「翔んで埼玉」 二階堂ふみとGACKTが埼玉をディスりながらボーイズラブを展開
女優の二階堂ふみさんと歌手のGACKTさんが出演する映画「翔んで埼玉」(武内英樹監督)が、2月22日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開。原作は、「パタリロ!」で知られる魔夜峰央さんが1982年に発表し、2015年に単行本として復刊されたマンガ。原作は、埼玉を貶(おとし)める描写であふれているが、「テルマエ・ロマエ」シリーズなどで知られる武内監督は、その精神を受け継いで埼玉をディスっている。その痛快な仕上がりに感服する。 東京屈指の名門校、白鵬堂学院で生徒会長を務める壇ノ浦百美(二階堂さん)は、東京都知事(中尾彬さん)の息子であることを笠に着て埼玉県人を迫害していた。そんな中、米国帰りの麻実麗(GACKTさん)が転校してくる。実は麗は隠れ埼玉県人で、埼玉と東京の「通行手形」撤廃を目指して活動する埼玉解放戦線のメンバーだった。麗に恋してしまった百美は、麗と行動を共にすることを決意する……というストーリー。 二階堂さんとGACKTさんがボーイズラブを繰り広げながら埼玉解放のために戦う「伝説パート」と、その伝説の物語を、ある一家がカーラジオで聞いている、原作にはない「現代パート」の二つが展開していく。 くだらないが面白い。そもそも、二階堂さんが少年役というところからぶっ飛んでいる。その百美が、顔をゆがめて埼玉県人をディスったり、目をキラキラさせて麗を見つめたりと、二階堂さんのバリエーション豊かな表情は、見ていて飽きない。麗を演じるGACKTさんのなり切りぶりもすごい。百美にキスをして、「もっと素直におなりよ」とささやきニヒルな一面を見せたかと思うと、埼玉県のシンボル、シラコバト付きの草加せんべいを前にうろたえてみせるなど、浮世離れしたキャラクターを軽やかに演じている。 ほかにも、京本政樹さん扮(ふん)する伝説の埼玉県人・埼玉デュークの妖艶な美しさや、伊勢谷友介さん扮する映画オリジナルのキャラクターで、埼玉の永遠のライバル、千葉解放戦線の戦士・阿久津翔の狂乱ぶりなど見どころは満載。その阿久津と麗の、ボーイズラブの極みを見せつける場面では、ぞくぞくさせられること間違いなしだ。(りんたいこ/フリーライター)
「サムライマラソン」 佐藤健、森山未來、染谷将太がひた走る 日本初のマラソン大会を英国出身監督が描く
日本初のマラソン大会を題材にした映画「サムライマラソン」(バーナード・ローズ監督)が、2月22日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開。前半は、葛藤や野望を抱えた侍たちがゴールを目指す姿を笑いを交えながら描出。後半は一転、幕府の差し向けた刺客を、侍たちが食い止めようと奮起する活劇になる。佐藤健さんや森山未來さん、染谷将太さんら今をときめく俳優たちが、泥まみれになりながらひた走る姿は見ものだ。 幕末の1855年。安中藩主の板倉勝明(長谷川博己さん)は、開国を迫る米国の侵略を疑い、その脅威に備え、藩士の心身鍛錬のために15里(約58キロ)に及ぶ「遠足(とおあし)」を開催する。優勝すればどんな望みもかなえてもらえると聞いた藩士たちは色めき立つ。ところがその遠足を謀反の動きと見た幕府大老の五百鬼祐虎(豊川悦司さん)は、安中藩とり潰しを狙い、勝明暗殺の刺客を放つ。果たして藩の運命は? 優勝は誰の手に……というストーリー。ほかに小松菜奈さん、青木崇高さん、竹中直人さんらが出演する。 原作は、日本初のマラソン大会といわれる「安政遠足(あんせいとおあし)」を基に描いた土橋章宏さんによる時代小説「幕末まらそん侍」(ハルキ文庫)。勝明の娘・雪姫(小松さん)との婚姻を揺るぎないものにするために走る重臣の息子・辻村平九郎(森山さん)、金か名誉かで揺れる足軽の上杉広之進(染谷さん)、藩を守るために走る隠密の唐沢甚内(佐藤さん)らそれぞれの人間性が走り方に表れていて面白い。 不思議な映画だ。正直なところ、見る前は、監督が英国出身であることから“なんちゃって侍映画”になっているのではないかと懸念した。ところが実際は幕末の日本を描いた時代劇として違和感なく仕上がっていて驚いた。「不滅の恋/ベートーヴェン」(1994年)や「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」(2013年)といった伝記映画を手がけてきたローズ監督だけのことはあると納得。(りんたいこ/フリーライター)
