「マチネの終わりに」福山雅治・石田ゆり子主演 東京、パリ、ニューヨークを舞台した大人の恋物語
歌手で俳優の福山雅治さんと女優の石田ゆり子さんが主演し、芥川賞作家・平野啓一郎さんの同名ベストセラー小説(文春文庫)を映画化した「マチネの終わりに」(西谷弘監督)が、11月1日にTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開された。世界で活躍するギタリストとジャーナリストの40代の2人が、6年間でたった3度の出会いの中で悩み、愛し合っていく物語。深まる秋にぴったりの大人のラブストーリーだ。 天才として名をはせるも、現状の演奏に満足ができず、自分の音楽を見失い、苦悩を抱えるクラシックギタリストの蒔野聡史(福山さん)はパリでの公演を終え、パリの通信社に勤務するジャーナリストの小峰洋子(石田さん)と出会う。2人は出会った瞬間から引かれ合い、徐々に心を通わせていくが、洋子には婚約者であるリチャード新藤(伊勢谷友介さん)の存在があった。そのことを知りながらも、蒔野は自身の思いを抑え切れずに洋子に愛を告げる。しかし、2人を取り巻くさまざまな現実から思いがすれ違っていく……というストーリー。 ほかに、桜井ユキさん、木南晴夏さん、風吹ジュンさん、板谷由夏さん、古谷一行さんらが出演。福山さん主演の「ガリレオ」シリーズや映画「昼顔」(2017年)などを手がけた西谷監督がメガホンをとった。 東京、パリ、ニューヨークを舞台した大人の恋物語。2人の関係は、年を重ねているだけに、さまざまなしがらみに足を引っ張られ、思い通りに進まない歯がゆさを抱えながらも深く静かに進行していく。普通の人が言ったら「なんてキザな」と白けてしまいそうな歯の浮くせりふも福山さんが語ると自分に向けられているような現実感があり、ドキッとさせられる。石田さん演じる洋子の気持ちも同年代なら手に取るように分かる。 恋愛だけでなくスランプ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、戦争、生と死、父と子、師弟、嫉妬などさまざまな感情が複雑に絡み合い、物語に重厚感を与えている。“不惑”というが生き方に迷う40~50代が共感できるせりふやエピソードがちりばめられ、それを都会的な風景と美しいクラシックギターの音色が彩るウェルメードな作品だ。 ちなみに、「マチネ」とはコンサートなどの「昼公演」を意味するフランス語。日本のクラシックギター界の第一人者である福田進一さんが原作小説の構想段階から今作に関わっており、世界レベルの音楽を堪能できるのもこの映画の特徴の一つだ。ラストシーン後の2人の関係を想像しながら、いつまでも余韻に浸っていたい。(細田尚子/MANTAN)
「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」シリーズ完結作 “それ”の恐怖再び! 待ち受ける運命とは…
スティーブン・キングの代表作を映画化したホラー映画「IT/イット」シリーズ完結作「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」(アンディ・ムスキエティ監督)が11月1日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。2017年に公開された「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編。27年後を舞台に、大人になった「ルーザーズ・クラブ」の面々が、再び“それ”と対峙(たいじ)する姿を描く。 「ルーザーズ(負け犬)」と自称していた落ちこぼれの子供たちは成長し、それぞれ活躍していた。27年前の1989年夏に起きた連続児童失踪事件と同様の不審な事件が頻発。マイクから連絡を受けたルーザーズの面々は約束を守るため帰郷することを決意する。しかし“それ”に打ち勝つ唯一の方法は、それぞれのトラウマに再び向き合うことだった……。 日本語吹き替え版では細谷佳正さんがビル、高垣彩陽さんがベバリー、小野大輔さんがベン、神谷浩史さんがエディ、諏訪部順一さんがリッチー、三宅健太さんがマイク、平川大輔さんがスタンリーと、それぞれ成長したルーザーズたちの声を担当。多田野曜平さんが前作DVDに収録されている吹き替え版から‟それ”(ペニーワイズ)役を続投している。 ヒットした前作同様の熱量と完成度で楽しませてくれる。大人になったルーザーズの人間ドラマを丁寧に描いていることが、結果として恐怖感にリアリティーを加えることに成功している。静寂後の大音量やカーテンを開け何もいないと確認した数秒後に出現するなど、恐怖演出はホラーものの定番パターンが多く見られるが、それでも独特の世界観とテンポ感でゾクッとさせられた。 前作よりきちんとしたホラー作品になっており、ファンタジーやアドベンチャー的な要素も強まっている。大人になっても恐怖にとらわれた主人公の内面の葛藤が、ペニーワイズとの戦いに重なって見えた。上映時間が少し長い(2時間49分)が、クライマックスに向けての盛り上がり方は圧巻だった。(遠藤政樹/フリーライター)
「どすこい!すけひら」知英が体重100キロ超え!? 自分を変えようと奮闘する姿に勇気をもらえる
女優で歌手の知英さん主演の映画「どすこい!すけひら」(宮脇亮監督)が11月1日からシネ・リーブル池袋(東京都豊島区)ほかで公開。元おデブ(どすこい)の鈍感女子を巡る三角関係コメディーで、知英さんが体重100キロ超えの特殊メークで主人公の綾音を演じたことも話題だ。 原作は清智英さん原案、たむら純子さん画の同名マンガ。ドラマ「続・最後から二番目の恋」や映画「あのコの、トリコ。」などで知られる宮脇監督がメガホンをとった。 大好きなチョコレートに囲まれて暮らすため、イタリアに移住したぽっちゃり体形の綾音(知英さん)。ひょんなことから事故に巻き込まれ、昏睡状態から目覚めると、誰もがうらやむナイスバディーに変身していた。 帰国後はエステティシャンとして働くが、恋愛には無関心。チョコレートと趣味のゲームに没頭する日々を送っていた。ある日、サロンの超VIPで人気アイドルの湊拓巳(草川拓弥さん)から食事に誘われる。拓巳に淡い恋心を抱く綾音だが、拓巳には恋人がいることが分かり……。 恋模様や友情などの人間関係を中心に、クスッと笑える要素をスパイスにした物語が展開し、見ていて温かい気持ちになった。公開前から注目されていた知英さんの特殊メーク姿は予想以上の迫力で、普段の知英さんの姿とのギャップも面白い。ラブコメ作品でありながら、体形の変化という分かりやすい形で、誰もが感じる変身願望を表現。すっきり笑えて、生き方を考えさせられ、鑑賞後は少しピュアな気持ちになった。(遠藤政樹/フリーライター)