「シグナル100」橋本環奈が恐怖に立ち向かうヒロインを熱演 生徒36人の衝撃の自殺ゲーム描く
女優の橋本環奈さんの主演映画「シグナル100」(竹葉リサ監督)が1月24日から、丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開される。自殺催眠にかけられた生徒たちの壮絶なデスゲームを描く。恐怖に立ち向かう芯の強いヒロイン役の橋本さんが、鬼気迫るシリアスな演技を披露。生徒たちを絶望の淵に追い込む担任役の中村獅童さんの怪演も見どころだ。 原作は宮月新さん作、近藤しぐれさん画の同名マンガ(白泉社)。担任教師・下部(中村獅童さん)に視聴覚室へ呼び出された樫村怜奈(橋本さん)ら聖新学園高校3年C組の36人は、突然、不気味な映像を見せられる。それは「遅刻する」「スマホを使う」「涙を流す」など100の行為をすると、自殺したくなる催眠の暗示だった。 暗示を解く方法はクラスメートの死のみ。下部は「最後に生き残った者だけが自殺催眠から逃れられる」と生徒たちに告げ、自らも突然の死を遂げる。人間の醜い本性が次々と暴かれ、生き残りを賭けた壮絶なデスゲームへと発展していく中、樫村は全員が生き残る方法を見つけようと、見えない恐怖と立ち向かうが……。 生徒役で小関裕太さん、瀬戸利樹さん、甲斐翔真さん、中尾暢樹さん、若月佑美さん、恒松祐里さんらも出演している。 突然始まる「終わりの見えないデスゲーム」。36人いた生徒たちは何気ない日常の行動がトリガーとなって次々と脱落、自ら凄惨な方法を選んで死んでいく。何が「シグナル」か分からない恐怖と、極限状態に追い込まれた人間が本性をさらけ出す絶望感が巧みに表現されていて、ゾクゾクしつつ引き込まれた。 橋本さんは、最近ではコメディエンヌとしての評価が高まっているが、今回は壮絶な状況下でも持ち前の正義感で事件を解明しようと奔走(ほんそう)する芯の強いヒロインを感情豊かに熱演。 生徒たちを恐怖のどん底に陥れる担任を演じる中村さんも、淡々とした語り口ながらも、時には大声を張り上げ、不敵な笑みを浮かべるなど狂気をはらんだ下部を怪演し、作品に漂う恐怖を増幅させている。R15指定。(河鰭悠太郎/フリーライター)
「his」宮沢氷魚と藤原季節が絶妙な距離感 男性2人の恋愛とその先を描く
モデルで俳優の宮沢氷魚さん初主演の映画「his」(今泉力哉監督)が、1月24日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで公開されている。青年2人の恋愛を題材に、その先の物語を通じて、自分に正直に生きるために葛藤する人々の姿を真摯(しんし)に描き出している。日テレ系ドラマ「偽装不倫」(2019年)などに出演し、人気急上昇中の宮沢さん演じる迅(しゅん)の元恋人の渚役を、今泉監督作「アイネクライネナハトムジーク」(2019年)などに出演した藤原季節さんが扮(ふん)している。 ゲイであることを隠して田舎で孤独な生活を送っていた井川迅(宮沢さん)の前に、ある日突然、高校時代に別れた元恋人の日比野渚(藤原さん)が、6歳の娘・空(外村紗玖良ちゃん)を連れて現れる。渚は妻・玲奈(松本若菜さん)と娘の親権を争っている最中だった。2人を住まわせ、優しく見守っていた迅だったが、渚から正直な思いを告白され……。 繊細な風貌で内向的な迅と、あっけらかんとした渚。宮沢さんと藤原さんが絶妙な距離感のコンビネーションを見せる。玲奈役の松本さんも好演。迅に好意を寄せる町役場の職員の吉村美里役に松本穂香さん。鈴木慶一さん、根岸季衣さん、堀部圭亮さん、戸田恵子さん、中村久美さんらベテラン勢が脇をがっちりと固めている。 美青年2人という冒頭のビジュアルから来るイメージを、いい意味で裏切ってくれる。再会に戸惑う迅とワケありの渚の真ん中に渚の娘・空がいて、右往左往する大人たちを明るい笑い声で照らしている。迅と渚と空の暮らしぶり、日常風景がこまやかに描かれ、このまま3人の穏やかな暮らしが続いたらいいのにと願う気持ちにさせられる。 だからこそ、後半の親権争いの法廷劇がほろ苦く効いてくる。そこには、渚の妻・玲奈が抱える葛藤、働く女性のジレンマもしっかりと描き込まれている。同性カップルの周囲の目、自分を隠しながらこれまで傷付いてきた過去など、それぞれにリアルな生きづらさがある。普通の恋愛劇で収まらない深い人間描写に心を動かされた。 企画・脚本はアサダアツシさんが担当し、岐阜県白川町でロケされた。主題歌はSano ibukiさん書き下ろしの「マリアロード」。(キョーコ/フリーライター)
「風の電話」東日本大震災で家族を失った少女の再生の物語 モトーラ世理奈のアンニュイな表情に引き込まれる