「アリータ:バトル・エンジェル」 人気マンガをハリウッドで映画化 サイボーグに共感できる!アクション大作
木城ゆきとさんの人気マンガ「銃夢(がんむ)」をハリウッドで実写化した映画「アリータ:バトル・エンジェル」(ロバート・ロドリゲス監督)が2月22日、TOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開。「タイタニック」(1997年)や「アバター」(2009年)など映画史を塗り替えてきたトップクリエーターのジェームズ・キャメロンさんが脚本・製作を担当したことも話題で、3DCGで描かれたサイボーグ、アリータの生き生きした表情とありえないアクションに目がくぎづけになった。 「銃夢」は、1990~95年にマンガ誌「ビジネスジャンプ」(集英社、休刊)で連載され、その後2000~14年に続編「銃夢 LastOrder」が「ウルトラジャンプ」(同)と「イブニング」(講談社)で連載された。現在はシリーズの最終章「銃夢火星戦記」が「イブニング」で連載されている。アニメ化もされた。 “支配する者”と“支配される者”の二つの世界に分断された謎めいた遠い未来が舞台。サイバー医師のイド(クリストフ・バルツさん)は、がれきの中から少女の人形の頭部を拾う。彼女は300年前のサイボーグであり、なんと脳は生身のまま生きていた。イドは、過去の記憶を失っていた少女に新たな機械の体を与え、アリータと名付けて成長を見守る。ある日、自分の中に並外れた戦闘能力が眠っていることに気づいたアリータは、自分が300年前に失われたテクノロジーで作られた“最強兵器”だと知る。アリータは与えられた自分の命の意味を見つけるため、また、二つの世界の秩序を揺るがすために立ち上がる……というストーリー。 日本語吹き替え版では、女優の上白石萌音さんがアリータの声優を務めるほか、イド役に森川智之さん、青年ヒューゴ役に島崎信長さん、「モーターボール」の支配者ベクター役に鶴岡聡さん、アリータに敵対心を持つ非道なハンター戦士ザパン役に神谷浩史さんらが出演する。 アリータはサイボーグだが、怒ったり、恥じらったり、恋をしたりする。そして涙も流す。最初はその大きすぎる目に若干違和感を感じたが、ストーリーが進むうち、その目がアリータの心情を如実に表しており、思わず引き込まれ、共感してしまった。アクションも見応えがあり、とくに球を奪い合う格闘技「モーターボール」のシーンは、格闘技に加え、スピード感もあり、一時も目が離せなかった。イドとの親子関係やヒューゴとの切ない恋、キスシーンなど人間ドラマ、恋愛ドラマ、青春ドラマの要素もあり、極上のエンターテインメント作品に仕上がっていることは間違いない。(細田尚子/MANTAN)
「あの日のオルガン」 戸田恵梨香と大原櫻子が対照的な保育士に 戦渦から子供を守る
戸田恵梨香さんと大原櫻子さんが初共演でダブル主演した「あの日のオルガン」(平松恵美子監督)が、2月22日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。実話を基に、太平洋戦争末期、日本初の疎開保育園で子供たちを守った保育士の奮闘を描き出す。逆境の中でたくましく生きる人々の姿が、平和のありがたさを教え、明日への希望を与えてくれる。 東京で空襲が激しくなってきた1944(昭和19)年。品川の戸越保育所では、主任保母の板倉楓(戸田さん)が保育所ごと疎開することを検討していた。