目覚めさせてしまう。しかし悟空の本来のパワーは封印されたまま、なりゆきで猪八戒も加えた3人で長安へ向かうことになり……というストーリー。 中国アニメは日本ではなじみが薄いが、クオリティーは想像をはるかに超えていて驚かされた。中でも、あっという間にファンタジックな世界観に連れて行ってくれるのが、自然や登場人物たちの衣装をはじめ、きらびやかで鮮やかな独特な色彩だ。節目となる出来事がない旅の日常的なシーンでも、その美しい映像に思わず見とれてしまう。繊細に変化していくキャラクターの表情も見ていて感情移入しやすい。アクションシーンは、華麗で流れるようなダイナミックな動きで圧倒された。 誰もが知っているが、誰も知らない孫悟空のイケメンぶりを、肩の力を抜いて楽しみたい。日本語吹き替え版には、孫悟空役で咲野俊介さん、リュウアー役で羽村仁成さん、敵キャラクターである混沌役で子安武人さん、猪八戒役で遠藤純一さんらが声を担当している。(遠藤政樹/フリーライター)