「スパイダーマン:スパイダーバース」13歳の新生スパイダーマンが戦う! 新旧アニメの良さを盛り込んだ意欲作
劇場版アニメ「スパイダーマン:スパイダーバース」(ボブ・ペルシケッティ監督、ピーター・ラムジー監督、ロドニー・ロスマン監督)が3月8日、TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開。「スパイダーマン、死す」という衝撃的なエピソードで幕を開け、13歳の新生スパイダーマンが、それぞれ異次元で活躍するスパイダーマンたちと共に敵と戦い、成長していく姿を描く。実写と見紛うシーンがある一方、アメコミらしいポップな描写もあり、アニメの可能性を確実に広げたと言える意欲的な作品に仕上がっている。第91回アカデミー賞の長編アニメーション賞に選ばれた。 スパイダーマンことピーター・パーカーの突然の訃報で、市民たちは悲しみに暮れていた。名門私立中学に通う13歳のマイルス・モラレスもその一人。彼はピーターの後を継ぐ新生スパイダーマンだが、闇社会に君臨するキングピンが時空をゆがめたことでもたらされたピーターの死を前になすすべもなく、キングピンのさらなる野望を阻止するパワーはなかった。 そんなマイルスの前に、死んだはずのピーターが現れる。だがピーターは無精ひげを生やし、下腹が出た中年だった。ピーターはキングピンがゆがめた時空によって、別の次元=ユニバースからマイルスの住む世界にやってきたのだ。 真のスパイダーマンになるためピーターを師と仰ぎ戦う決意をしたマイルスの前に別のユニバースから来たスパイダー・グウェン、スパイダー・ノワール、スパイダー・ハム、ペニー・パーカーと彼女が操るパワードスーツSP//drが集結。キングピンの計画を阻止し、すべてのユニバースを元に戻すことはできるのか……というストーリー。 日本語吹き替え版は、小野賢章さんがマイルスを演じるほか、宮野真守さんがピーター・パーカー、悠木碧さんが唯一の女性スパイダーマン、スパイダー・グウェンを演じる。 マイルスの成長物語。そこにスパイダーマンらしいクモの糸でビルからビルへと駆け巡るアクションやパトルシーン、中年ピーターの悲哀やマイルスの中学生らしい悩みなどの人間ドラマも織り交ぜ、スクリーンから一時も目が離せなかった。大迫力の音響やクールな音楽など聴き応えも十分。3Dで最先端の映像を見せられたと思ったら、コミック調の画面を織り交ぜるなど新旧のアニメの良さをバランス良く盛り込み、アニメの可能性を世界的に広げた。 主人公のマイルスが黒人の男の子という設定は多様性を感じさせ、1950年代のカートゥーン的なキャラクター、スパイダー・ハムや日本の女子高生のようなペニー・パーカーのキャラクターも、これまでのアニメにオマージュをささげている。いろいろな要素を盛り込みながらもストーリーがすっきりとまとまっていて見応え十分。2019年の今、見るべき最先端のアニメ作品だ。(細田尚子/MANTAN)
「劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル」 “妹”がウルトラウーマンに変身! CG駆使した迫力のアクションも
特撮ドラマ「ウルトラマンR/B(ルーブ)」(テレビ東京系)の映画版「劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル」(武居正能監督)が3月8日、新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。2018年7~12月に放送されたテレビシリーズの1年後を舞台に、湊3兄妹と別次元からやってきた朝倉リク(ウルトラマンジード)が、怪獣スネークダークネス、謎の戦士・ウルトラマントレギアに立ち向かう。