「メン・イン・ブラック:インターナショナル」7年ぶりの最新作はド派手アクションと軽妙な掛け合いが魅力 吹き替えに今田美桜
映画「メン・イン・ブラック(MIB)」シリーズの最新作「メン・イン・ブラック:インターナショナル」(F・ゲイリー・グレイ監督)が6月14日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。映画「マイティ・ソー」シリーズで知られるクリス・ヘムズワースさんとテッサ・トンプソンさんがエージェントとしてチームを組み、世界規模で活躍する姿を描くSFアクション。常識外のメカを駆使したド派手なアクションや2人のユーモアあふれる掛け合いなどが見どころだ。 「メン・イン・ブラック」は、宇宙の秩序と平和を守るため、人類にまぎれて地球に生息するエイリアンの行動を監視する極秘組織「メン・イン・ブラック」の活躍をコミカルに描く。米俳優のトミー・リー・ジョーンズさんがMIBの敏腕エージェントK、ウィル・スミスさんがKにスカウトされてMIBの一員となるJを演じた。第1作が1997年、第2作が2002年、第3作が2012年に公開され、2人の凸凹コンビが人気を集めた。 最新作では、舞台がこれまでの米ニューヨークから世界各地へ展開。子供の頃からの憧れだったMIBに採用されたエージェントM(トンプソンさん)は実習生としてロンドン支部へ派遣され、イケメンだがチャラ男風の先輩エージェントH(ヘムズワースさん)とチームを組み、MIB内に潜むスパイを摘発するために捜査を開始する。英国、フランス、モロッコと世界各地で捜査を進める2人だったが、既にスパイ側に先手を打たれていた。2人は逆にMIBから追われる身となり、追い詰められていく……というストーリー。 7年ぶりとなるシリーズ待望の最新作だ。対エイリアン用戦闘銃のディアトマイザーや空飛ぶMIB専用車など、次々に登場する常識外のメカを駆使したド派手なアクションが爽快で、序盤から引き込まれる。 トンプソンさん演じる、新人ながら度胸満点でキレ者のMはサバサバした態度が小気味良く、何とも新鮮で魅力的なキャラクターとして描かれている。敏腕だがどこか間抜けなエージェントHとのユーモア全開の掛け合いも最高。漫才を見ているかのような2人の応酬に、思わず何度も笑いがこみ上げてしまった。 日本語吹き替え版では、女優の今田美桜さんが新人エージェントM、声優の杉田智和さんがエージェントHの声を担当する。吹き替え初挑戦の今田さんはクールに好演。杉田さんとの息の合った掛け合いを楽しめる。(河鰭悠太郎/フリーライター)
「泣くな赤鬼」主演の堤真一自身が涙した感動作 柳楽優弥、川栄李奈らも出演
俳優の堤真一さん主演の映画「泣くな赤鬼」(兼重淳監督)が、6月14日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開される。堤さん演じる野球部の監督が、余命宣告されたかつての教え子と再会したことで、自身の間違いに気付き、教え子のために行動を起こす姿を描く。完成披露試写会で堤さんが「自分の出ている映画で泣いたのは初めて」と語っていた。見ているこちらも涙は免れない。でも、確実に心に温もりを残してくれる。 甲子園行きを目標に野球に情熱を注ぎ、部員からは日に焼けた赤い顔と熱血指導で「赤鬼先生」と呼ばれていた城南工業高校野球部監督、小渕隆(堤さん)。夢に破れ、10年の歳月が流れた今、野球への情熱をすっかり失っていた。 そんな中、診察を受けた病院で、元教え子のゴルゴこと斎藤智之(柳楽優弥さん)と再会する。ゴルゴは、野球の素質を持ちながらも挫折し、高校を中退していた。後日、小渕はゴルゴの妻(川栄李奈さん)から、ゴルゴが末期がんで余命半年であると知らされる……。 原作は、重松清さんの短編集「せんせい。」(新潮文庫)の一編。ほかに竜星涼さん、キムラ緑子さん、麻生祐未さんらが出演している。 小渕が過去を振り返りながら、徐々に衰弱していくゴルゴと向き合う形で映画は進む。はた目には、情熱的で練習熱心な先生と映っていたかつての小渕。しかし果たして、生徒の発するSOSをきちんと受け止められていたか。甲子園行きは自分の夢でしかなかったのではないか……小渕を批判する理由はいくらでも思い浮かぶが、熱中すればするほど、他のことに目が行かなくなるのは誰にでも起こりうる。我が身に置き換え、気付かされることは多い。小渕が過去を悔み、今度こそはとゴルゴに向き合い、彼の願いをかなえようとする姿に目頭が熱くなった。 大人になってからのゴルゴを演じる柳楽さんの、つらさや後悔、無念が伝わる演技に何度も目を見張った。川栄さんも、夫を愛し、支え、ふとした瞬間、弱さを見せるけなげな妻を好演。 他にもゴルゴの母役のキムラさん、小渕の妻を演じる麻生さん、そして、熱血漢であるがゆえに大切なことをいつしか見失ってしまっていた小渕を演じた堤さん。出演者が粒ぞろいで、作品の感動を一層強くしている。(りんたいこ/フリーライター)
「旅のおわり世界のはじまり」前田敦子が歌うことを夢見る女性に 異国へ放り出される感覚を味わえる
女優の前田敦子さん主演の映画「旅のおわり世界のはじまり」(黒沢清監督)が、6月14日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。中央アジア・ウズベキスタンを仕事で訪れた女性が、自分を見詰め直し成長していく姿を描く。脚本も書いた黒沢監督が、プロット段階から「直感」でイメージしていたという前田さんの演技に魅了される。名曲「愛の讃歌」の歌唱シーンも見どころだ。 バラエティー番組のリポーター、葉子(前田さん)は、幻の怪魚を探すためにウズベキスタンへやって来た。目当ての獲物は姿を見せず、スタッフのイライラは募っていく。そんな中、葉子は街で美しい装飾の施された劇場に出くわし、その中で、夢と現実の交錯する不思議な体験をする……。加瀬亮さん、染谷将太さん、柄本時生さんらも出演している。 葉子がホテルから出てくるところから映画は始まる。何が起きているのかが分からず、一瞬戸惑う。それこそが監督の狙いだ。脚本執筆の際、「主人公1人だけを描いてみよう」というルールを自らに課したそうだが、それが奏功。見ているこちらも葉子と同化し、異国の地へ放り出される感覚に陥るのだ。 夢は歌うことなのに、今は本意ではない仕事を黙々とこなす葉子。演じる前田さんの表情がいい。カメラの前では笑顔を取り繕い、仕事が終わると誰とも交わらずホテルの部屋に一人こもる。その様子からは、葉子の不安や緊張、孤独が伝わってくる。だからこそ、「愛の讃歌」を歌唱する場面では、葉子と共に心を開放させる気分に浸れた。 黒沢監督が「Seventh Code」(2014年)、「散歩する侵略者」(2017年)に続き前田さんを起用。一人の女性の成長をエモーショナルに描いた。ホラーやサスペンスのイメージが強い黒沢監督の作品を日ごろ敬遠しがちな人にもお薦め。「日本・ウズベキスタン国交樹立25周年」記念プロジェクトで作られたウズベキスタンとの初合作映画。両国の浅からぬつながりを知ることもできる。(りんたいこ/フリーライター)