反対の親を必死で説得し、埼玉に受け入れ先の寺を見付け、疎開生活をスタートさせるが、現地との摩擦や24時間保育の難しさなどさまざまな壁が立ちはだかる……というストーリー。 厳しいが、必死で子供を守ろうとする保母を、戸田さんが芯の強さを持って表現。大原さんが演じる天真爛漫(らんまん)な保母・野々宮光枝と好対照だ。大原さんはオルガンの弾き語りで「お猿のかごや」などの童謡を子供たちと一緒に歌い、つらい時代を明るく乗り切ろうとする。 保母役には1000人超のオーディションの中から、佐久間由衣さんのほか、「21世紀の女の子」(2019年)に出演の三浦透子さん、「虹色デイズ」(18年)の堀田真由さん、「あまのがわ」(19年)で主演デビューした福地桃子さん、「みとりし」の公開を控えた白石糸さん、「スープ~生まれ変わりの物語~」(12年)の奥村佳恵さんらをキャスティング。ベテラン勢では橋爪功さんのほか、林家正蔵さん、夏川結衣さん、田畑智子さんらも出演している。 子供たちの文化的な生活を守ろうとする楓先生。子供と一緒になって遊ぶ若いみっちゃん(野々宮)先生。2人のキャラクターが軸にしっかりとある。物語のテンポも良く、戦争を知らない世代でもとっつきやすい作品になった。荒れた寺を修復してスタートした疎開生活が、苦労もあるが明るく描かれる。 一方で、男女の淡い恋もサイドストーリーに忍ばせた。自然体の子供たちがほほ笑ましく、スヤスヤと寝入る姿に平和のありがたさを感じる。保母たちの会議も細やかに描かれ、今も昔も保育士(保母)は、子供の命を預かる尊い仕事であることが自然と伝わってくる。物語が進むにつれ、戦争が容赦なく大人たちを追い詰め、若い女性がどう難局を切り抜けていくか、目が離せない。 山田洋次監督の下で共同脚本や助監督を務め、「ひまわりと子犬の7日間」(13年)で長編監督デビューした平松監督が、主演の2人だけでなく、疎開に反対する親や疎開先の若い男性まで、登場人物一人一人の感情を繊細につむぎ出した。主題歌は、1995年の阪神淡路大震災を題材にして作られた曲をカバーしたアン・サリーさんの「満月の夕(2018ver.)」。(キョーコ/フリーライター)
「血まみれスケバンチェーンソーRED」浅川梨奈がふんどし、ゲタ姿のスケバンを熱演 チェーンソー振り回す爽快アクションも注目
アイドルグループ「SUPER☆GiRLS(スパガ)」の元メンバー、浅川梨奈さんの主演映画「血まみれスケバンチェーンソーRED」(山口ヒロキ監督)が2月22日からユナイテッド・シネマ アクアシティお台場(東京都港区)ほかで公開。ふんどしにゲタという強烈なビジュアルの主人公に挑戦した浅川さんの、荒々しいスケバン役やチェーンソーを振り回す爽快なアクションが見どころだ。 原作は、マンガ誌「月刊コミックビーム」(KADOKAWA)で連載された三家本礼さんのマンガ。女優の内田理央さん主演の実写映画が2016年に公開され、今作は新章を描くリブート作となる。前後編の2本立てで公開。主人公の女子高生・鋸村ギーコは、ある日突然、うぐいす学園に通う同級生の碧井ネロが作り出した改造死体たちに襲われ始める。なぜネロはギーコを狙うのか。ギーコは改造死体たちを倒しながらネロのアジトに乗り込み、直接対決を試みるが……というストーリー。 ネロをガールズグループ「ゆるめるモ!」のあのさんが演じ、替地桃子さん、日高七海さん、護あさなさん、佐野いずみさん、蒼波純さんも出演している。 セーラー服姿でふんどしにゲタ、手にはチェーンソーという主人公が奇抜なら、改造死体にマッドサイエンティスト、整備好き女子と、主要な登場人物たちも個性的過ぎる。強烈なキャラが次々と登場して一時も飽きさせない。特に今作でスパガ卒業後、単独初主演を果たした浅川さんは、鋭い目つきに荒々しいヤンキー口調、行儀の悪い立ち居振る舞い……とスケバン役を違和感なく披露。アイドル時代とはまた違う表情を見ることができる。 チェーンソーをぶんぶん振り回すアクションも爽快で、血しぶきが舞い、生首が飛び交うスプラッタ描写、クスッと笑えるギャグ……と、さまざまなエンタメ要素を楽しむことができる。(河鰭悠太郎/フリーライター)