女優のモトーラ世理奈さん主演の映画「風の電話」(諏訪敦彦監督)が、1月24日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開される。岩手県大槌町に実在する「風の電話」をモチーフに、東日本大震災で家族を失った少女が、故郷の大槌町に向かう過程でさまざまな人と出会い、生きる力を取り戻していく姿を描く。アンニュイな雰囲気を漂わせたモトーラさんの表情が、映画の一つの吸引力になっている。 高校生のハル(モトーラさん)は、東日本大震災で家族を失い、今は広島で伯母・広子(渡辺真起子さん)と暮らす。伯母が倒れ、孤独と絶望で泣き疲れたハルは、通りかかった軽トラックの運転手・公平(三浦友和さん)に助けられ……というストーリー。西島秀俊さん、西田敏行さんらも出演している。 風の電話は大槌町在住の庭師・佐々木格さんが、死別したいとこともう一度話したいとの思いから2011年に自宅の庭に設置した。その後、東日本大震災が発生。これまで3万人以上が大切な人への思いを胸にこの場所を訪れているという。 メガホンをとったのは「2/デュオ」(1997年)や「M/OTHER」(1999年)、「ライオンは今夜死ぬ」(2017年)などで知られる諏訪監督。撮影現場の空気と俳優から湧き出る感情を大切にしながらカメラを回す、いわゆる「即興芝居」を好む監督だ。今回は狗飼恭子(いぬかい・きょうこ)さんの脚本はあったものの、やはり俳優の感情を優先して撮っていったという。 ハルは出会う人々から力をもらう。山本未來さん演じる妊婦からは、新しい命に触らせてもらうことで希望をもらい、被災地でボランティア活動をしていたクルド人男性の娘からは、境遇は違えど故郷に対する思いを共有し、元気と勇気をもらう。少しずつ絶望の淵からはい上がっていくハル。それと共に、映画を覆っていた濃密な悲しみの空気は徐々に薄らいでいく。 カメラはゆったりと回るが、緩慢な印象は受けない。絶望や悲しみでぺしゃんこになったハルの心が、人々からもたらされる優しさや励ましで弛緩(しかん)と緊張を繰り返しながらゆっくりと膨らんでいくのが伝わってくるからだろう。 人はつらいできごとに遭遇しても、生きている以上、前に進むしかない。そのためには食べなければならない。三浦さん演じる公平がハルに言った言葉が腹にストンと落ちた。(りんたいこ/フリーライター)
「映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」参加型の面白さ&賀来賢人の「いれかえマン」に好感
劇場版「映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」が1月24日からユナイテッド・シネマ豊洲(東京都江東区)ほかで公開される。今年で60周年となるNHKEテレの人気子供番組「おかあさんといっしょ」を映画化。「映画館でいっぱい遊ぼう!」がコンセプト。歌や踊り、参加できるクイズなどが盛り込まれた体験型ムービーになっている。「すりかえかめん」の抱える秘密を知る重要なキャラクター「いれかえマン」を俳優の賀来賢人さんが演じている。 ゆういちろうお兄さん(花田ゆういちろうさん)、あつこお姉さん(小野あつこさん)、誠お兄さん(福尾誠さん)、杏月お姉さん(秋元杏月さん)は、よしお兄さん(小林よしひささん)と久しぶりに再会。みんなで楽しく「ブンバ・ボーン!」で遊んでいると、突然よしお兄さんが動物の姿に。それは、すりかえかめんとすりかえお嬢のいたずらで、チョロミー、ムームー、ガラピコもすりかえられてしまう……。 体験型ムービーとは? と思いつつ見始めると、オープニングからお兄さん&お姉さんたちから歌と踊りに誘われるなど、声を出せる応援上映とはまた違った雰囲気で参加でき、ワクワクさせられる。上映中も照明は真っ暗にならず、泣き出したり騒いだりしてもOK。間違い探しやクイズなど、いたるところに参加要素がちりばめられ、ただ見るだけではなく、参加型の演出が満載で幼児の映画館デビュー作としても最適。親子で一緒に踊りやクイズに参加すれば会話も弾むはず。ラストには記念撮影タイムがあり、写真として思い出を残せる。 すりかえかめんの秘密を話す、賀来さん演じるいれかえマンの言葉には、切なくも思わず納得してしまう。ストーリーもしっかりしている。楽しく笑いながら見ているうちに、いつの間にかじんわりと心に染みた。(遠藤政樹/フリーライター)
「聖☆おにいさん 第III紀」“イエス” 松山ケンイチ&“ブッダ”染谷将太コンビが漫才コンテストに挑戦
イエスとブッダの日常を描く人気マンガの映画化作品「聖☆おにいさん 第III紀」(福田雄一監督)が1月24日からイオンシネマ多摩センター(東京都多摩市)ほかで公開される。俳優の松山ケンイチさんがイエス役、染谷将太さんがブッダ役を演じ、俳優の山田孝之さんが製作総指揮、福田監督が脚本も担当しているシリーズ第3弾。ブッダとイエスが漫才コンテストに挑むためにネタ作りをしたり、カラオケボックスで一心に読経をしたりといった10のエピソードが描かれる。 原作は、中村光さんがマンガ誌「モーニング・ツー」(講談社)で連載中の同名マンガ。ブッダ(染谷さん)とイエス・キリスト(松山さん)が下界でバカンスを取ろうと、東京・立川のアパートでルームシェアを開始。ブッダとイエスは日々をエンジョイする中、ついつい「奇跡」を起こしてしまう……というストーリー。 当初から染谷さんと松山さんの再現度の高いビジュアルぶりには感心していたが、ここまでくると、もはや2人がキャラクターそのものに見えてしまうほどのハマリ役だ。いつものようにブッダとイエスが巻き起こす奇跡は最高に面白く、後光が差したり、水をぶどう酒に変えたりと、クスッと笑えてしまうエピソードが満載。帰省した宮殿でのくだりは風刺が効いていて、ファミレスやカラオケボックスなどでの行動も緩さが楽しい。シリーズが進むごとに、いい意味でまったり感が増し、ハイテンポな作品が多い中、ゆったりと心地良く楽しめる。(遠藤政樹/フリーライター)