「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」スカイウォーカー家の歴史に終止符 納得の大団円、シリーズ屈指の傑作
人気SF映画「スター・ウォーズ」シリーズの完結編「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(J・J・エイブラムス監督)が、12月20日にTOHOシネマズ日比谷などで公開される。1977年に「新たなる希望」が全米公開されてから42年。いよいよ、ルーク、レイア、ダース・ベイダーことアナキン、カイロ・レンのスカイウォーカー家の歴史に終止符が打たれる。 「スカイウォーカーの夜明け」は、「新たなる希望」から続くシリーズに幕を下ろす作品。祖父ダース・ベイダーの遺志を継ぎ、銀河の圧倒的支配者となったカイロ・レン、伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの思いを受け継ぎ、フォースの力を覚醒させたレイたちの活躍が描かれる。またレイの仲間であるフィンとポー、レジスタンスの将軍レイアらが、物語に彩りを加えている。 前作「最後のジェダイ」(2017年)で評価を下げてしまった「スター・ウォーズ」だが、安心してほしい。エイブラムス監督の監督の手腕は、実に見事だ。ファンの評判がよかったシーンや設定などをうまく生かし、誰しも納得の大団円に仕上げている。 今作には、2016年に死去したレイア役のキャリー・フィッシャーさんのCGではなく本人の実写映像が登場する。「フォースの覚醒」(2015年)、「最後のジェダイ」で撮影されたフッテージ(未編集映像)が使用されているのだが、不自然さはまるで感じなかった。“ジェダイ”と対立している“シス”のパルパティーン(ダース・シディアス)やランド・カルリジアン、宇宙要塞(ようさい)「デス・スター」など過去作からキャラクターや施設が引用されている。サーガを完結させるには、過去作で活躍してきた彼らの再登場は必須条件だろう。 これまでスピンオフやアンソロジーを含め、数十作品が作られた本シリーズだが、「スター・ウォーズ」で涙したのは、今作が初めての経験だった。シリーズ屈指の傑作といってもいいだろう。ファンは期待して劇場に足を運んでほしい。(石塚功/MANTAN)
「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」 ある種、最終回!? デク&爆豪の熱いバトル
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の堀越耕平さんのマンガが原作のアニメ「僕のヒーローアカデミア」(ヒロアカ)の劇場版「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」(長崎健司監督)が、12月20日にTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。原作者の堀越さんが総監修、キャラクター原案を手がけ、主人公・緑谷出久(デク)とライバルの爆豪勝己が共闘し、熱いバトルを繰り広げる。 デクたち雄英高校ヒーロー科1年A組が、期間限定の校外ヒーロー活動のため、日本のはるか南に位置する離島・那歩島(なぶとう)を訪れていると、謎の敵<ヴィラン>が襲来。1年A組のメンバーは力を合わせて立ち向かう。 原作者の堀越さんは「今回の映画はある種、ヒロアカ最終回とも言えます」とコメントを寄せている。堀越さんが最終決戦でやりたかったネタも盛り込まれているという。最終決戦というのもうなずける熱いバトルが見どころで、バトルシーンが多めの印象だ。1年A組の面々がそれぞれの「個性」を生かしながら、協力して戦うことになり、これぞヒロアカ! というバトルが続く。特に熱いのがデクと爆豪の共闘で、最終回か!? となる展開にハラハラさせられるはず。 劇場版のオリジナルキャラクターの声優として、敵<ヴィラン>のナイン役の井上芳雄さん、スライス役の今田美桜さんが出演。井上さんと今田さんは演技が秀逸で、陰のあるキャラクターを見事に演じ切った。(小西鉄兵/MANTAN)
「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」“ゼロワン” 高橋文哉&“ジオウ”奥野壮らが激闘!
特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズの映画最新作「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」(杉原輝昭監督)が12月21日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開される。冬の仮面ライダー映画シリーズの新作で、仮面ライダーゼロワン誕生の秘密を描く。元「乃木坂46」の生駒里奈さんが仮面ライダーの世界の歴史改変をもくろむタイムジャッカー・フィーニス、連続ドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系)に出演していた俳優の和田聰宏さんがゼロワン誕生の秘密を握るヒューマギアのウィル役でそれぞれゲスト出演している。 飛電或人/仮面ライダーゼロワン(高橋文哉さん)が目覚めると、ヒューマギアに支配された世界に変わっていた。社長の座もウィル(和田さん)に奪われ、ヒューマギアの人間抹殺が激化。そんな中、仮面ライダーだった記憶を失くして学生として過ごしていた常磐ソウゴ(奥野壮さん)らが現れる。元の世界を取り戻すため、ソウゴたちと12年前にタイムトラベルした或人。そこで待ち受けていたのは、仮面ライダー1型を開発し、ヒューマギアを守るために戦う自身の父、其雄(山本耕史さん)と、謎のタイムジャッカー・フィーニス(生駒さん)だった……。 ゼロワン誕生の秘密が描かれる過程で見せる或人の意外な表情の数々に引き込まれた。感情を高ぶらせる姿はテレビシリーズでは見せておらず、高橋さんの熱演ぶりに目が離せなかった。 テレビシリーズでは深くは描かれていなかった父・其雄とのやり取りは、劇場版では胸アツで、心にジーンと響いてきた。其雄が変身する1型も昭和ライダーテイスト満載なのが憎いところだ。 「ゼロワン」を楽しみつつ、“ジオウロス”に陥っていた人たちも、久々のジオウチーム活躍に胸躍るはず。特にソウゴが見せる“先輩感”と、何とも言えない“ほほ笑み”は必見。アクションの完成度も高い。ライダーらしさだけでなく、岡田龍太郎さん演じる不破諫らのガンアクションもカッコよく、胸アツシーン満載だ。(遠藤政樹/フリーライター)
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」 より深みを増した新作 250カット以上追加
大ヒットした劇場版アニメ「この世界の片隅に」に新規カットを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(片渕須直監督)が12月20日、テアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開された。主人公・すずと遊郭で働く白木リンの交流など幾つものシーンが新たに描かれている。作品の印象が変わり、新作として見ることができる。 追加されたカットは250を超えるという。追加されたシーン、せりふによって、作品の印象が随分変わった。遊郭で働く白木リンのせりふの一つ一つが印象的で、すずの「この世界の片隅に……」というせりふがより深みを増したようにも感じた。 「この世界の片隅に」の原作は「漫画アクション」(双葉社)で連載され、2009年に「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門優秀賞を受賞したこうの史代さんのマンガ。戦時中、広島市から呉市へ嫁いだ18歳のすずの生活が、戦争の激化で崩れていく様子が描かれた。アニメは2016年11月に公開され、いわゆる単館系の作品だったが、異例のヒットを記録。日本アカデミー賞で最優秀アニメーション作品賞に選ばれたほか、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門審査員賞を受賞した。 「この世界の片隅に」は何度見ても新たな発見がある作品だった。見る度に、同じく片淵監督が手がけた「マイマイ新子と千年の魔法」をもう一度見たくなる……というループを何度繰り返したことか。今作もきっと、一度見ただけでは、気付かなかったことがたくさんあるはず。何度も繰り返し見たくなった。そしてまた同じループに……。(小西鉄兵/MANTAN)