3兄妹の妹・アサヒが変身する女性のウルトラマン、ウルトラウーマングリージョや、3兄妹が融合したウルトラマングルーブの登場も見どころだ。 「ウルトラマンR/B」は、ウルトラマンロッソに変身する湊カツミとウルトラマンブルに変身する湊イサミの兄弟戦士が力を合わせて凶悪怪獣と戦う姿を描いた。映画版は平和が戻った綾香市に、怪獣が1年ぶりに出現。ウルトラマンロッソとウルトラマンブル、別次元からやって来たウルトラマンジードが迎え撃つ。平田雄也さんがカツミ、小池亮介さんがイサミ、其原有沙さんがアサヒを演じるほか、特撮ドラマ「ウルトラマンジード」で主人公・朝倉リクを演じた濱田龍臣さんが出演。内田雄馬さんがウルトラマントレギアの声優を務める。主題歌はつるの剛士さん、DAIGOさんが担当する。 ウルトラマンロッソ、ウルトラマンブル、ウルトラウーマングリージョ、ウルトラマントレギア、ウルトラマングルーブと5体の戦士が登場するのは、劇場版ならではの豪華さ。中でもウルトラウーマングリージョの可愛さに目を奪われた。悪役ながらウルトラマントレギア、怪獣スネークダークネスも魅力的だ。3兄妹が変身・融合して誕生するグルーブとトレギアの戦闘シーンはCGを駆使して表現。迫力あるアクロバティックな戦いが楽しめる。 ストーリーは、テレビシリーズの1年後。自分の夢に向かって着実に歩んでいるイサミやアサヒに対し、長男カツミが将来の進路を決めかねて悩んでいる姿が描かれる。カツミはトレギアに「君はウルトラマンか? 湊カツミか?」という究極の問いを投げ掛けられる。戦いの末、3兄妹はどのような未来へと進んでいくのか。始まりの季節、春にはぴったりのストーリーとなっている。(岡本温子/MANTAN)
「クロガラス1」人気2.5次元俳優たちが歌舞伎町のダークヒーローに
ミュージカル「刀剣乱舞」などの崎山つばささんや舞台「弱虫ペダル」「おそ松さん」などの植田圭輔さんら「2.5次元俳優」が出演している映画「クロガラス1」(小南敏也監督)が3月9日からシネマート新宿(東京都新宿区)ほかで1週間限定のレイトショー公開。新宿・歌舞伎町を舞台に、金さえ払えばどんな危険な仕事も引き受ける解決屋“クロガラス”たちの姿を描く。映画初主演の崎山さんがミステリアスな魅力を持つダークヒーロー黒斗を好演している。テンポ良く進む、二転三転するストーリーにも注目だ。 「東京で成り上がる」夢を持つ新人ホストの和輝(西川俊介さん)は、自分を指名してくれた女性会社員の舞衣(出口亜梨沙さん)を常連客にしてホスト業に精を出していた。ある日、舞衣は多額のツケを残したまま姿を消す。 ホストクラブの代表、翔(南圭介さん)からツケの返済を迫られた和輝は、金さえ払えばどんな依頼も引き受ける解決屋「クロガラス」の存在を知り、その事務所へ。そこで出会ったのは、合理主義者で目的のためには手段を選ばないリーダーの黒斗と、黒斗の右腕の悠哉(植田さん)、すご腕の女性ハッカー・日菜(最上もがさん)らクロガラスのメンバーだった。 和輝は多額の報酬を条件に舞衣の捜索を依頼し、その日からクロガラスのメンバーたちと捜索を開始するが、事態は思わぬ方向に転がっていき……。 2部作で、「SUPER☆GiRLS」の元メンバーの浅川梨奈さんが依頼人として出演する「クロガラス2」が3月30日から公開される。 金さえ払えばどんな危険な依頼も引き受けるダークヒーロー「クロガラス」。その設定自体は目新しいものではないが、黒斗を筆頭に、チャラいが抜群の身体能力を持つムードメーカーの悠哉、すご腕ハッカーとしてミッションを支える日菜……とキャラクターがそれぞれ個性豊か。特に崎山さん演じる黒斗は、クールで冷酷非道な顔を見せつつ、正義とも悪とも判断のつかない捉えどころのなさも漂わせる魅力的なキャラクターになっている。 黒斗の「この街で人を信用するな」というせりふ通り、真相をつかめないまま二転三転する展開も見どころだ。(河鰭悠太郎/フリーライター)